サイエンス

寝ている時に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群が認知機能の低下をもたらすことが研究で確かめられる


睡眠中に何度も呼吸が止まったり浅くなったりする睡眠時無呼吸症候群は、低酸素状態を引き起こして睡眠の質が低下したり、日中の眠気を経験したりすることが知られています。新たに、睡眠時無呼吸症候群の一種であり気道の閉塞(へいそく)が原因となる閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の患者では、若い頃から認知機能の低下が生じる可能性があると実験でわかりました。

Frontiers | Distinct cognitive changes in male patients with obstructive sleep apnoea without co-morbidities
https://doi.org/10.3389/frsle.2023.1097946


Obstructive sleep apnea may directly cause ea | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/985009

For The First Time, Sleep Apnea Is Shown to Cause Cognitive Decline : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/for-the-first-time-sleep-apnea-is-shown-to-cause-cognitive-decline

肥満だったり下顎が小さかったりする人は息の通り道である上気道が狭く、睡眠中に喉の筋肉が弛緩(しかん)するなどの要因で上気道が完全に詰まってしまうことがあります。その結果、睡眠中に呼吸が完全に止まってしまう状態が頻発すると、閉塞性睡眠時無呼吸症と診断されます。


閉塞性睡眠時無呼吸症の一般的な症状には、睡眠時の大きないびきや頻繁な中途覚醒、日中の眠気、朝に長時間の頭痛を経験するといったものが挙げられます。主な危険因子には中高年であること、肥満、喫煙習慣、慢性的な鼻づまり、高血圧、男性であることなどがあります。世界中では男性の15~30%、女性の10~15%が閉塞性睡眠時無呼吸症を患っていると推定されていますが、多くの患者は診断を受けていないとのこと。

また、以前から閉塞性睡眠時無呼吸症と認知の問題うつ病をはじめとするメンタルヘルスの問題、アルツハイマー病などの神経変性疾患などの関連が指摘されてきました。しかし、これらの病気が閉塞性睡眠時無呼吸症によって引き起こされたのか、それとも閉塞性睡眠時無呼吸症に関連する医学的問題によって引き起こされたのかははっきりしていませんでした。


新たにイギリスやドイツ、オーストラリアなどの研究チームは、閉塞性睡眠時無呼吸症を患っているものの併存疾患を持たない35歳~70歳の男性被験者27人と、年齢やボディマス指数(BMI)が一致するものの閉塞性睡眠時無呼吸ではない男性被験者7人を対象に実験を行いました。研究チームは、それぞれの被験者の閉塞性睡眠時無呼吸症がどれほどの重症度なのかを睡眠ポリグラフ検査などで調べ、認知機能を測定するテストも実施しました。

今回の実験で重要だったのが、閉塞性睡眠時無呼吸症と診断された被験者が併存疾患を持っていなかったという点です。多くの閉塞性睡眠時無呼吸症患者は心血管疾患や代謝性疾患、脳卒中、糖尿病、慢性全身性炎症、うつ病といった併存疾患を抱えており、その他の健康状態に問題がない閉塞性睡眠時無呼吸症患者は珍しいとのこと。

実験の結果、閉塞性睡眠時無呼吸症を患っている被験者は、対照群と比較して持続的注意、実行機能、短期視覚認識記憶、社会的・感情的認識のスコアが低いことが判明。さらに、閉塞性睡眠時無呼吸症が重度であればあるほど、対照群と比較してスコアが悪化したという結果も示されました。

研究チームのメンバーであり、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンの精神科医であるIvana Rosenzweig氏は、「閉塞性睡眠時無呼吸症の男性では、実行機能と視覚空間記憶が低下し、警戒心や持続的注意力、精神運動、衝動のコントロールに障害があることが示されました。これらの障害のほとんどは、従来は併存疾患によるものとされていました。私たちは閉塞性睡眠時無呼吸症が社会的認知に重大な障害をもたらすことを初めて明らかにしました」と述べています。


今回の研究では、閉塞性睡眠時無呼吸症がどのようなメカニズムで認知能力の低下をもたらすのかは明らかにされていません。しかし研究チームは、呼吸が止まることによる血中酸素濃度の低下と二酸化炭素濃度の上昇、睡眠の質の低下などが関与している可能性があると考えています。

Rosenzweig氏は、「これらの複雑な相互作用はまだ十分に解明されていませんが、血中酸素濃度の低下などが脳の神経解剖学的および構造的な変化を広範囲にもたらし、関連する機能的な認知障害や感情障害を引き起こすと考えられています」「私たちの研究は概念実証ですが、併存疾患が閉塞性睡眠時無呼吸症に起因する認知障害を悪化させ、永続させる可能性が高いことを示唆しています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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