職に就けず車上生活も経験した人生ハードモード数学者が「リーマン予想の解決に近づく研究成果」を発表
2022年11月4日に、数学者の張益唐氏が数学の難題「リーマン予想」の解決に役立つ可能性がある研究成果を発表しました。張氏は「少年時代に労働者として働き、教育を受けられなかった」「車上生活しながら就職活動をしていた」といった壮絶な過去を持っており、苦難を経験した数学者の大発見に注目が集まっています。
Discrete mean estimates and the Landau-Siegel zero
https://doi.org/10.48550/arXiv.2211.02515
nt.number theory - Consequences resulting from Yitang Zhang's latest claimed results on Landau-Siegel zeros - MathOverflow
https://mathoverflow.net/questions/433949/consequences-resulting-from-yitang-zhangs-latest-claimed-results-on-landau-sieg
After Prime Proof, an Unlikely Star Rises | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/yitang-zhang-and-the-mystery-of-numbers-20150402
張氏は、1955年に上海で生まれた後、9歳の時にピタゴラスの定理を独自に発見し、10歳の時には「フェルマーの最終定理」や「ゴールドバッハ予想」といった数学的難問について学び始めるなど、幼少期から数学の才能を発揮していました。しかし、1966年には文化大革命が始まり、張氏は上海を離れて辺境地で10年間労働に従事することとなりました。さらに、張氏の父親が中国共産党とトラブルを起こしたことから、張氏は高校に通うことができず、暇な時間に数学書を読むことで知識を身に付けるしかありませんでした。
文化大革命が終わった後、当時23歳だった張氏は北京大学に入学して本格的に数学を学び、29歳で修士号を取得。その後張氏はアメリカにわたり、1991年にパデュー大学で博士号を取得しました。張氏は博士号取得後に研究機関への就職を目指しましたが、指導教官に推薦状を書いてもらうことができず、就職活動は難航しました。張氏は、就職活動が難航した原因について、「自らの内向的な性格が、数学コミュニティにおける自身のアピール不足につながった」と認めています。
研究機関への就職活動が停滞した張氏は、「自動車で生活する」といった経験をしつつ、1992年にサンドイッチショップのサブウェイで働き始めました。その後、1999年に友人の助けを借りてニューハンプシャー大学の数学講師として働き始め、2013年に発表した「素数の分布に関する論文」が評価され「天才賞」とも呼ばれる「マッカーサー・フェロー」を受賞。この功績が認められて張氏はカリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授に任命されました。
そして、2022年11月4日に張氏は「シーゲルのゼロ点」に関する定理を未査読論文公開サービスのarXivに投稿しました。この定理は、数学愛好者の間で「リーマン予想の解決につながる可能性のある定理」として話題になっています。
張氏が定理を発表した後、インターネット上には「年老いてから数学に興味を持ち、博士課程の取得に挑戦している私のような高齢者にとって、張氏はヒーローのような存在です」といった張氏の功績をたたえる投稿が数多く寄せられています。
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