心理学者に学ぶ「聞き上手になるためにやるべきこと/やってはいけないこと」とは?

誰しも「相手が一方的にしゃべってきて自分の話は聞いてくれなかった」という経験をしたことがあるはず。円滑なコミュニケーションのためには、相手の話に耳を傾けるのが不可欠ですが、聞き上手になるのは簡単ではありません。プロのカウンセラーがクライアントと関係を構築するために使っている手法を、イギリス・バンガー大学の行動科学の教授であり、公認心理学者でもあるフェイ・ショート氏が解説しました。
How to be a good listener - and how to know when you're doing it right
https://theconversation.com/how-to-be-a-good-listener-and-how-to-know-when-youre-doing-it-right-211556
ショート氏は、「聞き上手になるということは共感を持つこと」としていますが、この「共感」は聞き手のスキルの中で最も誤解されやすいものでもあるとのこと。その誤解とは、「相手を理解するには、相手が経験したことを自分も経験する必要がある」というものです。

2人の人間が同じ課題や困難を経験してもまったく別の気持ちになることがあるように、相手と同じ経験をしたことがあるからといって、その人を理解できるとは限りません。そのため、相手の気持ちを理解する唯一の方法は、「相手が自分と同じように感じるという固定観念を捨てて話に耳を傾けること」だと、ショート氏は指摘します。
相手の話に耳を傾ける時に重要になるのが、人が物事を考える基準となる「準拠枠」です。難しい専門用語のように思えますが、ショート氏は準拠枠を「全ての人が生まれつき持っているガラス窓」だと考えるとイメージしやすいとアドバイスしています。
人は何を見るにしてもこの「ガラス窓」を通して見ますが、ガラスには遺伝子など生物学的な要因による色やゆがみが元から付いています。また、人生を通じて得た経験もガラスの傷や汚れとして蓄積されていくので、それぞれの人が持つガラス窓はさながら古い教会のステンドグラスのようになっており、これが物の見え方や世界観を大きく左右します。従って、世界をありのままに見ている人はおらず、誰もが生物学的な背景や人生経験によって作られたフィルターを通じて物事を見ていることになります。

これを踏まえて話を元に戻すと、聞き上手になるには「話し手のガラスを通じて世界を見る努力」をする必要があるとのこと。その上で重要なポイントについて、ショート氏は以下のようにまとめました。
◆「ガラスに傷が付いててかわいそうだね」とは言わない
相手の心のガラス窓に傷が付いていることを哀れむのは、同情であって理解ではありません。なぜなら、相手の話をまったく聞いていなくても同情することは可能だからです。
ショート氏は、「思いやりを持って接すること自体は決して悪いことではないものの、同情しているからといって相手の気持ちや経験を理解しているということにはなりません」と指摘しています。
◆ガラスの傷や汚れを直そうとしてはいけない
ガラスの傷や汚れをなくせば相手の視界がクリアになるのは事実ですが、それは相手の人格を否定したり人生経験の一部をなかったことにしようとしたりするようなものです。
前述の通り、悪い経験であれ素晴らしい経験であれ、ガラスに刻まれた傷はその人の人生の足取りそのものなので、それを否定する権利は誰にもないとショート氏は述べました。

◆ガラスの跡を無視してもいけない
相手の価値観に無理やり踏み込んではいけませんが、ガラスの傷を無視するのもよくないとのこと。そのため、どんな経験が相手のガラスに傷や汚れをつけたのかを質問して、その答えによく耳を傾ける必要があります。
ここで注意すべきは、聞き手に徹することです。人はよく、他の人の経験を聞くと「自分にも似た経験がある」と自分語りに脱線しがちですが、これでは聞き上手とは言えません。
◆なかなか核心に迫れない時の対処法
いくら聞く姿勢を取っても、相手が心を開いて自分の経験を打ち明けてくれなければ会話が進みません。特に、ガラスの傷の元となった厳しい経験は誰にとっても話しにくいものです。
ショート氏によると、そういう場合はそもそも人前で話すことについてどう感じているのかを尋ねてみると、相手の世界観を垣間見ることができるとのこと。例えば、なかなか自分のことを話せない人の場合、学生時代にいじめを受けたことでガラスに傷がつき、世界には失敗を笑いものにする人ばかりなように見えてしまっている可能性があります。

聞き上手になるコツについて、ショート氏は末尾で「話している人の準拠枠を通じて世界を見るように練習すると、勘違いしたり解決を急いだりする可能性が低くなり、より深い関係を築ける可能性が高くなります。これが、カウンセラーがクライアントと関係を築く方法です。じっくり聞くことを通じてラポール、つまり信頼関係が構築されると、純粋にその人の話を聞いて理解したいと感じられるようになるので、口を挟んだり自分の思い通りに会話を誘導したりしようとは思わなくなります」とまとめました。
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