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「街中の公共スペースから広告スクリーンをなくそう」という運動が活発化、広告を覆い隠すデモ活動も

by Paul Conneally

街中の壁や公共交通機関の停留所などに設置されたスクリーンに表示される動画広告は、今や世界中の至る所で目にするようになっています。フランスでは、こうした街中の広告スクリーンを撤去しようという市民の動きが強まっており、デモ活動家による街中の広告を覆い隠すなどの反広告活動について、The Guardianがまとめています。

'Advertising breaks your spirit': the French cities trying to ban public adverts | Cities | The Guardian
https://www.theguardian.com/cities/2019/dec/23/advertising-breaks-your-spirit-the-french-cities-trying-to-ban-public-adverts

フランス北部の都市・リールでは、他の都市と同じく街中に広告スクリーンが立ち並び、数秒おきに切り替わる海産物やスコッチウイスキーの広告が、少しでも多くの歩行者の注目を集めようとしています。そんなリールに住むある看護師の男性は、最近になって大量の白い紙を持って街中を歩き回り、広告スクリーンを覆い隠すデモ活動を行っているとのこと。

「私は11年間にわたって緊急治療室で病気の患者を治療してきましたが、この活動は社会の病気を治療するためのものです」と男性は述べています。男性は他の抗議者たちと連絡を取り合い、白い紙を広告スクリーンに貼っているそうです。「通りを歩いている時に、常に自分が持っていないものを提示されているとしたら、人はどうやって幸せを感じられるでしょうか。広告は人の魂を破壊し、本当に必要なものが何なのかわからなくさせます」と男性は主張しています。

by Quentin Saison/The Guardian

フランスに広告文化が入ってきたのはイギリスやアメリカより後であり、1930年代の新聞では広告のことを「ウソの学校」と呼んでいました。その一方で、近年のフランスには世界でも有数の広告企業が本社を置いており、広告はもはやフランスの人々にとって身近なものとなっています。それでもフランス人の広告に対する批判は根強く、フランスでは数十年にわたって世界で最も組織化された反広告運動が展開されてきたと、The Guardianは指摘。

今や広告産業にもハイテク化の波が押し寄せており、電車のプラットフォームやショッピングセンター、街中の目立つ場所、公共交通機関の待合室など、家の外の至る場所に巨大な広告スクリーンが設置されています。近年では広告産業のIT化も進んでおり、広告スクリーンの前を歩く人々の情報を瞬時に収集し、最適化した広告がスクリーンに表示されるなど、より洗練された広告手法が使われるようになっているとのこと。

by Metropolitan Transportation Authority of the State of New York

実際にフランスの鉄道駅で1250台、パリの地下鉄で700台の広告スクリーンを展開している広告代理店のMediatransportsは、デジタル広告は通勤者にアプローチする優れた広告手法だと主張しています。「スクリーン広告は時間帯や天気などに素早く適応してメッセージを変更することができるため、紙の広告よりも高い収益を生み出します」と、Mediatransportsは利点をアピールしました。

その一方で、フランスの人々は街中の広告に対して強い不快感を表しており、議会では街中での広告規制も議論されています。たとえば、フランスの左翼政党であるLa France Insoumise(不服従のフランス)は2019年11月、「トイレの小便器の上部に広告表示用スクリーンを設置することを禁じる」という内容の修正案を議会に提出。不服従のフランスに所属するFrançois Ruffin議員は、2015年以降だけでフランスの25都市にある1200以上の小便器に広告スクリーンが設置され、トイレが「植民地化された」と指摘。「トイレで用を足すというささやかな安らぎの時間に、Uber・本・銀行・IT企業などの広告によって視覚的に『襲撃』されることは恐ろしい」と主張しています。

by Kecko

リールではすでに街中の広告に対する規制が行われており、歩道上にある公共物には商業用のビデオ広告が設置できない法律が施行されています。しかし、この法律はあくまでも公共物に対してのみ有効であり、公共交通機関の内部や駅構内には適用されません。そのため、リールの都市圏を網羅する公共交通機関が、バスの待合所に設置する広告スクリーンの数を大幅に増やす決定をした際も、議会は合法的に決定を中止させることはできなかったとのこと。

また、リールでは街中に並ぶ店舗のウインドウ内はプライベートな空間とみなされており、窓越しに覗ける位置であっても店の内側ならば広告スクリーンの設置が可能です。結果として美容院から家電量販店などあらゆる店のウインドウで、広告スクリーンが路上に向けて設置されている現状があります。


反広告運動を展開しているIT教師のFabien Delecroix氏は、「この判断は狂っています。誰かが通りに面した窓の内側で裸になっていたとして、誰も『あの人は自宅の中にいるので、技術的には裸を見せていない』とは言わないでしょう」と指摘。リールの副市長であるJacques Richir氏は、「公共交通機関における広告スクリーンは、侵襲的で邪魔であり、人々に多くのエネルギーを消費させます。運転手の注意をそらし、子どもをこれまでよりもビデオに夢中にさせるでしょう」と述べました。

フランス南東部のグルノーブルは、2014年から市長を務めるÉric Piolle氏の政策により、2017年に屋外広告を全面的に禁止したヨーロッパ初の都市になりました。

Europe's First Ad-Free City Replaced Billboards With Trees - Good News Network


バスや路面電車の停留所には依然として広告スクリーンがあるものの、300を超えるほとんどの屋外広告は街路樹や街のお知らせを貼る掲示板に置き換えられたとのこと。屋外広告の契約を更新しないことで、これまで市が得ていた64万ドル(約7000万円)の収入を失うことになりましたが、「公共のスペースは人々が出会う場所であり、広告の攻撃性を弱めることは誰にとっても利益があります」と、Piolle氏は主張しています。

ソルボンヌ大学で情報・コミュニケーション科学の教授を務めるCaroline Marti氏は、「非常に長い間、フランスの知識人は文化を破壊するものと広告を結び付けてきました」と述べ、広告は反民主主義的なものだとする批判がフランスに根強く存在すると指摘。「フランス人は比較的高い税金を払っているため、公共スペースは自分たちのものだという非常に強い考えがあります」と、Marti氏は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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