GitLab創業者がガンとの闘病で新企業設立へ、どのような経緯でこうなったのか?

ソースコードリポジトリ・GitLabを2021年に上場させた共同創設者のシド・シブランディ氏が、骨のガンである骨肉腫と診断されました。シブランディ氏は、さまざまな治療を受けながら自ら集めた10テラバイトに及ぶ膨大なデータを解析し、最先端の個別化医療を並行して進めることで病状を劇的に改善させ、自らの治療アプローチを他の患者にも広めるべく、500ドル(約7万5000円)程度で実施可能な全ゲノム解析などの技術を活用した新たな企業の設立を着々と進めています。
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シブランディ氏は2016年にオランダからアメリカに渡り、GitLabの設立に参加しました。

しかし、新規公開株式(IPO)を行った翌年の2022年、ラブランディ氏は胸に痛みを感じて救急外来を受診し、骨肉腫、いわゆる骨のガンを患っていたことが発覚。6cmの腫瘍が神経を圧迫し、脊椎にまで浸潤していたため、椎骨を取り除き、脊椎をチタンのフレームで固定したそうです。

2023年の初め、シブランディ氏はすべての標準治療を受けたとのこと。放射線治療と強力な化学療法を受けましたが、副作用は激しいものだったそうで、命をつなぎ留めるために4回の輸血が必要だったと語っています。
その後、シブランディ氏はベンチャーファンドであるYコンビネーターを通じて知り合った友人の会社に投資し、ガン治療薬開発スタートアップ・Shasqiの最大の投資家になりました。
Shasqiは毒性を抑えつつ高い効果を発揮する、薬学・生化学に基づいた肉腫向けの化学療法の開発に取り組んでいました。シブランディ氏は投資家や創設者の友人としてだけでなく、患者としても関わることになり、個別の患者向けのIND申請(治験外新薬使用)を通じて薬を入手することができました。

しかし、2024年にガンが局所再発。シブランディ氏は「その時のメッセージは基本的に『標準治療はやり尽くしました。どこかで治験があるかもしれませんが、幸運を祈ります』というものでした」と述べています。証明されている治療法はすべて試したものの、シブランディ氏の疾患は希少でどの治験の組み入れ基準も満たしませんでした。それでもシブランディ氏は諦めず、「治療のためならどこにでもいき、何でもする」と決心したとのこと。

シブランディ氏は「私が取っているアプローチは、妥協をしないことです」と述べています。そのアプローチとは、入手可能なあらゆる診断を頻繁に行った上で、研究機関や企業と協力して個別化治療を開発し、これらをすべて同時に並行して進めていくというもの。そしてガンの進行を待つのではなく、複数のアプローチを試し、診断によってその効果を迅速に測定し、同時にこのアプローチを他の人々にも拡張可能にしようとしている、とシブランディ氏。
これは、「自分にはもう効果がないかもしれないけれど、他の誰かにとって素晴らしいものになるかもしれない医療」を中心に、新しい会社を立ち上げることも含まれると述べています。

記事作成時点でシブランディ氏が自身に対して実施しているアプローチには、ターゲットとなる細胞特異的な発現の確認や腫瘍内のT細胞受容体の配列を特定するためのシングルセルシーケンシング、腫瘍に対する薬剤の効果を試すためのいくつかの異なる薬剤反応試験、複数の提供者による微小残存病変(MRD)の血液検査の定期的な実施、変異の全体像と広範な発現プロファイルを理解するための全ゲノムおよびバルクRNAシーケンシング、そしてADCやCAR-T療法の標的を確認するための治療標的マーカーの病理染色などがあります。

シブランディ氏はこうした治療法の「他の人々への拡張性」について、まず基本的に決して法外に高価ではないと断言しています。シブランディ氏が示した新しい治療法は決して標準治療ではなく、膨大なデータの生成と管理が前提となります。しかし記事作成時点でシーケンシングは非常に高性能で手頃な価格になりました。全ゲノム解析は約500ドル(約7万5000円)で行うことができ、ある企業は50ドル(約7500円)からバルクRNAシーケンシングを提供しています。また、ChatGPTのようなAIツールはますます有能になっています。もちろんこれらのツールは医師との協力に取って代わるものではありませんが、仮説の立案に役立つことをシブランディ氏は強調しています。さらに、ジェネリック医薬品という手頃なものも存在する場合があります。シブランディ氏は、こうした新たな治療法にアクセスしやすくなるような新企業の設立を積極的に行っているとのこと。
シブランディ氏自身はシングルセル解析により、腫瘍に線維芽細胞マーカーが強く出ていることを確認し、2025年2月にドイツでFAP放射性リガンド療法を受けました。この決断は、腫瘍が脊椎にあり手術が極めて困難だった状況を打破するためでした。治療の結果、3月には腫瘍が劇的に縮小して4月には切除手術が可能となり、6月のスキャンでは腫瘍が検出されない状態にまで回復したとのこと。この過程で、腫瘍内のT細胞浸潤率が20.0%未満から80.0%以上に増加するという劇的な免疫環境の変化も確認されています。
さらに、自身の腫瘍データから最適なネオアンチゲンを厳選し、6ヶ月未満という短期間でmRNAワクチンを製造し投与しました。このワクチンの効果をリアルタイムで測定するため、マーカーを用いたフローパネルを設計し、血液中のT細胞の反応を詳細にモニタリングしているそうです。また、Pathfinder Oncologyと協力し、自身の血液から特定の受容体を特定して改変TCR-T細胞療法を開発するプロジェクトも並行して進めています。

CAR-T療法については、当初標的とした免疫関連分子のB7-H3が肝臓に強く蓄積することを中国でのイメージング試験で発見したため、安全を考慮して方針を転換。記事作成時点ではIF-THEN回路を用いた狙い撃ちシステムを構築し、FAPやPANX3を標的としつつ肝臓への攻撃を避けるプログラミングに近い高度な設計を導入しているそうです。

シブランディ氏の友人でガン研究者であるエリオット・ハッシュバーグ氏は、「私はがん研究者としてキャリアをスタートしましたが、専門的な訓練を受けた腫瘍医ではありません。シドも同様です。したがって、これまでに述べたものがすべて医学的な助言として解釈されるべきではありません」と語った上で、「(SF作家である)ウィリアム・ギブソンの言葉、『未来は既にここにある。ただ、均等に分配されていないだけだ』という言葉を強く感じた」と述べ、先端医療の恩恵がより多くの人に届くように研究者や企業、規制当局は努力していると強調しました。
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in サイエンス, Posted by log1i_yk
You can read the machine translated English article GitLab founder to establish new company ….







