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将来のパンデミックでは感染拡大をゼロにする「排除」が重要だと専門家が医学誌ランセットで提唱


ニュージーランド、オーストラリア、シンガポールの疫学者や公衆衛生の専門家ら4人が、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のようなパンデミックでは一貫した対応戦略を要する」とした記事を医学誌のランセット(The Lancet)に寄稿し、今後のパンデミック対策やWHOの役割について論じました。

COVID-19 and other pandemics require a coherent response strategy - The Lancet
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)02489-8

WHOは、2023年1月27日に開催されたCOVID-19に関する緊急委員会の第14回会合で、引き続き「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」としてCOVID-19への警戒を続けることを決定しました。2020年1月30日に発令されたCOVID-19での緊急事態宣言が4年目に突入する一方で、2022年7月に新たにPHEICに指定されたM痘(サル痘)の再流行など、COVID-19以外の感染症の脅威も予断を許さない状況が続いています。

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こうした中、ニュージーランド・オタゴ大学のMichael Baker氏とNick Wilson氏、オーストラリア・ニューカッスル大学のDavid Durrheim氏、シンガポール国立大学のLi Yang Hsu氏らは、COVID-19のパンデミックで得られた教訓や今後のパンデミック対策についてまとめた提言をランセットで発表しました。

その中でBaker氏らは、パンデミックやPHEICに発展する可能性のある感染症をコントロールするための、ハイレベルな戦略的選択肢を以下の図に示しました。このチャートでは感染症対策が、感染拡大をゼロにする介入を行うべき「Elimination(排除)」、排除に至らないまでも影響の軽減を図るべき「Control(制圧)」、疾病の負荷が低いか実現可能な介入策がない「No substantial control(実質的な管理なし)」の3つの選択肢に分けられています。さらに、「排除」は国際協調により撲滅を目指す「Eradication(根絶)」に移行するほか、「制圧」は「Suppression(抑制)」か「Mitigation(緩和)」に分岐します。


この用語自体はBaker氏らが新しく提唱したものではなく、麻しんを始めとする感染症対策の歴史の中で少しずつ確立されてきたものですが、Baker氏らは提言の中で「今後はCOVID-19のパンデミックでよく用いられてきたような『Containment(封じ込め)』というあいまいな用語ではなく、地域と期間を定めて感染症の拡散をゼロにする『排除』という言葉を用いた方が望ましい」と指摘しました。

Baker氏らはまた、今後新しく見つかる新興感染症やM痘のように流行が再燃した再興感染症などでは、特に「排除」を既定の選択肢にすべきだとしています。なぜなら、「排除」戦略を早期に決定することで感染拡大を遅らせれば、ワクチンや治療薬といった有効的な介入策を開発する時間を稼ぐことができるからです。


世界各国がこうした効果的な戦略を実施するには、国際的な感染症戦略を調整する機関であるWHOの役割が重要となります。しかし、WHOはCOVID-19が発生した当初は国境閉鎖や渡航制限に消極的で、結果的に2020年の春節(旧正月)を祝う旅行でCOVID-19が中国から世界中に飛び火することを許してしまうなど、リーダーシップを十分に発揮することができませんでした。

こうした点を踏まえて、Baker氏らは「COVID-19の大流行から得られた最大の教訓はおそらく、新たな新興感染症を抑制するためには一貫した戦略が極めて重要だということです。そのため、WHOにはPHEIC評価プロセスの一環として、『排除』『抑制』『緩和』といった適切な対応戦略を決定していくことを推奨します。これにより、世界的なパンデミックに対してより積極的、協調的、かつ効果的なアプローチを支援するというWHOの役割が強化されるでしょう」と結論付けました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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