体重がシロナガスクジラの2倍で史上最も重い古代クジラの化石が見つかる
現代の地球で最大の動物はシロナガスクジラで、成体の体重は平均約100トンもあるといわれています。さらに、ペルーで見つかった化石の研究により、4000万年前の海にはシロナガスクジラの2~3倍も重い巨体を持つ古代クジラが生息していた可能性があることがわかりました。
A heavyweight early whale pushes the boundaries of vertebrate morphology | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06381-1
This colossal extinct whale was the heaviest animal to ever live | Live Science
https://www.livescience.com/animals/whales/this-colossal-extinct-whale-was-the-heaviest-animal-to-ever-live
Heaviest animal ever? Scientists discover massive ancient whale
https://phys.org/news/2023-08-heaviest-animal-scientists-massive-ancient.html
The heaviest animal ever may be this ancient whale found in the Peruvian desert | AP News
https://apnews.com/article/ancient-whale-heaviest-animal-d4e4c1b8eb58bb0ee9702052f6adb457
今回、科学誌・Natureで史上最も重い動物の可能性があると発表されたのは、今から約4000万年前の海で暮らしていたと推定される原始クジラのバシロサウルスの仲間です。バシロサウルスは発見当初、恐竜のようなは虫類だと思われていたことから「トカゲの王」を意味する学名が与えられています。
考古学者らは、2006年にペルー南部イカ県の砂漠で巨大な化石を発見していましたが、発掘には長い歳月がかかりました。なぜなら、化石はあまりにも巨大かつ高密度で、脊椎の骨である椎骨ひとつだけで150kgもの重さがあったからです。
最終的に椎骨13個、肋骨(ろっこつ)4本、寛骨(かんこつ)1個が見つかり、研究グループはこの骨の持ち主を「ペルーの巨大クジラ」を意味するペルケトゥス・コロッススと名付けました。
以下はペルケトゥス・コロッススの骨格図で、左から寛骨、椎骨、肋骨の位置を示しています。
推定ではペルケトゥス・コロッススは全長20メートルほどとされており、巨大ではあるもの全長30メートルになることもあるシロナガスクジラには及びません。
注目すべきはその体重で、骨格だけで5~7トンもあり、これはシロナガスクジラの2~3倍にもなるとのこと。さらに、体全体の重さは最大で340トンに達し、既知の動物の中では最も重い巨体を誇ったと考えられています。比較すると、これまで確認されているシロナガスクジラの体重は最大でも199トンしかありません。
ペルケトゥス・コロッススは、この超高密度の骨格をバラスト代わりにして潜水し、マナティーのようにゆっくりと海底付近を漂いながら沿岸の浅い水域で生活していたと考えられています。ただし、頭や歯の化石が見つかっていないため、何を食べて生きていたのかはわかっていません。研究グループは、おそらく海底で餌をあさっていたか、オキアミなどの小さな海洋生物を食べていた可能性があると述べました。
今回の研究は、単に動物の体重の記録を塗り替えるだけでなく、クジラの進化についての常識を一変させる可能性のあるものだと位置づけられています。なぜなら、原始のクジラの仲間がこれまで考えられていたよりも3000万年も早く体重の限界に達していたことを意味しているからです。
論文の筆頭著者であるドイツ・シュトゥットガルト国立自然史博物館のイーライ・アムソン氏は、「ペルケトゥス・コロッススはクジラ類の進化と極端な巨大化に関する我々の理解を完全に変えるものです」と話しました。
・関連記事
かつて隆盛を誇りながらも絶滅してしまった巨大生物10選 - GIGAZINE
古代の超巨大ザメ「メガロドン」が絶滅した原因が最新研究で示される - GIGAZINE
「ゾウの8倍重い」「かみつく力がティラノサウルスの10倍」などスケールがデカすぎる古代の超巨大サメ「メガロドン」にまつわる7つの伝説 - GIGAZINE
ティラノサウルスの10倍重い史上最大の陸上生物「ドレッドノータス」とは? - GIGAZINE
クジラはごく最近急激に大きくなった、その理由とは? - GIGAZINE
・関連コンテンツ