メモ

環境活動を中傷するという「アトラス・ネットワーク」について環境活動家はどう考えているのか?


政府の気候変動対策に不満を抱いた活動家が道路に居座り、交通網をまひさせるなどの事件が近年多発しています。こうした環境活動が過激であることがしばしば非難されますが、これについて環境活動に関するコラムを掲載するThe New Publicは「反環境活動のネットワークが存在する」と主張しています。

Meet the Shadowy Global Network Vilifying Climate Protesters | The New Republic
https://newrepublic.com/article/175488/meet-shadowy-global-network-vilifying-climate-protesters

2023年、ドイツで気候変動対策を呼びかける「ラスト・ジェネレーション」という団体の活動家たちが交通を妨害しました。


The New Publicは、道路を封鎖するという行為は過去数十年にわたり奴隷解放運動家や公民権運動家、反戦運動家によって行われてきた「穏当な抗議活動である」と指摘し、ラスト・ジェネレーションの活動家を擁護しています。

上記の事件では、活動家を追い払うために実力行使に出たトラックの運転手に賛否両論が集まりました。警察当局は活動家たちを問題視し、事件の数か月後に一部活動家の家宅捜索を行い、銀行口座を凍結したとのこと


The New Publicは「著名な政治家が活動家を暴力的なテロリストと比較し、大手メディアが報じるというその構図を繰り返していれば、活動家を道路から髪ごと引きちぎったり、殴ったりすることを正当化するのは簡単なことです」と指摘。著名な政治家の一人として、ドイツ自由民主党のフランク・シェフラーという人物が挙げられると述べています。

シェフラー氏は強硬派として知られるドイツ連邦議会議員で、自らを気候変動懐疑論者と表現したこともあるとのこと。ラスト・ジェネレーションが抗議活動を開始するやいなや、シェフラー氏は活動家たちをテロリストと表現し始め、グループを「犯罪組織」と呼び、組織犯罪として捜査するよう公に要求しています。保守派のメディアがこれに同調し、6ヵ月後にはラスト・ジェネレーションの活動家たちが全国的に家宅捜索を受けました。


このシェフラー氏が後に参加したのが、「自由主義」を主張する組織のアトラス・ネットワークでした。アトラス・ネットワークは世界中から500以上のシンクタンクが加盟している組織で、「すべての個人の経済的・個人的自由の権利を確保することを目的とする非営利団体」と自らを説明しています。源流はアントニー・フィッシャーという人物が設立したイギリス経済問題研究所(IEA)です。

フィッシャーは裕福な鉱業一家に生まれた人物です。第二次世界大戦中にイギリス空軍に従軍したフィッシャーは、弟が乗った飛行機が撃墜されるのを目の当たりにし、戦争を終わらせるために、より自由で豊かな世界を求めて戦うことを決意したと伝えられています。当初フィッシャーは政治活動を行っていましたが、のちにIEAを設立して知識人としてネットワークを広げていきました。


IEAは次第にイギリスで影響力を持ち始め、イギリス国内で自由市場を広めたほか、アメリカのビジネスマンたちに1960年代の社会運動に反撃するよう促しもしました。1974年、フィッシャーはカナダに渡り、イギリス国外では初となるシンクタンク、フレーザー研究所を共同設立。その後もシンクタンクを複数設立し、中でもIEAとアダム・スミス研究所はマーガレット・サッチャーの当選に寄与していたと、The New Publicは記しています。

フィッシャーは自分が立ち上げた組織をすべてネットワークに結びつけたいと考え、1981年にアトラス・ネットワークを発足させました。この組織は当初フィッシャー自身が設立に関わったシンクタンクだけで構成されていましたが、志を同じくする数百の団体が後に加わっています。


The New Publicによると、アトラス・ネットワーク設立当初からフィッシャーは石油企業との関係を築き、ラテンアメリカで「環境規制や先住民の権利に関する提案」に反対するなどの活動を行っていたとのこと。加えて、環境政策が成功したという論文や、石油採掘などの重要インフラ事業に対する抗議活動を是正しようとする法案などに、アトラス・ネットワークに加盟するシンクタンクが関与してきたとThe New Publicは指摘しました。

The New Publicは「アトラス・ネットワークの幹部や、加盟するシンクタンクは、環境保護主義者たちを常に社会のガンとして描いてきました」と述べ、環境保護に関するいくつかの取り組みをアトラス・ネットワークが中傷し、妨害してきたとの意見を伝えています。


歴史的な文化遺産に傷を付けたり、公共空間で他者に損害を与えたりと、環境活動家にかかわらず一部の運動家の行為には目に余るものが多く散見されます。これについてThe New Publicは「世論は、活動家たちの行為がいかに過激かということばかり論じていて、彼らが実際に何を求めているのかに目を向けていません」と指摘しました。

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in Posted by log1p_kr

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