TwitterがAPIを利用する研究者に対して「月額590万円を支払うか全データを削除するか」を迫っていることが暴露される
Twitterが研究目的で同社のAPIを利用している研究者に対して、「月額4万2000ドル(約590万円)を支払う」もしくは「これまで利用してきたTwitterデータの全削除」のいずれをか迫っていることが明らかになりました。
Twitter is making researchers delete data it gave them unless they pay $42,000
https://inews.co.uk/news/twitter-researchers-delete-data-unless-pay-2364535
Musk’s Twitter wants academics to delete data in “book burning” scheme - Dexerto
https://www.dexerto.com/tech/musks-twitter-wants-academics-to-delete-data-in-book-burning-scheme-2156746/
Twitterはすべてのツイートの10%をランダムにサンプルとして抽出するデータベース「Decahose」を提供しています。Twitterは長年このDecahoseのエンタープライズ向けAPIを学術研究者向けに提供しており、研究者はこれを使ってTwitter上でのコミュニケーションを研究・分析してきました。
具体的には、Twitter上のツイートを追跡することで、偽情報がどのように拡散されるかを分析したり、学術研究に利用したりするケースもあります。
また、Twitterを買収したイーロン・マスク氏は、買収前に「Twitterは事実上、公共の広場として機能していることを考えると、言論の自由の原則を守らないことは民主主義の根底を損なうことにつながる」とツイートし、Twitterが誰でも自由に利用できるようになるべきであると訴えていました。
Given that Twitter serves as the de facto public town square, failing to adhere to free speech principles fundamentally undermines democracy.
— Elon Musk (@elonmusk) March 26, 2022
What should be done? https://t.co/aPS9ycji37
しかしここ数週間、TwitterはDecahose APIを利用している研究者に連絡を取り、「プラットフォームに投稿された全ツイートの0.3%にアクセスするなら月額4万2000ドル(約590万円)を支払うように」と求めていることが明らかになりました。
この月額4万2000ドルという金額は、Twitterが企業向けに提供している有料プランと同額です。なお、Twitter APIが有料化された際、研究者からは「アクセスできるデータが少なすぎるのに価格が高額過ぎる」という不満の声が漏れていました。
Twitterが新しいAPIを発表して「30日以内の移行」を推奨、無料プランは月1500ツイート投稿までと限定的 - GIGAZINE
海外ニュースメディアのinews.co.ukはTwitterがDecahose APIを利用している研究者向けに送信したメールを独自に入手しており、メールの文面には「(4万2000ドルの利用料を支払わない場合)システムに保存およびキャッシュされているすべてのTwitterデータを消去する必要があります」と記されていると指摘。また、研究者は「Twitterデータを削除した証拠」としてスクリーンショットの提出を求められており、データ削除に応じる場合は30日間の猶予が与えられていると報じています。
TwitterがDecahose APIを学術研究者向けに無償で提供していたのはマスク氏によるTwitter買収より前のタイミングでした。そのため、研究者はDecahose APIが突如利用できなくなるようなことはないと信じており、契約書にデータ削除に関する文言が含まれていたものの「データ削除を求められるようなことはないだろうと考えていた」と研究者は語っています。
TwitterからDecahose APIに関するメールを受け取ったという匿名の研究者は、「過去数年間にTwitterで何が起こったのかを明らかにするために、かなりの量の研究が進行中です。今回のデータ削除要求は、これらの研究にとっても、プラットフォームの透明性にとっても、Twitter上での公開討論の歴史的資料にとっても壊滅的なものです」「これはビッグデータ界における焚書坑儒のようなものです」と述べました。
インディアナ大学のソーシャルメディア監視組織で所長を務めるフィリッポ・メンツァー氏は、「Twitter APIへの変更は、偽情報の拡散とその被害、ソーシャルメディアの操作、オンライン上での虐待に対する人々とプラットフォームの脆弱性に関する研究に、壊滅的な影響を与えます」と述べました。
マスク氏がTwitterを買収してからの方針転換に影響を受けているのは学術研究だけではないとメンツァー氏は言及。実際、Twitterについて研究する人々は偽情報の拡散を視覚化するためのツール「Hoaxy」や、不正アカウントを特定するためのツール「Botometer」などを開発してきました。なお、今回の研究者への通知により、これらのツールもすぐに利用できなくなります。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校でソーシャルメディアを研究しているマノエル・オルタ・リペイロ氏は、「Twitterの決定は、Decahoseを利用する研究グループによる論文の再現性に大きな影響を与える可能性があります」と言及。しかし、今回の変更は重大なものではあるものの、学術研究への影響は「ごく一部に留まる可能性が高い」と語っています。その理由について、リペイロ氏は「Decahoseを利用している学者は少数だと思います。そのため、今回の変更は標準APIやその後リリースされた学術APIを使用している人々には影響しない可能性があります」と述べました。
また、一部の研究者はツイートデータにアクセスするために非公式のデータをスクレイピングして分析するだろうと述べています。これはTwitterがAPIへのアクセスを値上げした際に、多くのデベロッパーが決めた反抗的なアプローチと同じです。ただし、このプロセスはTwitterによって公式アクセスを仲介してもらうよりもはるかに困難です。
inews.co.ukはTwitterにこの件について回答を求めていますが、返答は得られませんでした。
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