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「未解決のミステリー」を扱う作品が人を引きつける理由とは?


殺人や窃盗などの未解決事件や、宇宙人や幽霊などの未確認の事象、あるいは物語中に存在している「謎」を含め、「未解決のミステリー」というものはいつの時代も視聴者・読者を引きつけるものです。アメリカでも未解決事件や超自然的な謎を追うドキュメンタリー番組「Unsolved Mysteries」が長年人気を博していますが、なぜそのようなミステリーを魅力的に感じる人が多いのか、オーストラリアのサザンクイーンズランド大学でメディア研究の上級講師を務めるダリル・スパークス氏が解説しています。

Neverending stories – why we still love Unsolved Mysteries
https://theconversation.com/neverending-stories-why-we-still-love-unsolved-mysteries-141046


「Unsolved Mysteries」は1980年代から30年以上もリブートを繰り返しながら継続して人気があり、2020年にはNetflixのSFドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」で製作総指揮者を務めたショーン・レヴィ氏の担当する最新作が、Netflixで登場しています。

Unsolved Mysteries | Official Trailer | Netflix - YouTube


スパークス氏によると、「未解決のミステリー」には現実に起きた出来事と、都市伝説や伝承などを含む根拠のないものの2種類がありますが、この2つのカテゴリーの根底には同一の強力な心理的結びつきがあるとのこと。

まず、人は合理的な説明がすぐにつかないものを、自然と信じてしまう傾向があるとスパークス氏は述べています。テレビ局のSyfyが2014年にオーストラリアで行った調査では、調査に参加した人の88%が「超常現象が存在する可能性は十分にあると信じている」と回答し、そのうち50%は幽霊や精霊を信じており、42%がUFOや宇宙人を信じていると回答しました。


宗教哲学を研究するスティーブン・ロー氏は、超自然的な存在を信じてしまう理由について「宗教の認知科学に取り組む科学者たちは、人間が、意図や行動を無生物や目に見えないものに帰するための、過剰活動主体検出装置(HADD)を働かせていると考えています。人間は、何かを信じることで不明・不確実な事象をコントロールできている気分になり、不確実な状況の中で安心感を抱くことができます」と述べています。ロー氏は防御機構として働くHADDや、その他の信心や信念については「それが主観的経験の組みあわせに基づいている場合、誤った肯定的な信念に陥りやすいという事実は、注意を促す必要があります」として、根拠のない信念には用心すべきと語っています。


しかし、HADDは幽霊や精霊といった存在を信じる理由の一端を説明したものですが、その他の超自然的な信念を説明したものではなく、また、多くの人は超自然的な事象に科学的議論がなされている場合でも、合理的な説明を拒否して信念を抱く傾向にあるとスパークス氏は指摘しています。実際に「Unsolved Mysteries」の番組内では、証拠や理屈ではなく、宇宙人や幽霊と出会った個人の証言が大部分を占めています。

社会心理学者のジェニファー・ウィットソン氏とアダム・ガリンスキー氏が2008年に公開した論文では、人々は理性や認知のコントロールができていないことで、何もないところに一定のルールや迷信などの「錯覚」を生んでしまうことが示されました。ロー氏の結論と同様に、何もないところに何かがあると信じる理由は、不自然な状況に直面したときに心の中に秩序を生むための反応だと論文では結論付けられています。また、国立衛生研究所の研究チームが行った宗教的信念の神経的基盤に関する研究では、「神」というフレーズを聞くと脳の領域が活性化して、ポジティブな感情を引き起こすことが実証されました。これにより、根拠のない信念とは、生命現象の恒常性に関連した生化学の分野であると研究チームは主張しています。

「未解決のミステリー」には、超自然・超科学的なカテゴリーだけではなく、実際に起きた事件や事故のストーリーも含まれます。スパークス氏によると、このカテゴリーも超自然的なことへの信念と同様に、人間の本性にある暗い側面についての強い感情や感覚を利用して、人々を引きつけているとのこと。


心理学者のメグ・アーロル氏は、人々が実際に起きた犯罪の再現ムービーなどを楽しむことができるのは、「人間として、私たちは自分の性質の暗い側面を理解したいと思っています。残酷だったり恐ろしかったりする実際の出来事を、リアルに再現したムービーを見ることで、安全な方法で、安全な距離を保ちながら、人間の暗い可能性を探ることができます」と述べています。また、犯罪学者のスコット・ボン氏によると、連続殺人などの恐ろしい行為を目撃することで、脳の中で刺激的かつ中毒性のあるアドレナリンが生み出されるため、絶叫マシンに繰り返し乗るように残虐な事件を詳細に知りたくなるそうです。

そのほか、実際に犯罪に巻き込まれたり襲われたりした時に身を守る方法のヒントを得ることができるため、特に女性が犯罪ドキュメンタリーに引かれることが多いという研究や、「自分にこんなことが起こらなくて良かった」と安心するための一種のシャーデンフロイデ感情を楽しむためという推測もスパークス氏は挙げています。

ロー氏は「実際のところ、人間が超自然的な信念を抱く傾向が、単一のメカニズムによって説明されるとは思えません」と述べており、包括的な説明は難しいと語っています。一方でスパークス氏は、「未解決ミステリーを扱う番組が人気の理由は、ミステリーのカテゴリーやストーリーの内容にかかわらず、前向きな感情的反応をもたらす能力にあります。未解決のミステリーは、私たちが現実と超自然の両方の恐怖に満ちた世界に、簡単に犠牲になる可能性があるという信念を強化します」と説明しています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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