サイエンス

既にある薬の中から別の病気に効果があるものを見つけ出してくれるAIが開発される


新薬開発を行う場合、細胞実験・動物実験・臨床試験という複数の段階にまたがる実験を行い、安全性と効果を当局に承認してもらう必要があるため、長い時間が必要となります。このため、ある病気に対してすでに効果と安全性が認められている薬を別の病気に転用するという方法で時短が図られることもありますが、それでも時間のかかる臨床試験は必要です。このような薬の転用における人的リソースと時間を削減すべく、研究者が大量のデータを学習させた人工知能(AI)アルゴリズムに、薬の候補とその効果を推測させる方法を編み出しました。

A deep learning framework for drug repurposing via emulating clinical trials on real-world patient data | Nature Machine Intelligence
https://www.nature.com/articles/s42256-020-00276-w

Using artificial intelligence to find new uses for existing medications
https://techxplore.com/news/2021-01-artificial-intelligence-medications.html

ある病気について既に効果が認められ使用されている薬を、別の病気の治療に役立てることをドラッグリポジショニングと呼びます。ドラッグリポジショニングは新しい概念ではなく、斜視の治療に使われていたボトックスが美容外科領域で使われるようになったことに代表されるほか、抗寄生虫薬が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として有望であると考えられていることも例として挙げられます。

ドラッグリポジショニングは既に人に対する安全性が認められている薬を用いるため、新薬開発に比べ、治療薬として承認されるまでの時間を短縮できるという点でメリットがあります。しかし、それでもランダム化臨床試験を経て病気に対して効果を発揮することを証明する必要があり、多くの時間と才能を必要とする作業です。


オハイオ州立大学の研究者たちは、この問題を解決すべく、大量の患者のデータセットと人工知能(AI)を使って「有望なドラッグリポジショニングの候補」と「得られる効果」を推測するフレームワークを開発しました。研究では「動脈疾患を持つ患者が心不全や脳卒中を防ぐドラッグリポジショニング」について検討されましたが、フレームワーク自体は他の多くの病気のドラッグリポジショニングに対して使えるそうです。

研究を行ったPing Zhang氏によると、この研究はディープラーニングのアルゴリズムを使用して実世界のデータを処理し、複数の交絡因子をコントロールして、臨床試験をエミュレートする最初のものとのこと。

コンピューティングに使われるデータには電子カルテや保険金の請求情報、処方箋など、現実世界に存在する数百万の患者から集められたものが使用されています。「実世界のデータには多くの交絡因子があります。このため、複数のパラメータを処理できるディープラーニングのアルゴリズムを使う必要があるのです」「数百から数千の交絡因子は、人間では扱えません。問題解決にはAIが必要になります」とZhang氏は述べました。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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