中国の開発者が公式価格の約10%でAnthropicのAIモデルを利用できるAPIプロキシ「中转站」が支えるグレー経済圏の実態とは?

Anthropicは中国をClaudeの提供地域から除外していますが、中国では海外のAPIプロキシ「中转站」を介し、ClaudeやClaude Codeを公式価格の約10%で利用できるグレー市場が広がっていると報告されています。利用者は個人開発者や学生、企業、再販業者に及び、この市場は単なるアクセス回避策にとどまらず、データ収集や不正取引とも結び付く供給網を形成しています。
How to Buy Cheap Claude Tokens in China - by Zilan Qian
https://www.chinatalk.media/p/how-to-buy-cheap-claude-tokens-in
トランプ政権による対中政策の影響で、Anthropicは中国をサポート対象地域から除外し、電話番号や海外発行のクレジットカード、請求先住所を突き合わせてアカウント登録を制限してきました。2025年9月には、中国のような非対応地域に本社を置く企業が直接または間接に50%超の持分を保有する組織についても、所在地を問わずアクセスを禁じ、海外子会社を使う抜け道を塞ぎました。さらに2026年4月には、特定の利用形態やプラットフォームの健全性に関するフラグをきっかけに選ばれた利用者へ、政府発行の顔写真付き身分証とライブセルフィーによる本人確認を求める措置を導入しています。
こうした制限が設けられていても、中国からのClaudeやClaude Codeへのアクセスは完全には遮断されていません。2026年4月23日、ホワイトハウスは、中国の組織が「数万ものプロキシアカウント」を使って検知を回避し、アメリカの最先端AIモデルに対する「産業規模」の蒸留キャンペーンを実施していると警告するメモを公表しました。Anthropicも2026年2月、中国のAI研究機関による協調的な蒸留攻撃について、単一のプロキシネットワークが2万件超の不正アカウントを管理していたと報告しています。
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実際には、中国の利用者はClaudeや関連ツールにアクセスできるだけでなく、多くの場合、公式価格の約10%でトークンを購入できるとのこと。その仲介を担うのが「中转站」と呼ばれるAPIプロキシです。中转站は、中国の開発者コミュニティでAPIプロキシを指す呼称で、開発者とAnthropicのインフラストラクチャの間に置かれた海外サーバーです。利用者のAPIリクエストを受け取ると、中转站の所在地から送信された通信としてAnthropicへ転送し、応答を利用者へ返します。
中转站を使えば、利用者はAnthropicと直接契約せずにモデルへ接続可能。利用料金はWeChat PayやAlipayを通じて人民元で支払えるため、VPNや海外発行カードを用意する必要がある直接利用よりも手軽です。GitHub上などのコミュニティリポジトリには、中转站を価格や稼働率で比較する一覧が掲載されており、長く続く事業者のほか、小規模なサービスも次々に現れては消えているとのこと。

中转站は、正規の契約に基づいて開発者の利用を簡便にするAPI集約サービスとは異なり、地理的な利用制限の回避を目的として、責任の所在が不明確な仲介者を介在させます。中转站を支える供給網の上流には、Anthropicのアカウントを大量に登録・取得する業者、海外電話番号を提供するSMS認証サービス、海外決済を可能にするカード決済業者やプロキシネットワークが存在します。さらに、認証の抜け道を探したり、Anthropicの検知ロジックの変更を追ったりするリバースエンジニアも関わるとされます。
加えて、偽造身分証やディープフェイクに加え、カンボジアやケニアなどで発覚した虹彩スキャン売買の例のように、低所得国の人々を勧誘して実在の身分証と生体認証を提供させる仲介業者までが横行しているとのこと。中国のAIサービス登録制度では、届け出や安全評価を経ずに提供されるAIサービスは違法とされる一方、小規模な中转站は処罰を受けずに運営される場合があるそうです。
こうして収集された顔や虹彩などの生体情報は、AIサービスの本人認証を通過するために使われるだけでなく、金融口座の不正開設や雇用記録の偽造、ディープフェイクの作成などへ転用され、生体情報の持ち主本人が法的・社会的な不利益を被るおそれがあるとのこと。開発者向けのWeChatグループでは、本人確認代行業者、中转站の販売業者、盗難カード情報を扱う業者が結び付く供給網を皮肉る画像も共有されていたと報告されています。

こうした情報流通の中間地点に位置する中转站の運営者は、APIの中継機能と決済機能を提供するだけでなく、アカウントが検知される前に入れ替えたり、負荷を複数のアカウントへ振り分けたりと、Anthropic側の不正利用対策の更新へ追随する運用を担います。
中转站が強いのは、ほとんどの参加者が供給網全体を管理せず、アカウントや認証、決済、中継、再販といった一部だけを担当して収益化しているため。AI企業が特定の中转站やアカウントを停止しても、上流のアカウント供給や下流の顧客需要が残れば、代替サービスは短期間で立ち上がります。

100万トークンあたり1人民元(約21円)という本来よりもはるかに安いAIの利用料は、1つのアクセス資源から3つの収益を得る「一魚三吃」という構造で成り立っています。
第1の収益源は、安く確保した利用枠を転売することで得る差額です。無料クレジット付きのアカウントを大量に作成したり、他人の未使用枠や法人・教育機関向けの割引を利用したり、定額プランの利用枠を複数人に分けて売ったりすれば、正規の従量課金より低いコストでアクセスを仕入れられます。利用者に公式価格より大幅に安く売っても、仕入れ値がさらに低ければ運営者には利益が残ります。
第2の収益源は、利用者に見えにくい形でモデルのランクを下げたり利用量を増やしたりすること。利用者が高性能モデルを指定しても、中转站がより安価な下位モデルや別のモデルに切り替えて応答を返す可能性があります。また、アカウントを頻繁に入れ替えることで会話の文脈を保持しにくくなり、利用者が過去の情報を再送する必要が生じれば、消費トークンが増えて総支払額も大きくなります。ただし、こうしたモデルの差し替えやトークン消費の増加が意図的なものか、運営構造上の副作用なのかを外部から区別することは難しいとされています。
第3の収益源であり、極端な低価格を支える核心とみられているのが利用ログです。中转站には利用者が送るプロンプト、モデルの応答、ツール呼び出し、修正の経緯などが残るため、運営者は利用料金を受け取るだけでなく、価値のあるデータも集められます。特にAIコーディング支援では、ソースコードの文脈、設計上の判断、利用者が正しいと確認した出力などが含まれ得るため、後学習や蒸留用データとして価値を持つ可能性があり、3つの収益源の中で最も重要視されているのがこの利用ログの転売だともいわれています。

AI企業の安全対策は、本来であれば利用者を特定し、不審な入力や出力を監視し、必要に応じてアカウントを停止することを前提にしています。しかし中转站を経由すると、AI企業が見られるのは実際の利用者ではなくプロキシのIPアドレスやアカウントであり、アカウントを止めても別の中継環境が用意される可能性があります。複数のプロキシとアカウントに要求を分散すれば、個別には無害に見える問い合わせの背後にある協調的な行動も見えにくくなります。
この問題は「アメリカのAI企業と中国の利用者の対立」だけで捉えるべきではありません。本人確認情報の搾取、SMS認証、アカウントの大量取得、不正利用されたカードを扱う周辺市場は、フィッシングメッセージ、迷惑電話、不正なローン申請、カード詐欺など、AIとは直接関係のない犯罪にもつながり得ます。国境によるアクセス制限が回避のための市場を生み、その副産物による被害は国境で切り分けられないという点が、中转站のようなグレー市場の最も大きな問題といえます。
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in AI, Posted by log1i_yk
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