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イーロン・マスクが元Twitter幹部批判で過去の論文を引用してミスリード

by NASA HQ PHOTO

Twitterのイーロン・マスクCEOが、かつてTwitterのTrust&Safety(信頼と安全)担当の最高責任者だったヨエル・ロス氏に対して批判的なツイートを行っています。マスクCEOが誰かに批判的なツイートを行うのは日常茶飯事のようなものですが、このツイートはロス氏が博士課程時に書いた論文を引用しつつ、その内容をあえてミスリードしており、マスク氏に対して多くの批判が集まっています

Elon Musk Steps Up Attacks on Twitter’s Former Safety Head - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-12-11/elon-musk-steps-up-attacks-on-twitter-s-former-safety-head

Elon Musk Smears Former Twitter Executive Yoel Roth
https://nymag.com/intelligencer/2022/12/elon-musk-smears-former-twitter-executive-yoel-roth.html

きっかけとなったのは、人身売買被害者を救う活動をしているというエリザ氏がマスクCEOに対して行った「問題を見つけたと思います」というメンション。エリザ氏が「発見」したのは、2010年にロス氏が行ったツイートです。


ロス氏がツイートしたのは「生徒と教師のセックスはいつからならOK?」という記事で、33歳の高校教師が卒業目前の18歳の生徒と学校で性的行為を行ったことで起訴された事件を扱っています。この事件が起きたワシントン州は性的行為の同意年齢が「16歳」と定められていますが、別項で「未成年の学生」との特定性的行為も禁止されていて、裁判所はこの別項が「高校入学の上限年齢である21歳未満の学生」を意図したものだと判断したとのこと。

Student-teacher sex: When is it OK? | Salon.com
https://www.salon.com/2010/11/20/student_teacher/

ロス氏は記事のURLに「高校生は教師とのセックスに意味ある同意をすることができるのでしょうか?」というコメントを添えています。

このツイートから、ロス氏の思想を読み取ることはかなり難しいように思いますが、「問題」だとエリザ氏から連絡を受けたマスクCEOは「これは多くのことを説明しています」とツイート。続けて、スクリーンショットとともに「ヨエル氏は博士課程時の論文で、子どもが大人向けインターネットサービスにアクセスできるようにすることに賛成のようです」とツイートしました。


マスクCEOが持ち出してきたのは、2016年にロス氏がペンシルバニア大学の博士論文として執筆した「GAY DATA」という論文です。

GAY DATA - Yoel Roth
(PDFファイル)https://uploads-ssl.webflow.com/60981d118b006454de9222b2/61d364a68536fc3f5cf77933_Roth-Dissertation.pdf

貼られたスクリーンショットは248ページの12行目から末尾まで。ざっくりいえば「ゲイ向け出会い系アプリ『Grindr』がいかにコンテンツ管理を徹底しているといっても、10代の若者が利用するにはあまりにもわいせつ的。とはいえ、実際に18歳未満が利用している実態があり、クィア(性的マイノリティ)の若者文化の拠点として簡単に否定することはできない。サービス提供者は、単に法的責任を逃れたり、ティーンエイジャーを追い出したりするのではなく、クィアの若者たちを安全につなぐ役割も含めて、Grindrのようなプラットフォームの幅広いユースケースに対応できる安全戦略を構築することに注力すべき」という内容です。

ロス氏はゲイであることを公言しており、論文執筆以前には「Grindrに関する学術的研究は『Grindrは位置情報を利用しています。男性同性愛者はセックスが好きです。以上』という程度で悲しい」というツイートをしており、自ら詳しい研究に乗り出して執筆した論文であることがうかがえます。


今回のマスクCEOのツイートについて、オバマ政権時代に司法省・国土安全保障省に勤めていたエリック・コロンバス氏は「マスク氏は批判相手を小児性愛者呼ばわりするのが好きです。2018年にタイの洞窟に少年たちが閉じ込められた出来事が起きたとき、救出した男性を小児性愛者呼ばわりしました」「マスク氏は、ロス氏がTwitterを辞めるまではロス氏のことが好きでした。頻繁にロス氏のツイートを引用し、彼を弁護していました。ロス氏が辞めた今、マスク氏はロス氏に襲いかかったのです」とコメント。


なお、マスク氏はロス氏だけを標的にしたのではなく、前後2日間でマスク氏を批判した4人に対して悪質な告発を行っているとの指摘があります。


指摘を行ったA.H.氏(@a_h_reaume)によると、他3人はいずれも外部の諮問委員会のメンバーで、それぞれNPOのリーダーだったとのこと。マスクCEOはこの3人に対して「罰されるべき」「恥をかかせてやれ」などとツイートしていますが、これはマスクCEOのツイートを読む人間が「諮問委員会のメンバーはTwitterの従業員ではないこと」や「諮問委員会と会社の理事会は違うこと」を理解していないことを把握した上で行われているとA.H.氏は指摘。そもそも諮問委員会のメンバーは会社に対する強制力を持たないので、仮に過去のTwitterでなにか失策があったとしても、諮問委員会のメンバーに責任をかぶせるのはおかしいと論じています。

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in ネットサービス, Posted by logc_nt

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