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過剰な屋外広告を一切禁止する「クリーンシティ法」を本当に実行したブラジル・サンパウロの景観とは?

by Nicolas de Camaret

ブラジルのサンパウロでは、2006年9月に「Lei Cidade Limpa(クリーンシティ法)」と呼ばれる、店頭の看板や交通機関の広告、ポスターを含むすべての屋外広告の掲載を禁止する法律が可決されました。クリーンシティ法には経済の観点から批判する声も上がっていましたが、多くの住民が景観上有益な法律だと報告しています。

Sao Paulo: The City With No Outdoor Advertisements | Amusing Planet
https://www.amusingplanet.com/2013/07/sao-paulo-city-with-no-outdoor.html


Visual pollution
https://www.economist.com/business/2007/10/11/visual-pollution

2006年9月に当時サンパウロ市長だったジルベルト・カサブ氏の下で法制化されたクリーンシティ法では、タクシーやバスへの広告の禁止や店頭の看板に厳しい制限が課せられました。クリーンシティ法に違反した場合、最大800万ドル(約11億円)の罰金が科せられます。

クリーンシティ法の採決にあたっては、サンパウロ市内外の企業や広告業界から激しい批判が相次ぎました。広告の掲載禁止によって、1億3300万ドル(約190億円)の収益損失が発生し、約2万人が職を失うことが危惧されていたとのこと。


また、クリーンシティ法の可決に唯一反対票を投じたダルトン・シルバノ市議会議員は「広告は芸術の一種であると同時に、孤独と退屈を和らげるのに役立つ娯楽の一つです」と述べ、「広告がすべて撤去されると、この街はもっと寂しくて退屈な場所になると思います」と語っていました。

しかし制定から1年以内に、サンパウロ市内の約1万5000個の看板が取り壊され、クリーンシティ法に違反しない形での看板の縮小が求められました。結果的に広告収益の低下によってサンパウロの経済が破綻することはありませんでしたが、屋外広告が急ピッチで撤去されたことで、部分的に取り壊されたフレームなどが点在するようになりました。Amusing Planetのカウシク・パウトリー氏は「まるで戦争で荒廃した都市のようだ」と述べています。


しかし、2011年にサンパウロ市内の1100万人の住民を対象に実施された調査では、回答者の約70%が「クリーンシティ法は有益である」と回答しました。クリーンシティ法の施行で屋外広告が撤去されたことで、これまで見過ごされてきた建築デザインがあらわになり、長い間広告によって隠されてきた都市の美しさが明らかになったとのこと。


ブラジルの新聞「Folha de São Paulo」のヴィンシウス・ガルヴァオ記者は「クリーンシティ法の施行によって、サンパウロの街は新しい文化やアイデンティティを手に入れることができました」と述べています。

また、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsには「巨大なディスプレイや点滅するライトといった屋外広告が撤去されたことで、目の疲れを感じなくなり、街からバックグラウンドノイズが消えたように思えました」との意見も残されています。


一方でクリーンシティ法に対しては、店内に大型ディスプレイを設置することでクリーンシティ法に違反しないとの抜け穴もあることが報告されています。


クリーンシティ法の施行以降、サンパウロでは屋外広告が減少した一方で建物への落書きが急増しました。建物への落書きについては「ストリートアートの一種」として称賛する意見もある一方、「落書きは単なる破壊行為で芸術ではありません」との否定的な意見も上がっています。なお、サンパウロ市議会では建物への落書きについて討論が行われ、一部のストリートアートは保存に値するとして、サンパウロ市によって登録簿が作成されています。

by Diego Torres Silvestre

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in デザイン, Posted by log1r_ut

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