サイエンス

科学者が「あなた」の限界を定義する脳波を特定、「あなた」が終わり外の世界が始まる境界はどのように認識できるのか?


スウェーデンとフランスの神経科学研究者らが、「自分とはどこから始まり、どこで外界と区切られるのか」という脳の感覚について脳波測定を行いました。その結果、特定の脳波パターンが自分と外界を分ける「境界」を決定付けていることを発見し、その脳波をコントロールすることで境界を明確にも曖昧にもできることを示しました。

Parietal alpha frequency shapes own-body perception by modulating the temporal integration of bodily signals | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-025-67657-w


Scientists Identify Brain Waves That Define The Limits of 'You' : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/scientists-identify-brain-waves-that-define-the-limits-of-you

人間は視覚や触覚など複数の感覚情報を組み合わせることで、自分の体がどこにあり、どこまでが自分の体なのかを判断しています。しかし、この境界がどのように脳で形成されているのかは解明されていませんでした。

そこでスウェーデンのカロリンスカ研究所の神経科学者であるマリアノ・ダンジェロ氏らの研究チームは、「ラバーハンド錯覚」という古典的な心理実験を行いながら脳波を測定しました。ラバーハンド錯覚は1998年に初めて報告された現象で、実際の手を視界から隠し、代わりにゴム製の手を見せながら、隠した本物の手と見えているゴムの手に同時に刺激を与えることで、ゴムの手を自分の手と錯覚してしまうというものです。以下の画像はダンジェロ氏らの研究で撮影されたもので、上に見えているのがゴムの手、机の下にあるのが本物の手です。


実験では、ラバーハンド錯覚を体験する被験者に、ロボットアームを使って「見えている偽物のゴム手」と「見えてない本物の手」の人さし指をタップする刺激を与えました。ロボットアームを調整することで、同時あるいは最大500ミリ秒ズラした状態で刺激を与えています。106人の参加者にラバーハンド錯覚を体験させ、脳の活動を脳波記録の測定などで観察したほか、脳波を意図的に速めたり遅くしたりする刺激も加えました。


結果として、指をタップするタイミングが同時の場合ラバーハンド錯覚が起きやすく、タイミングがズレているほど錯覚は起きにくいことが分かりました。そして、脳波計で測定されたアルファ波の周波数が高い人ほど、ラバーハンド錯覚に陥らずに小さなズレから「ニセモノの手」を区別できることが判明しました。一方で周波数が低い人は、見えている刺激と感覚の刺激がある程度ズレていてもゴムの手を自分のものだと錯覚する傾向にありました。

また、非侵襲的な技術を用いてアルファ波の周波数を増減させながら同様のラバーハンド錯覚実験をしたところ、アルファ波を速くすると自分の身体に対する意識が高まり、指をタップされるわずかなタイミングのズレにも敏感になりました。逆にアルファ波を遅くするとタイミングがズレていても錯覚を起こしやすくなりました。なお、この効果はアルファ波の強さではなく、振動の速さと関連しており、脳活動が強いか弱いかの問題ではないとのこと。


このことから、アルファ波の速度が「自己」と「外界」をどれだけ正確に区別できるかを決める脳の基準になっている可能性があると研究者らは指摘しています。研究者らは身体所有感の形成は異なる感覚信号が同じ出来事として結び付けられる「時間的統合」に依存しており、その許容される時間の幅が脳波によって制御されていると結論付けています。

ダンジェロ氏は「私たちは、肉体を持つという継続的な経験を形作る基本的な脳のプロセスを特定しました。この発見は、 自己意識が乱れる統合失調症などの精神疾患に対する新たな洞察をもたらすかもしれません」と研究の成果を語っています。また、この発見はよりリアルな義肢の技術や、仮想現実(VR)ツールの開発にも役立つ可能性があります。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「ロボットの指」を使っていると脳における身体のイメージが変化することが判明 - GIGAZINE

人間の脳は手に持った道具に伝わる感触を「自分の皮膚と同様に認識している」ことが判明 - GIGAZINE

なぜ6本指の人に関する研究が近未来のサイボーグにつながる可能性があるのか? - GIGAZINE

「脳を読むリストバンド」開発のスタートアップをFacebookが買収 - GIGAZINE

ハグなどの身体接触は痛みやうつ状態を和らげることが明らかに、重い毛布やロボットなどの無生物でも多少は効果あり - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1e_dh

You can read the machine translated English article Scientists identify brain waves that def….