裁判で提出されたソニーの「黒塗り文書」の処理が甘かったせいで極秘情報がダダ漏れに、「Call of Duty」の収益やAAAタイトルの制作費が判明
MicrosoftによるActivision Blizzard買収をめぐって連邦取引委員会(FTC)が起こした裁判で、ソニーが提出した機密文書に行われるべきマスキング処理が不適切だったため、ゲーム事業に関する重要な機密情報が丸わかりになっていたことが、IT系ニュースサイト・The Vergeの報道により判明しました。
Sony’s confidential PlayStation secrets just spilled because of a Sharpie - The Verge
https://www.theverge.com/2023/6/28/23777298/sony-ftc-microsoft-confidential-documents-marker-pen-scanner-oops
問題の文書は、FTC対Microsoft裁判の一環として、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの社長兼CEOであるジム・ライアン氏が提出したもの。文書は重要な部分が黒塗りにされていましたが、スキャンすることでその一部を簡単に判読できるようになっていました。
以下は、裁判所が削除する前にジャーナリストらがダウンロードしたソニーの文書の一部です。拡大してよく見ると、黒塗り部分から数字がうっすらと浮かび上がります。
これにより、2022年2月にリリースされたHorizon Forbidden Westには300人の従業員と5年で2億1200万ドル(約305億円)の開発費が費やされたことや、2020年6月にリリースされたThe Last of Us Part IIには200人の従業員と2億2000万ドル(約317億円)の開発費が投入されたことがわかりました。
さらに、別の部分からには「約100万人がプレイ時間の100%をCall of Dutyに費やしている」ことなど、多くのPlayStationユーザーが使用時間の大半をCall of Dutyのプレイに費やしていることがわかりました。
この文書は、MicrosoftがActivision Blizzardを買収しCall of DutyをXbox独占にした場合、ソニーの収益がいかに大きな打撃を受けるかを示すためのもの。ソニーはかねてからMicrosoftのCall of Duty独占に対する懸念を表明しており、今回の文書でそれがいかに深刻なのかが改めて確認された形となります。
Call of Dutyへの依存は収益の数字にも表れており、Call of Dutyが2021年にプレイステーション事業にもたらした収益はアメリカだけで8億ドル(約1159億円)、世界全体では15億ドル(約2160億円)に相当するとのこと。しかも、これはゲーム単体での数字で、周辺機器やサブスクリプションなどをすべて含めると、その規模は年間139億ドル(約2兆44億円)、不明瞭な黒塗り部分の解釈次第では159億ドル(約2兆2934億円)にものぼります。
ソニー資料からは、ほかにも「アメリカのPlayStation 5所有者のほぼ半数がNintendo Switchを保有している一方、Xbox Series X|Sを持っている人は20%以下」という社内調査の結果もわかりました
The Vergeによると、ソニーの文書に不十分な編集を施したのが何者なのかは不明とのこと。裁判はFTCがMicrosoftを相手に起こしたものであり、ソニーは訴訟の当事者ではありません。ソニーは資料の一部を封印または編集するよう裁判所に繰り返し求めていました。
・関連記事
Microsoftがセガの買収を狙っていたことがActivision Blizzard買収を巡る公聴会の資料から明らかに - GIGAZINE
9兆6000億円規模のMicrosoftのActivision Blizzard買収を阻止するため当局が反トラスト訴訟を起こす可能性が高いとの報道 - GIGAZINE
MicrosoftのActivision Blizzard買収を阻止すべく連邦取引委員会が差止命令を申請 - GIGAZINE
Microsoft幹部が「Activision Blizzard買収の主要な反対者はソニーだ」「Call of Dutyにしがみついている」と発言 - GIGAZINE
MicrosoftによるActivision Blizzard買収を阻止するため連邦取引委員会が提訴 - GIGAZINE
・関連コンテンツ