お金を節約しながらパスタをできるだけおいしくゆでる科学的な方法
イタリア料理の主要な食材であるパスタは世界中で食べられている麺類であり、完璧なゆで方の追求やパスタを折った時の物理現象の解明など、科学研究の対象としてもしばしば取り上げられています。そんなパスタを「コストを節約する」という観点からどうゆでるべきなのかについて、ノッティンガム・トレント大学科学技術学部主任講師であるデビッド・フェアハースト氏が解説しています。
Italy's pasta row: a scientist on how to cook spaghetti properly and save money
https://theconversation.com/italys-pasta-row-a-scientist-on-how-to-cook-spaghetti-properly-and-save-money-191973
乾燥したパスタの調理は「水がパスタに浸透する」「パスタが加熱され、タンパク質であるグルテンが失活し、でん粉を分解して糊化(こか)させる」という2つのプロセスで構成されます。パスタの形状や太さによって変わりますが、1食100gの乾燥スパゲッティを1リットルの沸騰した湯でゆでる場合、10~12分ゆでることになります。
以下の円グラフは乾燥パスタをゆでる時のエネルギー消費の内訳を示しています。最もエネルギーが使われるのがパスタを10分間ゆでるために湯をわかしつづけるため(黄色)で、その割合は約60%。次いでゆでる前に湯をわかすのに使うエネルギー(オレンジ)が全体の34%。そして湯を入れる鍋を温める(青)のに5%、ゆでているパスタを加熱する(水色)のに1%のエネルギーを使います。
そこで、パスタを経済的にゆでたい場合、「パスタを投入した後にコンロの火を消して予熱でパスタをゆでる」という方法を使うことで、エネルギーを大きく削減できます。この方法はガスやIHよりも冷えるのが遅い電気コンロで効果的です。
しかし、パスタに水を浸透させるプロセスをお湯ではなく水で行えば、ゆでる時間が短く済むので、より経済的にパスタをゆでることができます。フェアハースト氏によれば、乾燥パスタは冷水に2時間浸すことで完全に戻すことができるとのこと。
さらにパスタの加熱も節約が可能。2018年に発表された研究によれば、水が浸透したパスタを加熱する場合、湯の量を減らしてもゆであがりの品質に影響を与えないことがわかっています。そこで、フェアハースト氏が実際に湯の量を半分の0.5リットルに減らしたところ、問題なくゆであがったとのこと。しかし、湯の量を3分の1にまで減らすと、今度は湯に溶け出すでんぷんの飽和量の問題で、ゆであがりがイマイチだったそうです。
また、2021年に発表されたパスタの調理温度についての研究によると、グルテンは80度以上で失活するとのこと。つまり、湯を100度まで沸騰させる必要がなく、80度以上まで温度を上げればOKであり、さらに節約が可能です。
以上の結果を踏まえると、可能な限りコストを節約しつつおいしいパスタをゆでる方法は「あらかじめ水で2時間戻してから規定の半分の量かつ80度のお湯でゆでる」ということになります。また、コンロが選べるのであれば冷えるのが遅い電気コンロがベターです。
なお、フェアハースト氏はあらかじめ水で戻したパスタを電子レンジで加熱することも検討したそうですが、効率的に加熱はされるものの、ゆで加減は最悪だったそうで、「電子レンジを使う方法は間違いなく家で試すものではありません」とコメントしています。
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