「物語」というものを人類が何千年も愛し続けている理由とは?
by MIKI Yoshihito
歴史上最も古い文学作品だといわれる「ギルガメシュ叙事詩」が3000年以上前に誕生してから現在に至るまで、「物語」は変わらず人々に愛され続けてきました。消えていく文化も多い中で、なぜ「物語」が残り続けているのか、ライターのデイビッド・ロブソンさんが謎に迫っています。
BBC - Culture - Our fiction addiction: Why humans need stories
http://www.bbc.com/culture/story/20180503-our-fiction-addiction-why-humans-need-stories
「ギルガメシュ叙事詩」は人類史で最古の作品の1つであるといわれていますが、文字発明以前にも物語は存在していて、たとえば約3万年前のものであるラスコー洞窟やショーヴェ洞窟の壁画は、口伝の物語の一場面が描かれたものだと考えられています。
by Bayes Ahmed
物語を現実逃避と考えるならば、進化論的な観点の中で時間とエネルギーの無駄にしかならないかもしれませんが、文学者と心理学者は、物語に没頭することによる潜在的な利益を見いだしています。一般的なアイデアで紡がれた物語は私たちの周りの世界をシミュレートし、異なる状況について想像することを可能にします。これにより、人々は共感と心の理論の実践を行うことができます。
この理論の証拠として、物語を読んだり聞いたりする時、社会的および感情的な処理に関与するとされる皮質のさまざまな領域が活性化することが脳スキャンで示されているとのこと。
by Media News
ミシガン大学のダニエル・クルーガー教授は、ストーリーテリングの能力とそこで語られる物語が、社会の中で協力する方法を学ばせ、正しい社会規範を伝える手段として進化してきたのかもしれないと語っています。
同様に、ロンドン大学の人類学者ダニエル・スミス教授はフィリピンの18の部族を訪れ、部族ごとに語られている物語の傾向や物語へのこだわりの強さの差異が、彼らがどれほど協力的かという点と関係していることを調査の上で明らかにしました。
何百年、何千年と読まれ続けている物語は単に歴史的に意義深いだけではなく、現代にも共通する普遍的な要素があり、人々の共通的な心の理論を活性化してくれます。パーソナルな趣味という感覚が強い読書や映画鑑賞は、むしろ私たちの他者への共感性や社会性を強めてくれているのです。
by yosshi
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