テレビの文字放送を使ってDOOMをプレイすることに成功した猛者が登場

1993年に発売されたFPSのDOOMといえば、技術自慢がTwitterや医療用超音波スキャナー、FM TOWNS、レゴブロック、メモ帳などさまざまなプラットフォームに移植してきたことで知られています。そんなDOOMを、テレビの電波の隙間を利用して文字・図形情報などの信号を送る文字放送(文字多重放送)を利用してプレイすることに成功した猛者が現れました。

It’s DOOM, But In Teletext | Hackaday
https://hackaday.com/2023/05/20/its-doom-but-in-teletext/#more-589746

文字放送を使ってDOOMをプレイすることに成功したのはlukneuさん。lukneuさんは文字放送を使ってDOOMをレンダリングするためのデータを文字放送で送信できるように変換し、レンダリングデータを文字放送用のパケットストリームを処理するためのアプリケーションにパイプして、テレビに送信したり文字放送用ページをデコードして表示したりすることができるツールの「doom-teletext」を開発しました。

doom-teletextはGitHub上で公開されています。

GitHub - lukneu/doom-teletext: Play DOOM in teletext
https://github.com/lukneu/doom-teletext

文字放送はテレビに図形や文字を表示するための技術で、表示するデータはテレビ放送用の電波に含まれており、目に見えない垂直ブランキング期間に隠されています。文字放送は1974年に初めて放送され、記事作成時点でもヨーロッパを中心に複数の国で放送されており、日本でもこのテクノロジーを利用して字幕放送などが配信されています。文字放送では一部の文字を表示することができないものの、同じ行の後続の文字のテキストの色情報などを保存することが可能です。

lukneuさんは文字放送の詳細が知りたい人には、以下の仕様書を読むことを推奨しています。

Enhanced Teletext specification
(PDFファイル)https://www.etsi.org/deliver/etsi_i_ets/300700_300799/300706/01_60/ets_300706e01p.pdf

文字放送はデータの送受信テクノロジーではなく、データの送信にのみ対応した技術であるため、DOOMを実際に文字放送を利用してプレイできるようにすることはできません。ただし、別の端末でDOOMを実行しながら、ゲーム画面を文字放送を使ってテレビに出力することなら技術的に問題ありません。doom-teletextはこれを実現するためのツールというわけです。なお、文字放送にはさまざまなレベルのものが存在しており、高レベルのものならば高解像度のグラフィックを再現することもできるそうですが、文字放送感を高めるために低レベルのものを使って簡素にDOOM画面を再現したとlukneuさんは記しています。

実際に文字放送でDOOMをプレイする様子は以下の動画でチェック可能です。

DOOM in Teletext - YouTube

テレビのリモコンをポチっ。

すると文字放送で送信されたデータを基にDOOMのゲーム画面がレンダリングされました。ゲーム画面は完全に白色のブロックのみで表現されていますが、その他のUI部分では赤色や水色のテキストも利用されています。ゲーム画面は白色のブロックのみで表現されているため静止画だとどこに銃があるのかやステージの構造などがイマイチわかりづらいのですが、動きのある動画で見るとゲーム画面がヌルヌル動いており武器やステージの位置関係などがよくわかります。

ゲーム画面に「DOOM」の文字。

リモコンを使ってゲームを操作することも可能。設定画面だけでなくゲーム画面もリモコンで操作できます。

実際のゲーム画面(右)と文字放送で再現したDOOM(左)を並べると以下の通り。

大きな動きがあるシーンを見比べると文字放送版の方が数フレーム遅れて描画されているのがわかりますが、動画で見ている分にはほとんどラグは感じられません。

なお、lukneuさんはDOOMをLinuxマシン上で実行しており、この端末上で文字放送用のデータを作成し、これをRaspberry Piに送信。Raspberry Pi上でデータをコンポジット映像信号に変換し、テレビに出力している模様。なお、よりハイスペックなRaspberry PiならばDOOMの実行と映像変換の両方をRaspberry Pi上で実行可能となるそうです。