ゲーマーに嫌われすぎなチート対策プログラム「Denuvo」の「パフォーマンス悪化説」について中の人が説明

近年出荷されているほとんどのゲームにはチート防止や海賊版の作成防止などを目的としたアンチチートツールが組み込まれています。アンチチートツールの中でも「Denuvo」は数多くのゲームに採用されているのですが、Denuvoの導入に伴うパフォーマンス悪化や要求される権限の大きさを嫌うゲーマーから非難されることもあります。そんなDenuvoの開発元であるirdetoのゲーム関連事業最高執行責任者を務めるスティーブ・ヒュイン氏が海外メディアArs Technicaのインタビューに応じています。

Denuvo wants to convince you its DRM isn’t “evil” | Ars Technica
https://arstechnica.com/gaming/2023/07/denuvo-wants-to-convince-you-its-drm-isnt-evil/

◆Denuvoはゲームのパフォーマンスを悪化させるのか？
Denuvoはゲームプレイ時の挙動を検出して不正が行われていないか監視する機能を有しています。このため、ゲーマーたちからはDenuvoがゲームのパフォーマンスに影響を及ぼす可能を指摘されており、実際に複数のゲームで「Denuvoが適用された正規版」と「Denuvoを無効化した海賊版」のパフォーマンスを比較してDenuvoによる悪影響を指摘するムービーが公開されたり、2021年発売の「バイオハザード ヴィレッジ」で「Denuvoを無効化した海賊版の方がパフォーマンスが優れている」という検証結果が報告されたりしています。

「バイオハザード ヴィレッジ」の海賊版はオリジナルよりもパフォーマンスが向上していると報じられる - GIGAZINE

ヒュイン氏は正規版と海賊版の比較検証について、「比較検証は海賊版コミュニティによって行われています」「ゲームのパフォーマンスはリリース後のアップデートによって変化し続けるものであり、同一バージョンでない正規版と海賊版の比較には意味がありません」と指摘しています。しかし、Denuvoが採用された格闘ゲーム「鉄拳7」について原田勝弘ディレクターが「暗号化プログラムが影響してパフォーマンスが低下している」と言及した例があるように、Denuvoによるパフォーマンス悪化は海賊版コミュニティ以外からも指摘されています。

ヒュイン氏はDenuvoが「コードが変更されていない」ことを監視する仕組みであるためパフォーマンスへの影響は軽微だと主張し、パフォーマンス悪化が1％未満になることをパフォーマンステストの指標として採用しているとしています。また、ヒュイン氏は「残念なことに、Denuvoは信頼されていません」と述べ、信頼回復のためにゲームメディアに対してゲームの「Denuvoあり版」「Denuvoなし版」2種を提供して比較してもらう試みを進めていることを明かしています。

◆Denuvoによる保護は有効なのか？
Denuvoは非常に強力なコピーガード技術としてアピールされていますが、2017年にはDenuvoを採用した「バイオハザード7」のコピーガードがわずか5日間で破られる事態が発生しました。Denuvo採用ゲームが短期間でクラックされた例は他にも報告されており、ゲーマーの間ではDenuvoの性能を疑問視する声もあがっています。

最強のコピーガード技術「Denuvo」が5日で破られ「バイオハザード7」の海賊版が登場 - GIGAZINE

by Michell Zappa

ヒュイン氏によると、Denuvoのコピーガード技術は常にアップデートされ続けており、クラッキングを困難な状態に保っているとのこと。実際に、ゲームのクラッキング情報についてまとめているサブレディット「r/CrackWatch」には「2020年以降に公開されたDenuvo搭載ゲームのうち、クラックされたゲームは約半数に抑えられている」というデータが投稿されています。