サイエンス

AIを用いて新型コロナウイルス感染症の再発防止に役立つ情報を導き出す試み


日本では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法の位置付けが2023年5月をもって5類に移行しました。しかし、新型コロナウイルスの脅威は消え去ったわけではなく、2023年8月時点でも1週間あたり数万人の感染者が発生しています。COVID-19の収束のためには効果的な治療方法の確立が求められているのですが、2023年4月に発表された研究論文ではAIを活用することで「COVID-19の再発を防ぐ薬の組み合わせ」を求めるために必要な因子を発見したことが報告されています。

Frontiers | Learning from real world data about combinatorial treatment selection for COVID-19
https://doi.org/10.3389/frai.2023.1123285


Artificial Intelligence Uncovers the Best Drug Combos To Prevent COVID Recurrence
https://scitechdaily.com/artificial-intelligence-uncovers-the-best-drug-combos-to-prevent-covid-recurrence/

AIによるCOVID-19治療法の選別を行ったのは、製薬会社メルク・アンド・カンパニーやカリフォルニア大学の研究者らによる研究チームです。研究チームによると、中国ではCOVID-19の症状で入院した患者のうち約30%は退院後28日以内に新型コロナウイルスの陽性反応を再度示したとのこと。この事実から研究チームはCOVID-19の死亡率ではなく再発率に着目することにしました。


一般的に、COVID-19の治療には少ない種類の薬が用いられますが、中国ではパンデミックの初期化から最大8種類の薬が処方されていました。このため、研究チームは中国の治療データを分析することで、多用な薬の組み合わせと患者の特性の間の因果関係を求めることができました。

研究チームが400人を超える中国での治療データを機械学習を活用しながら分析した結果、最適な薬の組み合わせは患者の「年齢」「収縮期血圧」「血中CRP濃度」によって変化することが明らかになりました。

研究チームによると、研究の成果は「COVID-19の治療に最適な薬を選別するための条件」を発見したことだけでなく、交絡因子が存在するデータから因果関係を抽出する手法を開発した点にもあるとのことです。

なお、AIを医療分野で活用する研究は世界中で行われており、2023年7月にはAIを用いて創薬プロセスを圧倒的に短縮できるという研究結果が報告されています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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