サイエンス

「ゆでると変形して立体化するパスタ」を科学者が開発、輸送コストや温室効果ガス削減につながる可能性も


パスタには細長い麺の形状をしたスパゲッティ以外にも円筒形のマカロニや蝶ネクタイのような形をしたファルファッレ、団子状のニョッキなどさまざまな種類があります。食料品店ではこれらの形状を保った乾燥パスタが販売されていますが、新たにカーネギーメロン大学が率いる研究チームは、「乾燥状態だと平らな形状だがゆでると変形して立体化するパスタ」を開発しました。

Morphing pasta and beyond | Science Advances
https://advances.sciencemag.org/content/7/19/eabf4098

Morphing Pasta and Beyond Groove-based Universal Morphing Machanism — Morphing Matter Lab
https://www.morphingmatter.cs.cmu.edu/projects/morphing-pasta-and-beyond

Researchers develop pasta that morphs into shape when cooked
https://techxplore.com/news/2021-05-pasta-morphs-cooked.html

Mighty morphin’ flat-packed pasta takes on 3D shapes as it cooks | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/05/mighty-morphin-flat-packed-pasta-takes-on-3d-shapes-as-it-cooks/


パスタにはさまざまな種類があり、料理やパスタソースとの相性でさまざまなパスタが使い分けられています。その一方、複雑な形状をしたパスタは包装効率が悪いそうで、研究チームの計算によるとマカロニのような形状をしたパスタはたとえ完璧に詰め込んだとしても、袋全体の体積のうち60%以上は空気が占めているとのこと。包装の非効率性は買い物やレジャー時の持ち運びに不便なだけでなく、食料品店への輸送にも無駄が生じてしまい、廃棄される包装ゴミの量も増えてしまいます。

また、空洞などが存在するパスタは平べったいパスタと比較して調理に時間がかかり、研究チームによるとイタリアにおける温室効果ガス排出量の0.7~1%がパスタの調理によるものだそうです。そこで研究チームは、乾燥した状態におけるパスタの形状と調理プロセスを改善することにより、輸送コストや廃棄するゴミの量、温室効果ガスの排出量を削減することができると考えました。


研究チームに所属するLining Yao氏やWen Wong氏は、以前から食物の形状を変形させる方法について研究してきた人物です。かつての研究では、タンパク質やデンプンを使った「食用のフィルム」を食品に貼り付けることで食品の形状を曲げる方法も開発したとのこと。

ところが、本格的なイタリアンパスタはセモリナ粉と水だけで作られており、食用のフィルムを貼り付けて変形させてしまっては本来の食感や風味が損なわれてしまいます。また、製造にも食品としての安全性が求められることから、材料の構造異方性や組成の不均一性を用いて変形させることは困難だったとのこと。

そこで、材料科学や機械工学、製造計算、設計など各分野にわたる17人もの専門家からなる研究チームは、「パスタの表面に溝を付ける」ことで食材を変形させる方法を開発しました。乾燥パスタはゆでることで膨張および軟化しますが、表面に溝があるとその部分の調理に時間がかかり、その他の部分と比較して膨張しにくくなります。この原理を用いて、溝を付ける場所や深さを計算することで、ゆでるだけで理想の形に変化するパスタを作ることができるそうです。


研究チームが開発した「ゆでると形状が変形して立体化するパスタ」がどのようなパスタになっているのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。

Morphing Pasta and Hike


平らなシート状のパスタに機械が近づき……


細かな溝がある部分でパスタを押します。


機械が持ち上がるとパスタには溝が付いていました。この溝こそが、「ゆでると形状が変形して立体化するパスタ」にとって重要な鍵だとのこと。


綿密に計算して溝が付けられたパスタを調理すると……


平らだったパスタは調理の中で変形し、立体的な形状を持つパスタになる仕組みです。


実際にこの手法で溝を付けた平らなパスタをゆでてみると……


次第に形状が変化します。


ゆでる前の乾燥した状態(左)とゆでた後の状態(右)を比較すると、確かに調理したことで立体的な形状になっていることがわかります。


別のパスタでも……


このようにゆでただけで立体化させることが可能。


パスタの大きさや溝の付け方を工夫すれば、さまざまな形状の「ゆでると変形して立体化するパスタ」を作り出すことができます。


立体的な形状になるパスタを平らな状態で持ち運び可能にすることは、包装ゴミや輸送コストの削減に加え、野外レジャーへの携帯性向上にもつながるとのことです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「スパゲッティの乾麺は必ず3つ以上に折れる」という現象を乗り越えて研究者が2つに折ることに成功 - GIGAZINE

パスタ専門家は見た目と味だけで「高級パスタ」を当てることができるのか?という実験ムービー、いいパスタの選び方も公開中 - GIGAZINE

「イタリアの食卓から国民食のパスタを排除しよう」という運動が起こったことがある - GIGAZINE

ピザがおいしいのには科学的な理由がある - GIGAZINE

「最高のピザの焼き方」を熱力学的に分析した論文が公開中 - GIGAZINE

数学者が発明した「ピザを平等に食べやすくカットする方法」 - GIGAZINE

in サイエンス,   動画,   , Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.