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老化による脳の炎症はDNAがミトコンドリアから漏れ出したせいで起きる


老化すると発生する慢性的な炎症には、「cGAS-STING経路」と呼ばれる経路が関わっています。新たな研究により、脳の炎症はミクログリア細胞内の損傷したミトコンドリアからDNAが漏れ出したことによるものであることがわかりました。

cGAS–STING drives ageing-related inflammation and neurodegeneration | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-023-06373-1


The Aging Brain: Is Misplaced DNA to Blame? | Science | AAAS
https://www.science.org/content/blog-post/aging-brain-misplaced-dna-blame


これはスイス連邦工科大学ローザンヌ校・世界保健研究所の研究チームが明らかにしたものです。

「cGAS-STING経路」は自然免疫などに関わる経路で、老化で発生する慢性炎症を引き起こす原因であることはわかっていますが、なぜ炎症が起きるのか、どのように対策すればいいのかについては研究が進められてきました。


研究チームは2018年、cGAS-STING経路が老化した脳、および神経変性疾患の患者の脳に見られる炎症の重要な鍵であることを発見しました。

Targeting STING with covalent small-molecule inhibitors | Nature
https://doi.org/10.1038/s41586-018-0287-8


今回の研究はさらに一歩前に進み、ミクログリア細胞内の損傷したミトコンドリアからDNAが漏出したことによって、認知力や記憶力の低下の原因となる炎症が引き起こされると突き止めたものです。

研究チームは、STING阻害剤についても研究を行っており、投与するとマウスのさまざまな組織で炎症の連なりを防ぐことができたことが確認されています。

なお、今回の結果だけをみるとミトコンドリアの機能不全と炎症について直接的な関係があるように見えるのですが、研究チームは、炎症反応を引き起こしているのはミトコンドリアDNAではなく核DNAである可能性があるほか、ミクログリア細胞だけではなくニューロンなどでも炎症反応が見られるかもしれないとして、注意を呼びかけています。

この結果を受けて、有機化学の博士号を持ち、大手製薬会社でアルツハイマー病や糖尿病などの創薬に携わってきたデレク・ロウ氏は「老化するとがんになりやすくなる」という関係があるように、老化とウイルスへの対処能力との間にもトレードオフの関係がある可能性を示唆しています。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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