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死者を冷凍保存して未来で復活させる「クライオニクス」の実行を目指すスタートアップに潜入してあれこれ聞いたムービー


クライオニクス(人体冷凍保存)とは、現代の技術では治療が不可能な人体を冷凍保存することで、医療技術が発達した未来で復活して完治することを目的としたアイデアです。サイエンス・フィクション(SF)では「コールドスリープ」などの名称でしばしば登場しますが、実際に2016年時点で世界中の約350人が「法的な死亡宣告の後に、生前の契約に基づいて冷凍保存」されています。そのようなクライオニクスを実行する会社がスイスに新しく登場しており、科学や歴史などのトピックに関するムービーを投稿するYouTuberのトム・スコット氏が、実際に人体を冷凍保存する施設を訪れて創業者に話を聞いたムービーを公開しています。

Storing dead people at -196°C - YouTube


ムービーの最初にスコット氏は、「私は、死は悪いことだと考えており、それを克服する努力をすべきだと思います」と述べた上で、「しかし、これは物議を醸す意見であり、私がここで語る資格のあるテーマではありません。私は哲学者ではないため、クライオニクスが含む倫理的な問題への複雑な議論は避けたいと思います。また、このムービーは広告ではありません。私は単に、未来での復活を期待して死者が保管されている場所を見るように招待されただけにすぎません」と注釈を述べています。


クライオニクスを行うTomorrow Biostasisの創設者兼CEOで医学博士のエミール・ケンジオラ氏は、「Tomorrow Biostasisで冷凍保存されている患者の数は、0ではありませんが、まだほとんどいません。正確な数は、数を公開することで患者のプライバシーが侵害されない十分な数まで増えたら公開する予定ですが、現在のところは非常に少数です」と話しています。


ケンジオラ氏やTomorrow Biostasisのホームページでは、冷凍保存されている「患者(patient)」と表現していますが、冷凍保存が許されているのは医学的に死亡が認められた場合のみであり、法的にも「遺体」となります。生前にTomorrow Biostasisと契約していた人物が死に近づいた際には、専用の救急車が派遣されます。


以下の画像は専用の救急車の内部。心臓が停止してから冷凍保存の手順が行われるまでの時間はできる限り短くする必要があり、冷凍保存のためには3つの手順を同時に開始するとのこと。第1に、できるだけ早くクールダウンを開始することで、細胞の代謝率を低下させて細胞が死滅する速度を遅らせます。第2に、代謝をある程度サポートするために心肺蘇生や胸骨圧迫、酸素投与などに似た取り組みも行います。第3に、遺体の温度が0度を下回るより前に、体内の血液と水分を全て医療用の不凍液と交換します。ケンジオラ氏によると、クライオニクスは厳密にはなにも「凍らせる」ことはしておらず、実際上は細胞を「ガラス化」させるのだそうです。


冷凍した身体を保存しておく施設は以下の画像のような感じ。


冷凍された身体は、ステンレス鋼の容器に収納され、液体窒素によって低温で保たれます。冷凍プロセスは、現代の技術では回復不可能な損傷を大規模に人体に与えるものであり、その回復手段が完成する見込みもありません。液体窒素につけられることで細胞が変化したり劣化したりすることを抑えられるため、遠い将来に回復できるようになる可能性はありますが、回復できない可能性も十分に考えられます。


死後の冷凍保存が計画通りに進んだとしても、回復までほとんど無期限に近い年月、サービスを利用し続けることになります。この料金に関しては、Tomorrow Biostasisの場合、生きている間に少額の会費と、死亡時に約20万ユーロ(約3000万円)がかかります。約20万ユーロの大部分は非営利団体に寄付され、非営利団体はその資金を元に、インフレ率を1~2%程度上回るリターンを期待した投資を行い、冷凍保存を維持するのに十分な資金を確保しています。また、将来に回復して社会復帰していく際の費用としても、投資による資金が蓄積されています。

ケンジオラ氏はTomorrow Biostasisおよびクライオニクスのビジョンについて、「凍結保存の手順を改善していくだけではなく、大幅に手ごろな価格とすることを目指しています。おそらく時間の経過と共に5桁ユーロ(約150万円~1500万円程度)の幅まで落ち着くと思います」と展望を示しています。


スコット氏は「ケンジオラ氏は会社のCEOであるため、ある程度偏った見方をしていると思われます」と注釈した上で、その中でもケンジオラ氏は率直に語ってくれたため、安心して撮影することができたと話しています。


ケンジオラ氏はクライオニクスについて、「『何%の確率でうまくいく』というようなことは決して言いません。冷凍保存は医療行為ではなく、研究の手順です。冷凍保存が機能するかどうか、いつ機能するかは、世界中の誰にもわかりません。もっと生きていたいと思ったとき、死にたくないと思ったとき、冷凍保存が決してうまくいかないことが将来的に判明するとしても、代替手段の可能性は限りなくゼロに近いです」と率直な考えを述べています。


スコット氏は最後に、「クライオニクスは現時点では、ごく少数の富裕層のための選択肢であり、おそらくうまくいかないと思います。しかし、人類は死を克服しようと努めるべきだと私は考えているため、この選択肢を選ぶ人に反論するのは難しいです」と語っています。

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in 動画, Posted by log1e_dh

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