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トランプ政権が「パンデミックに乗じて人権を侵害するような州の命令は憲法違反」と明言、法的措置も辞さない構え


トランプ政権で法律問題を担当する閣僚であるウィリアム・P・バー司法長官が2020年4月27日に、アメリカ全土の地方検事宛てに、「州政府による行きすぎた新型コロナウイルス対策措置に注意」することを求める覚書を公表しました。その背景には、長引く外出や集会の制限に対する不満を解消する狙いがあると指摘されています。

Balancing Public Safety with the Preservation of Civil Rights
(PDFファイル)https://www.justice.gov/opa/page/file/1271456/download


Trump Administration Signals Support for Allies’ Fight Against Virus Orders - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/04/29/us/politics/coronavirus-trump-justice-department.html

バー司法長官は4月27日に、「公衆安全と公民権の保護のバランスについて」との覚書を発表しました。その中でバー司法長官は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する国家危機は、私たちの日常生活のすべてに並々ならぬ制限を課す必要を生じさせました。全国の数百万人ものアメリカ人が家にとどまるよう命じられ、数え切れないほどの事業者やイベントが無期限の閉鎖を余儀なくされています。命を脅かす病気のまん延を食い止めるには、確かにこうした制限が必要でした」と述べて、多くの国民が不自由な生活を強いられているとの認識を示しました。

by Office of Public Affairs

その上でバー司法長官は「私は今回新たに、市民個人の憲法上の権利と自由を侵害している可能性のある州や地方自治体の命令にも注意するよう、地方検事に指示します。アメリカ合衆国憲法修正第1条および国の法律は、宗教に対する弾圧を禁じています。憲法はまた、言論の制限や国家経済への過度の干渉も禁じています。州や地方自治体の指示が、パンデミックに対処するために必要な自由の制限を講じるための適切な権限から逸脱した場合、司法省には連邦裁判所でその過剰な部分に対処する責務が生じる可能性があります」と述べて、州によるCOVID-19対策が不適切と判断される場合は、州に対して法的措置を講じる可能性があるとの認識を示しました。

バー司法長官は今回の指示の理由について、「国民を守るための州や地方自治体当局の重要な努力に対し、過度な干渉は我々の望むところではありません。しかし、危機だからといって憲法が骨抜きにされるようなことはあってはなりません。したがって、国民の保護が確実に維持されるよう、注意を払う必要があります」と説明しています。

この覚書が公表された背景には、長引く都市封鎖に対する不満の声が高まりつつある現状への危機感があると考えられています。トランプ大統領はかねてから、「外出禁止命令による公衆衛生上の利益は、命令が引き起こす経済的な損失を相殺できない可能性があります」と述べて、経済活動への懸念を表明していました


また、バー司法長官は4月21日に放送されたラジオ番組で、「州による制限は軟禁に近い」と発言。さらに、「もし行き過ぎた対応が見られたら、州知事らに圧力をかけて調整するつもりです。それでも駄目で、住民訴訟へと発展してしまった場合は、原告に有利な立場から書いた陳述書を裁判所に提出します」と述べて、州による過剰な対応に批判的な態度を示しています。

司法省は実際に、ミシシッピ州グリーンビル市にあるキリスト教会が企画した「車に乗ったままカーラジオで説教が聞けるドライブイン礼拝」の参加者に対し、市が500ドル(約5万3000円)の罰金を科した事件で市を非難する声明を発表し、市を訴えた教会側を擁護しました。これを受けて、グリーンビル市のエリック・シモンズ市長は、罰金と禁止命令の撤回を発表しています。

弁護士で元下院議員でもあるクレタ・ミッチェル氏は「もし司法省があまりにも多くの取り締まりに伴う憲法違反に積極的に対応するなら、私たちはそれに拍手を送ります」と述べて、バー司法長官の対応に賛意を示しました。

一方、今回のトランプ政権の対応はCOVID-19を政治的に利用していると批判する声もあります。アメリカ自由人権協会の事務局長を務めるアンソニー・ロメロ氏は「もし司法省がCOVID-19のパンデミックに関する州の合法的な命令に異議を唱えるなら、バー司法長官は州の権利を尊重していると真顔でいうことはできないでしょう」と述べて、司法省やバー司法長官の主張を非難しました。

また、州側からも反発する声が挙がっています。ニューヨーク州司法長官であるレティシア・ジェームズ氏は、司法長官事務所のウェブサイト上で「トランプ政権は失敗しましたが、州は憲法上の権利を守ると同時に、COVID-19のまん延を抑制する政策を制定することができます。また、憲法修正第10条は『政府に委任されていない権限は州に留保される』と定めています。バー司法長官だけが憲法を守るための法的措置を準備しているわけではないことにご注意下さい」との声明を発表し、鮮明な対抗姿勢を打ち出しています。


こうしたトランプ政権と州の対立について、ホワイトハウスの広報担当者であるJudd Deere氏は「アメリカの人々を元の職場で働けるようにし、スポーツイベント、教会、レストランを安全に再開させたいという目標は、大統領と各州の知事が共有するものです。この協力関係に亀裂や不信があると主張しているのは、メディアぐらいです」と述べて、対立関係の存在を否定しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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