サイエンス

大量のピンポン球を並べると騒音を遮る「吸音材」として利用できるという研究結果


都市部や高速道路、空港などの近くに住んでいると、車や航空機が発するさまざまな低周波の騒音に悩まされることがあります。そんな騒音を防ぐ吸音材として、卓球に用いられる「ピンポン球」が利用できるという研究結果が発表されました。

Low frequency sound isolation by a metasurface of Helmholtz ping-pong ball resonators | Journal of Applied Physics | AIP Publishing
https://pubs.aip.org/aip/jap/article/134/14/144502/2915871/Low-frequency-sound-isolation-by-a-metasurface-of


Pingpong Balls Score Big as Sound Absorbers - AIP Publishing LLC
https://publishing.aip.org/publications/latest-content/pingpong-balls-score-big-as-sound-absorbers/

Scientists Find an Awesome Practical Use For Ping Pong Balls : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-find-an-awesome-practical-use-for-ping-pong-balls

騒音は単に迷惑なだけでなく、頭痛やめまい、難聴、音に対する過敏症、ノイローゼなどの健康被害につながる恐れがあると指摘されています。また、飛行機や鉄道の騒音によって心血管系への深刻なダメージが引き起こされることもわかっており、騒音を防ぐ方法は心身の健康を保つために重要です。

しかし、低周波の騒音はさまざまな要因で生じる上に、高周波の騒音と比較すると壁や構造物によって遮られにくいため、音を防ぐのがより困難だとのこと。また、効果的な吸音材は高価なことも多く、一般の人々が手に入れるのが難しいケースもあります。

そこで、フランスのリール大学やギリシャのアテネ国立工科大学の研究チームは、手に入りやすい「ピンポン球」を利用して、低周波の騒音を効果的に防ぐ吸音材を開発しました。リール大学の物理学者であるロビン・サバト氏は、「ピンポン球はよく知られた身近な物体であり、世界中にたくさん存在しています。私たちの動機は、これらの簡単にアクセスできる物体を使用して、低周波絶縁パネル構造を作成することでした」と述べています。


研究チームは、ピンポン球を一種のヘルムホルツ共鳴器として使用しました。ヘルムホルツ共鳴器とは、開口部を持った容器に空気を送り込むことで、内部の空気が共鳴(共振)して音が鳴る装置のことです。ヘルムホルツ共鳴器が鳴らす音(共振周波数)は、物体の容積や開口部の面積で決まります。ヘルムホルツ共鳴器の例としては、細い口から息を吹き込むと音が鳴るビンや、息を吹き込むと音が鳴るオカリナやホイッスルがあります。

ヘルムホルツ共鳴器は音を鳴らすだけでなく、共鳴する音を中心に音の運動エネルギーを吸い取って音を打ち消す特性があり、これを利用して吸音材として利用することも可能だとのこと。実際に、音楽室などに貼られている有孔ボードや吸音パネル、タイヤの溝などにヘルムホルツ共鳴器の原理が用いられているそうです。

そこで研究チームは、ピンポン球に小さな穴を空けることで一種のヘルムホルツ共鳴器にして、それを特別に設計したコンテナに並べることで吸音材を作りました。ピンポン球には直径2mmの穴(開口部)が5個空けられ、それぞれの開口部が隣接するピンポン球の開口部と接続するように配置されました。


研究チームが設計したコンテナはこんな感じ。研究チームは、ピンポン球を並べた吸音材を「Acoustic metasurfaces(音響メタサーフェス)」と呼んでいます。


研究チームは、複数のピンポン球を接続することでより多くの共振周波数が生じ、結果としてより多くの音を吸収できたと報告しています。また、ピンポン球の数や穴の数、穴の大きさなどを調整することにより、音響メタサーフェスの音響特性を変更できることも確認されました。


サバト氏は、「ヘルムホルツ共鳴器は、周囲の音波をその共振周波数で正確にとらえるユニークな能力を持っており、細いネックを介して環境に接続された空洞として表すことができます。この研究の独創性は、2つの共鳴器間の結合の影響を考慮し、2つの共振周波数を発生させたことです」とコメントしています。

今回開発された音響メタサーフェスは吸音材だけでなく、音響に関するさまざまな用途に応用できる可能性があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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