サイエンス

なぜ6本指の人に関する研究が近未来のサイボーグにつながる可能性があるのか?

By halfpoint

多指症とは読んで字のごとく、6本以上の指を持って生まれてくるという疾患です。「多指症についての研究は近未来SF作品などのサイボーグにつながる可能性がある」という論文が、Nature Communicationsに発表されています。

Augmented manipulation ability in humans with six-fingered hands | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-019-10306-w

Breakthrough Investigation Of People With A Sixth Finger Has Implications For Infant Medicine And Cyborgs – Research Digest
https://digest.bps.org.uk/2019/06/12/breakthrough-investigation-of-people-with-a-sixth-finger-has-implications-for-infant-medicine-and-cyborgs/

ドイツのフライブルク大学のカルステン・メーリング教授が率いる研究チームは、多指症を持つ被験者2人に対して、6本目の指の機能に関する実験を行いました。今回の被験者2人は17歳の少年と51歳の母親で、「6本目の指」を親指と人差し指の間に持っています。多指を持った子どもが生まれてくる確率は0.2%で、多指症は遺伝性といわれています。

被験者にものをつかんでもらうなどの実験を行ったところ、6本目の指は他の指同様に物を掴む動作が可能で、親指と人差し指とともに頻繁に活用されていたとのこと。


また、被験者にボタンが6個あるコントローラーを使うゲームをプレイしてもらったところ、5本指の人が2つの手を使って出すスコアを6本指の被験者は片手だけで達成。今回の被験者の手は一般的な5本指の手に比べ、むしろ高い機能を備えているといえるそうです。

実際にボタンが6個のコントローラーを使ってゲームをプレイしている被験者の様子が以下の画像。


そこで、被験者の手にMRI検査を行った結果、6本目の指は独立した鞍関節や神経、筋肉を有していることがわかりました。


さらに被験者の運動野の動きをMRIでチェックしたところ、脳においても6本目の指は他の指から独立した神経の働きを持っていることが判明しました。つまり、被験者の「6本目の指」は後から付け足されたような指というよりも、5本の指と同等の働きが可能な指であるわけです。

スパイダーマン2のドクターオクトパスやスターウォーズのグリーヴァス将軍など、近未来を描いたSF作品などには「追加の義肢」を取り付けたキャラクターが登場します。研究チームは「通常の5本指に加えて人工の指を取り付けることは価値があるだろう」と語っており、被験者が6本目の指の神経を他の指と同等レベルにまで発達させているという今回の調査の結果から、サイボーグのように身体に「追加の手足」を取り付けても運動障害や感覚的な違和感なく既存の身体部位と統合して制御できる可能性を示唆しています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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