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世界最古の作家「エンヘドゥアンナ」とは?


世界最古の文字は、5000年以上前の古代メソポタミアが用いていたくさび形文字だと知られています。一方で、文字を用いて物語を作成していた世界最古の作家については、「イーリアス」「オデュッセイア」で知られるホメーロスや、女性詩人のサッポー、歴史家のヘロドトスといった古代ギリシャの有名な人物の中で意見が分かれることがあります。ニューヨークのメトロポリタン美術館で博士研究員を務めるエルハン・タムール氏は、よく名前が上がる人物よりも1000年以上も前にいた人物である「エンヘドゥアンナ」こそが「世界最古の作家」であると語っています。

Who was the world's first author? | Live Science
https://www.livescience.com/worlds-first-author


タムール氏は世界最古の作家として、紀元前2285年から2250年ごろの人物とされるアッカドの巫女(みこ)・エンヘドゥアンナの名前を挙げています。タムール氏はニューヨークのモルガン・ライブラリーで2022年10月から2023年2月に開催されたエンヘドゥアンナに関する展覧会「She Who Wrote: Enheduanna and Women of Mesopotamia, ca. 3400–2000 B.C.」の共同キュレーターを務めました。

She Who Wrote: Enheduanna and Women of Mesopotamia, ca. 3400–2000 B.C. - YouTube


イェール大学で古代アッシリアの研究をするベンジャミン・フォスター氏は、「世界最古の作家」について、「最初の著者というのは、私たちが名前を知っている人物で、既存のテキストと結び付けることができる最も古い人物ということを意味します」と説明しています。フォスター氏によると、メソポタミアには多くの文学がありますが、そのほとんどは誰が描いたのか分からないものとなっています。しかし、エンヘドゥアンナだけは例外として、作品と名前が残っています。

エンヘドゥアンナはアッカドの王・サルゴンの娘で、アッカドがメソポタミア南部のシュメール人を征服したとき、サルゴンはメソポタミアの大部分を統治下に置きました。これにより「世界初の帝国」であるアッカド帝国への道が開かれたとタムール氏は指摘しています。

サルゴンは新たな帝国を強固にする取り組みの一環として、娘であるエンヘドゥアンナをシュメールの都市ウルで月の神・ナンナの大祭司に任命しました。「エンヘドゥアンナ」という名前はシュメール語で「大祭司、天の飾り」という意味があり、この役割を引き受けたときにつけられた名前だそうです。エンヘドゥアンナはナンナの大祭司として、そして王である父の代理人として重要な責任を負い、巫女として詩を書き始めました。

エンヘドゥアンナは1927年にイギリスの考古学者であるレオナード・ウーリー氏がウルで発掘した円盤で知られています。円盤にはナンナの娘・イナンナに奉納する女性が描かれており、裏にはエンヘドゥアンナという名前が記されていたことから、ウルの巫女・エンヘドゥアンナという名前が判明。結果として、ウルの巫女が書いたとされる詩の作者の名前が「世界最古の作家」として明らかになりました。


エンヘドゥアンナの詩ではナンナだけではなく、イナンナをより多くたたえる傾向にあるそうです。またタムール氏によると、エンヘドゥアンナはイナンナをアッカドの愛と戦争の女神であるイシュタルと同一視していた性質が垣間見えるとのこと。

そのほか、エンヘドゥアンナの詩には彼女を強制的に追放しようとしたウルの王・ルガランヌに対する闘争など、自伝的な詳細が多く含まれています。タムール氏は「エンヘドゥアンナは、私たちが知る限り、自伝的な詳細を物語に組み込んだ最初の作家です。さらに、彼女がこれらの詩をどのように創作したかについて語った最初の作家でもあります。彼女は創作という行為を出産に例えていますが、この比喩が初めて使われていることは間違いなく、そしてそのような比喩は世界の文学の中で何千年も使われ続けていきます」と語っています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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