博物館や美術館はそもそも何のために存在するのか?をムービーで説明した「The Case for Museums」

高価な美術品や歴史的に貴重なものが所狭しと並ぶ美術館や博物館へ、「美しい物を見たい」という目的で訪れる人も多いはず。しかし歴史やアートに関する映像を制作するThe Art Assignmentによると、美術館や博物館といったミュージアムは「美」よりも重要な目的を持っており、ゆえに人は何度も美術館を訪れるべきだと説明しています。
The Case for Museums | The Art Assignment | PBS Digital Studios - YouTube

何百年もの間、人は歴史的なもの、高価な金属、アートなど、「価値がある」と考えるものを安全な建物の中に保管してきました。

美術館や博物館といった「ミュージアム」が、その最たる例です。

この作業を行ってきたのは、主に権力を持つ特権階級。

ただし、歴史上の権力者の多くは所有していたり盗んできたりした物を、建物に保管するだけで、一般の人々がアクセスできるようにはしていませんでした。

2018年現在、数多くの都市が「貴重なものを保管・展示した建物」を1つ以上有しています。

なぜ博物館や美術館といった施設は必要で、私たちはなぜ何度もこのような施設を訪れるべきなのでしょうか?それには、美術館がどのような歴史から生まれ、どのような役割を持っているのかを理解する必要があります。

「Museum(博物館)」という言葉は、古代ギリシャの女神ミューズに由来し、「mouseion(ミューズの席)」という意味を持ちます。

古代ギリシャのアレクサンドリアに存在したミュージアムは数々の書物を保管する、現代で言えば図書館や大学のような建物だったと言われています。

また、古代ローマにおけるミュージアムは哲学的な議論を行うための場所だったとのこと。

今日のミュージアムには美術品や芸術品が飾られていますが、古代では、神をたたえる絵画などはアクロポリスに、彫像は公共の場に飾られていました。

一方で、今日のお金持ちと同じように、裕福な人が家に美術品を飾ることもありました。

ルネサンスの時期になると、フィレンツェの実質的な支配者として君臨したメディチ家が、数々の芸術品を収集しだします。

そして、メディチ家は最終的に、これらの芸術品を公共財として扱いました。

国立博物館が初めて作られたのは、18世紀のヨーロッパでの出来事。

裕福な人々が、自分たちの死後もコレクションが保存され、人々に共有されることを目的に寄贈を行ったのです。

そして、フランス革命が1789年に起こったことで……

王室関係者たちのものだったコレクションが、一般公開されるようになりました。

「美術品の収集」は、それが戦争の記念品であっても、芸術家が作ったアートであっても、非常に難しいもの。なぜなら、作品は、作者や生まれたコミュニティーといった「文脈」から切り離された状態になってしまうためです。

オブジェクトの出どころはどこで、どのような歴史をたどったのかということを明るみにするのは困難な作業。そのため、時に訴訟沙汰にまで発展します。

略奪されたものが何十年、何百年も後になって持ち主の元に戻るということも少なくありません。

しかし、ミュージアムは収集物を「保管」するだけでなく「公開」することで、人々が歴史のある物について楽しみ学べるようにし、それが「もともとの所有主を見つけて返す」ということにも役立っています。

そして、「どのようにコレクションを展示するのか」ということも、年月と共に変化しています。

生き物の剥製や珍しいコレクションをキャビネットや壁に所狭しと並べるのは16世紀~17世紀にヨーロッパで採られた方法。

サロンの様式で床から天井までびっしりと絵画を壁に飾るスタイルは19世紀のルーブル美術館で採用されました。

そして現代は、白い空間「ホワイトキューブ」の中で展示が行われ……

テクノロジーの発達によっても、コレクションから人々が学ぶ方法が大きく変わりました。

同様に、建物の形も変化しています。ピラミッドから始まり……

古典的な建物

新古典主義建築は、ミュージアムの形として数多く採られています。


古典建築の隣にモダンなキューブの建物がある施設が存在すれば……

独特の形状をとるミュージアムも存在します。


しかし、どのようなミュージアムであっても、「現代より前に作られ、使われていた価値のあるものを、現代の人々が触れられるようにする」という目的を持っています。

ミュージアムにあるものは、それらが作られた場所や時間、作った人がどのようなものだったのかを明らかにするヒントをくれます。

また、「作られた時の状況」だけではなく、オブジェクトが販売され、持ち主を変え、どのようにコレクションに入ったのか、そして一般展示されたなかった時期やされた時期はいつか、という歴史についても説明します。

オブジェクトは、過去・現在・未来にわたって価値が変化してきたことを視覚化しており、何度もミュージアムを訪れることで、私たちは歴史を復習して、歴史の中で掻き消された声や虐げられた物語をよみがえらせることが可能なのです。

ミュージアムのコンテンツはさまざまな組み合わせで展示されることがあれば、何年も同じ組み合わせで展示され続けることもあります。

このような「組み合わせ」によっても、歴史は「後ろ向きに続く1列のライン」ではなく、複数の糸が絡まったものなのだと、人々は理解できます。



ミュージアムは誰がリーダーになるかや、どの財団が支援するかによっても大きな影響を受けるもの。そのため、時にはスタッフの給与や料金について無謀な決断を行います。

しかし、これらの決断は、いつ何時でも、オブジェクトを人々に公開しつづけるという任務を果たすために行われます。

山火事が起こった時や、海面が上昇した時のような緊急時でも……

これらのスタッフが、あらかじめ決められたプランを実施できるようにしています。

また、歴史あるオブジェクトが今後も適切な形で残されていくよう、修復管理者が作業を行い……

トレーニングを積んだガードマンがコレクションを守ります。

コレクションを梱包したり、移動させたり、展示するにも専門技術が必要です。

展示されているものを通して歴史について語り……

コレクションについての研究は、過去を明らかにし未来を予測し、社会にとっての利益を生み出します。美術館の業務に関わるスタッフは、その多くが学びや訓練を積んだ専門家なのです。

そして近年は、ボランティアの手によって、ミュージアムを訪れなくともコレクションを見られるようにする試みも行われています。

はっきりさせておくべきなのは、ミュージアムは「ふんぞり返って楽しめるエンターテイメント」ではないということ。

ミュージアムの真価は、「美によって人をうちのめす」ことではなく、「見た人に歴史について再考させ、私たちが今どこにいて、どうすれば未来を変えることができるのかを理解させること」にあります。

ただ展示されているものを見るだけでなく、好奇心と我慢強さを持って考えることをやめなければ、ミュージアムは大学や図書館のようなものに変わるとのこと。

ミュージアムに何度も足を運ぶべきなのは、このため。人は年月と共に変化するので、何度も通うことで、違った「気付き」が得られるのです。

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