インフレが進むアルゼンチンで仮想通貨のデジタルウォレットで自分の持つペソを保護する地元民が増加中
アルゼンチンは激しいインフレに見舞われており、年間インフレ率は2022年10月時点で88%を上回りました。一部の国民は投資ファンド・決済サービスの「Mercado Pago」を利用して自身の資産を守ろうとしていますが、このサービスにはリスクがあると経済系メディアのRest of Worldが指摘しています。
Risky digital wallets help Argentines fight inflation - Rest of World
https://restofworld.org/2022/mercado-pago-app-argentina-inflation-scam/
インフレ率は上昇を続けており、数カ月の内に100%を上回るのではないかとも予測されています。アルゼンチンの国民が自分のお金の価値を保つためにとった対策は多岐にわたり、富裕層は闇市でドルを買ったり、仮想通貨に手を出したりしていますが、中産階級や労働者階級はドルや仮想通貨を買う余裕がない、あるいは手に入れる方法も知らないとのこと。そのため、一部の国民は国内に広く浸透したデジタルウォレットを使用しているといいます。
Mercado Pagoは民間企業が運営するデジタル決済サービス・投資ファンドです。このサービスを使うとMercado Pagoのデジタルウォレットに入金することができ、投資信託へのアクセスも可能。記事作成時点では年間約60%のリターンを提供していますが、投資というより、通常の銀行口座に預けていると急速に価値が失われる資金を守るために使われているとRest of Worldは指摘します。
その背景には、高いインフレと新型コロナウイルス感染症の大流行の影響で、アルゼンチンでは多くの日常取引がデジタル化されているという事情があります。2022年10月の中央銀行の報告書によると、成人人口の半数がデジタル決済商品を利用しており、デジタルウォレットの利用は過去2年間で倍増しているとのこと。その結果、2022年時点でアルゼンチンの金融取引全体の50%をデジタル決済が占めるまでになりました。
デジタルウォレットの導入も急増しましたが、アルゼンチンではMercado Pagoを開発する「Mercado Libre」が巨大な市場コネクションを築いているため、Mercado Pagoが決済アプリ分野をリードするのは必然だったそうです。市場コンサルタント会社のAmericas Market Intelligenceで仮想通貨とオルタナティブ・ファイナンスの責任者を務めるIgnacio Carballo氏は「Mercado Pagoは、ユーザーと電子商取引の普及という点で主要なデジタルウォレットです」と分析していますが、非常に多くのユーザーとその資金が1つのアプリに集中することについて、サイバーセキュリティの専門家や経済学者が安全性の観点から懸念しています。
ラテンアメリカのハクティビスト組織「0xche」のプログラムディレクターであるGia Castello氏はRest of Worldに対し、「Mercado Pagoアカウントのロックを解除するための認証コードはSIMカードに送られるため、もしもスマートフォンが盗まれてしまったら、SIMカードを新しい端末にセットし、アカウントのパスワードをリセットするだけで誰でもアクセスできるようになってしまいます」と語っています。
Castello氏は「ユーザーは安全性を高めるため、安全なパスワードや二要素認証、SIMカードの暗号化など、できるだけ多くの要素を適用する必要があります。これらの対策はユーザーが行うべきものですが、企業はそれを推奨し、データ保護を強化するためにできる限りの投資をすべきです」と述べ、Mercado Libreがセキュリティ向上に注力すべきという考えを述べました。
Mercado Pagoなどのデジタルウォレットは、正式な金融機関に義務づけられている詐欺・盗難対策を求められていないため、問題はしばしば悪化する傾向にあるそうです。政治・経済研究センターのCultural Center for Cooperationでエコノミストを務めるMartin Burgos氏は「Mercado Pagoは経済的に不安定な人々の状況を改善するのに役立つといいますが、その高い金利はむしろ、最も弱い立場にある人々に影響を与える危険があります」と語りました。これは、Mercado Pagoが適切な規制なしで簡単にお金を貸し出したり、高金利で短期投資を提供したりしているからだとのこと。
貧しい人々が投資ではなく財産の保護を目的にデジタルウォレットを利用する例は多いものの、セキュリティ上のリスクはすべてのデジタルウォレットに共通するものであると専門家は指摘しています。他方、同じく貧困であることが多いアメリカの黒人男性は、住宅ローンなどを申請する代わりに仮想通貨に手を出さざるを得ない状況にあると、デジタルメディアのThe Atlanticは指摘します。
The Black Investors Who Were Burned by Bitcoin - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2022/11/black-investors-bitcoin-cryptocurrency-crash/671750/
若い黒人はアメリカ社会で最も貧しい層の1つであると指摘するThe Atlanticは、黒人の多くは世代を超えた富を築くことが難しいと分析します。伝統的な金融機関は黒人に対してより高い利率で住宅ローンを借りさせ、家を安値で買いたたくなど線引きを行うため、銀行から差別される黒人や、金融機関に不信感を抱く黒人もいるとのこと。このような人たちにとって、信用調査なしで買えることもある仮想通貨は魅力のあるものでした。
ある調査によると、黒人投資家が仮想通貨に手を出すのは白人投資家に比べて遅い一方、仮想通貨の価値が過去最高値に達した2021年時点においては、黒人は白人よりも仮想通貨を所有する人の割合が高かったと見られるとのこと。しかし、2021年11月頃から仮想通貨全体の価値が下がり始めたため、多くの投資家が損失を出したと考えられています。
ニューヨーク州のゼルナー・マイリー上院議員はこの問題に言及し、「仮想通貨は裕福な企業や機関が黒人を食い物にして、彼らが持っているわずかな富を引き出そうとしています」と述べました。
????: Crypto follows a long path of wealthy corporations or institutions preying on Black people and trying to extract what little wealth they have.
— Senator Zellnor Y. Myrie 米维 (@zellnor4ny) November 30, 2022
Like deed theft, promises of financial assistance turn out to be scams of extraction.
Like the mortgage crisis, mere inclusion— https://t.co/N1DOSEA1nr
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in Posted by log1p_kr
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