サイエンス

次世代の地熱発電テクノロジー「強化地熱システム」のブレイクスルーをスタートアップが達成、Googleのデータセンターにも電力供給予定


アメリカのテキサス州ヒューストンに拠点を置く地熱発電スタートアップのFervo Energyが、「Enhanced geothermal systems(EGS:強化地熱システム)」と呼ばれる次世代地熱発電技術の大規模なデモンストレーションに成功しました。商業規模で強化地熱システムを運用できることが実証されたことを受け、Fervo Energyは2023年中にGoogleのデータセンターやインフラストラクチャーに電力供給を開始するとのことです。

Fervo Energy Announces Technology Breakthrough in Next-Generation Geothermal - Fervo Energy
https://fervoenergy.com/fervo-energy-announces-technology-breakthrough-in-next-generation-geothermal/


Fervo Energy Says it Has Achieved Geothermal Energy Tech Breakthrough - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-07-18/fervo-energy-says-it-has-achieved-geothermal-energy-tech-breakthrough?sref=cJ0KKxwd#xj4y7vzkg


地熱は風力や太陽光などと同様にカーボンフリーのエネルギー源として知られていますが、発電に必要なほどの地熱を得るのは火山活動が活発でない地域では困難です。そんな地熱発電の課題を解決するために考案された強化地熱システムは、地中深くまで掘った穴に水などを注入し、地熱を取り出すという仕組みとなっています。

Fervo EnergyのCEOを務めるティム・ラティマー氏がTwitterで示した以下の図を見ると、強化地熱システムがどういうものか大まかに理解できます。地表から掘った穴を利用して地熱を取り出すため、火山活動による地熱が地表まで届かないような地域でも、地熱を活用して発電することが可能というわけです。


強化地熱システムの実験は1970年代から始まったものの、掘削の難しさやコスト面での課題が浮上したため、20世紀末頃には実験や研究が尻すぼみになっていたとのこと。しかし、アメリカでは21世紀のシェールガス革命に伴って大幅に掘削技術が進歩し、掘削コストが大幅に低下したため、かつては困難だった「地中深くでの水平方向への掘削」が可能になったそうです。そこで、当時石油・ガス業界で掘削エンジニアとして働いていたラティマー氏は、「大きく進歩した現代の掘削テクノロジーを強化地熱システムに利用できるのではないか」と考えました。


ラティマー氏の意見に賛同してくれる人はなかなか現れませんでしたが、大学院に進学して地熱発電の研究者らと共著で論文を書くなどの活動を行い、2017年にFervo Energyを立ち上げました。強化地熱システムを実用化するというFervo Energyの計画には批判的な声も寄せられましたが、理解のある顧客や慈善家、ベンチャーキャピタルなどの支援を受けることができたとのこと。2018年にはビル・ゲイツが率いるエネルギー問題専門のファンド「Breakthrough Energy Ventures(BEV)」の支援を受けたことも報じられています。

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そして2023年7月18日、Fervo Energyはネバダ州北部にある「Project Red」という実験区域で30日間の本格的な試験を実施し、3.5MW(メガワット)の電力を生成することに成功しました。1MWあれば750世帯に電力を供給できるため、Project Redで生成された電力は商業規模のものといえます。ラティマー氏は声明で、「石油・ガス産業の掘削技術を適用することにより、これまで地熱発電が行われていなかった世界中の地域で、週7日24時間体制でカーボンフリーエネルギー資源を生産できることが証明されました」と述べています。

Fervo Energyは2021年にGoogleと次世代地熱発電システムの開発に向けた企業間契約を締結しており、今回のブレイクスルーにもGoogleの後押しがあったとのこと。Project Redは2023年中に電力網に接続され、ネバダ州全体のGoogleデータセンターやインフラストラクチャーに電力を供給する予定です。

今後、Fervo Energyはユタ州南西部に建設中の発電区域でもデモンストレーションを行うとしており、期待通りに電力出力が最大化されれば、ユタ州のサイトでは2028年までに約400MWを供給すると予測されています。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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