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スーツケースに忍び込ませたAppleの落とし物トラッカー「AirTag」が航空会社のうそを暴く


Appleの落とし物トラッカー「AirTag」は、カバンや財布などに入れておくと紛失時に位置情報を追跡できる500円玉サイズのデバイスであり、「信頼できない引っ越し業者を追跡するために家具に忍ばせる」「航空機の手荷物に入れてロストした際に現在地を特定する」といった使い方が注目されています。ある女性がAirTagをスーツケースに忍び込ませたところ、航空会社が手荷物として預かったスーツケースを紛失した上に、「荷物は配送センターで保管されている」とうそをついたことが明らかになりました。

AirTags catch United Airlines in lie about missing luggage | AppleInsider
https://appleinsider.com/articles/23/01/02/airtags-catch-united-airlines-in-lie-about-missing-luggage

Woman’s AirTag tracks suitcase at apartment complex and McDonald’s as United insists it’s safe | The Independent
https://www.independent.co.uk/life-style/airtag-united-airlines-luggage-twitter-b2254851.html

Woman uses Airtag to track missing bag to a residential address | CNN Travel
https://edition.cnn.com/travel/article/airtag-lost-bag-valerie-szybala-united/index.html

2022年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連するさまざまな規制が緩和され、パンデミック以降は控えていた旅行を久しぶりに楽しむ人々が世界的に急増しました。その結果、一部の航空会社や空港では混雑やそれに伴う混乱が発生し、預けた手荷物が紛失したり、目的地とは異なる場所に到着したりする事態が増加。2022年12月には、「りくりゅう」の愛称でも知られるフィギュアスケートの三浦璃来・木原龍一ペアが、飛行機の遅延やロストバゲージにより全日本選手権を欠場したことも話題となりました。

そんな状況の中、2022年11月~12月に約1カ月間の海外旅行に出かけたワシントンD.C.在住のValerie Szybala氏は、航空会社に預けるスーツケースにAirTagを忍び込ませました。Szybala氏は海外メディア・CNNの取材に対し、自身の旅程には乗り継ぎがあったため、どこかでスーツケースが紛失する可能性が高いと予想していたと述べています。


12月28日、乗り継ぎを経てワシントンD.C.の州境にあるレーガン空港にたどり着いたSzybala氏は、利用していたユナイテッド航空のアプリでスーツケースが届いていないことを知らされました。アプリは、Szybala氏のスーツケースが12月30日にワシントンD.C.に到着する予定であり、自宅まで配達するオプションがあると通知しました。Szybala氏にとってロストバゲージ自体は想定内の出来事であったため、この配達オプションを受け入れることにしたそうです。

ところが、12月30日になってもスーツケースがSzybala氏の自宅に届くことはありませんでした。この間もSzybala氏はAirTagでスーツケースの所在地を確認しており、30日の20時には自宅から数マイル(約km)離れた集合住宅にあったとのこと。ところが、スーツケースは翌31日になっても自宅まで届きませんでした。

Szybala氏が31日の夜にAirTagの反応があった集合住宅まで行ったところ、ゴミ収集所のそばに複数のスーツケースが放置されているのを発見しました。これらのスーツケースはSzybala氏自身のものではありませんでしたが、ユナイテッド航空に預けられた荷物だったそうです。しかし、Szybala氏は警察に連絡したものの、報告書を提出する以上のことはできなかったとのこと。


スーツケースが戻らないまま年が明けた2023年1月1日、Szybala氏は一連の出来事についてユナイテッド航空のカスタマーサービス担当者と交わしたやり取りを公開しました。スクリーンショットを見ると、Szybala氏はAirTagの発信からスーツケースが集合住宅にあることがわかっており、ゴミ収集所の周囲にはその他の空のスーツケースがあったと主張していることが確認できます。これに対して担当者は、「落ち着いてください。あなたの荷物はデリバリーサービスにあります」「荷物はあなたにお届けします。安心してください」「あなたの荷物は配送サービスセンターにあり、安全です」というメッセージしか返していないことがわかります。


Szybala氏は海外メディアのThe Independentに対し、「私は自分が見たことを話しましたが、ユナイテッド航空は完全に私が間違っているかのように扱いました」「彼らが嘘をついていることは明らかでした。AirTagは私のバッグが建物の中にあると伝えていたので、配送センターにあるという主張は真実ではありませんでした」と述べています。

その後も、スーツケースは相変わらずSzybala氏の家に届けられることはありませんでしたが、1月1日にはAirTagの位置情報がマクドナルドに移動し、再び集合住宅の中に戻ったことも確認されています。


そして1月2日、Szybala氏は「スーツケースが車のトランクに入っており、車と一緒に移動している」という可能性に思い当たりました。すでに一連の投稿がTwitterで話題となっていたSzybala氏は、AirTagが集合住宅に戻ってきたタイミングで複数のテレビクルーを引き連れ、住人の協力を得て集合住宅のガレージに入りました。

ところが、ちょうどこの時にMiltonという宅配業者からSzybala氏に対し、「スーツケースを今日届けます」というメッセージが届きました。業者によると、ユナイテッド航空から配達するように指示された住所が間違っていたため、一度誤配送したスーツケースを引き取る必要があったとのこと。


Miltonの説明はSzybala氏が忍ばせたAirTagの反応とは一致しませんが、ひとまずSzybala氏は業者に電話しました。すると、集合住宅の近くにバンがいると業者が述べたため、その場でスーツケースを受け取ることができました。


スーツケースには航空会社のラベルやIDタグが付いたままであり、ロックされていた中身も無事だったそうです。しかし、Szybala氏は荷物を取り返したことに興奮しすぎて、業者に対して「スーツケースはずっと車の中にあったのではありませんか?」と尋ね損ねてしまったと述べています。なお、ユナイテッド航空はCNNの問い合わせに対し、「手荷物配送業者が提供したサービスは当社の基準を満たしておらず、このサービス障害につながった原因を調査しています」と返答したものの、カスタマーサービス担当者の誤った発言などには触れませんでした。

Szybala氏は一連の経験から、「追跡デバイスを荷物に入れることは助けになる可能性がある」「損害賠償を請求する際に備え、旅行の前には持ち物の写真を撮っておくべき」「荷物が遅れて届いた時は『配達してもらう』オプションを選ばず、空港で保管してもらうべき」といった教訓が得られたと述べています。

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in ハードウェア,   乗り物, Posted by log1h_ik

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