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イーサリアムの消費電力を99%以上削減する大型アップグレード「The Merge」とは?


日本時間の2022年9月6日、ブロックチェーンプラットフォーム・イーサリアムの大型アップグレード「The Merge(ザ・マージ)」の第1段階が完了しました。多くの仮想通貨関係者が注目するThe Mergeについて、海外メディアのThe Vergeが「The Mergeとは何なのか?なぜ実行されるのか?」という疑問についてまとめています。

How Ethereum’s ‘Merge’ will slash its climate pollution - The Verge
https://www.theverge.com/2022/9/6/23339594/ethereum-merge-energy-pollution-proof-of-stake

イーサリアムはさまざまな分散型アプリケーションの基盤となるブロックチェーンであり、仮想通貨の取引記録などをブロックとして記録しています。このブロックは非常に多くのノードによって追加されるため、ブロックチェーンには履歴の改ざんを防ぐセキュリティシステムが必要です。


現行のイーサリアムで採用されているシステムは「プループオブワーク(PoW)」というもので、あるユーザーがデータの証明に必要な計算作業を担当し、承認することでブロックが追加される仕組みです。計算を行ったユーザーには報酬として仮想通貨が与えられるため、データ承認作業は鉱石の採掘に見立てて「マイニング」と呼ばれ、計算リソースを提供するユーザーは「マイナー」と呼ばれます。

プルーフオブワークを採用することのメリットには、1つのエンティティが大きな影響力を持ちすぎることを防ぎ、取引記録の改ざんを困難にするというものが挙げられます。その一方で、証明作業は時間と共に難しくなるため、マイニングには強力なハードウェアと膨大な電気が必要となるというデメリットもあります。その結果、一部のマイナーはより強力なハードウェアに投資し、専用のマイニングセンターを建設するようになり、電気料金が安い場所には大量のマイナーが集まるようになっているとのこと。

プルーフオブワークを採用している仮想通貨のマイニングが盛んになると、その分だけエネルギー消費量は増加し、ハードウェアの電子廃棄物も発生します。近年ではイーサリアムや同じくプルーフオブワークを採用するビットコインに対し、マイニングによるエネルギー消費および環境汚染を問題視する声が強まっており、マイニング企業がクリーン電力を使用するアピールとして原子力発電企業と手を組む動きもみられます。しかし、これらはブロックチェーンが大量のエネルギーを消費するという問題の根本的な解決にはなりません。

ビットコインの採掘企業が「原子力発電」と手を組む動きが進んでいる、環境に優しい電力源として - GIGAZINE


そこで検討されているのが、プルーフオブワークから「プルーフオブステーク(PoS)」という新たなシステムへの移行です。プルーフオブステークは、ブロックを承認するバリデータが一定額の仮想通貨を「ステーク(掛け金)」として拠出し、その額に応じてブロックの承認作業が割り当てられます。バリデータは計算リソースを提供した見返りに仮想通貨トークンを得られますが、不正や欠陥があった場合はステークを失う仕組みとなっています。

「The Merge」とは、イーサリアムブロックチェーンにおけるプルーフオブワークからプルーフオブステークへの移行作業のことです。イーサリアムのバリデータとなるには、少なくとも32ETH(約700万円)のステークが必要とのこと。

プルーフオブステークの利点として挙げられるのが、承認作業に強力な計算リソースや膨大な電力を必要としないという点です。イーサリアム財団によると、The Mergeが成功してプルーフオブステークへの移行が完了すれば、イーサリアムブロックチェーンにおけるエネルギー消費量は99.95%削減されると推定しています。ビットコインやイーサリアムのエネルギー消費量を追跡するウェブサイト・Digiconomistを運営するAlex de Vries氏によると、The Mergeが成功すれば年間3000万~3500万トンもの二酸化炭素排出量が削減されるとのこと。これはアイルランドやスイスの年間二酸化炭素排出量に匹敵する量であり、気候変動対策として非常に大きな意味を持ちます。

The Mergeは「Bellatrix(ベラトリックス)」と「Paris(パリ)」の2段階構成となっています。9月6日に完了した第1段階のBellatrixは、「ビーコンチェーン」というプルーフオブステークのブロックチェーンをイーサリアムに統合し、ブロックが生成できるようにするというものです。第2段階のParisでは、イーサリアムブロックチェーンにおいてプルーフオブワークの承認システムが停止し、プルーフオブステークへの移行が完了する予定です。


しかし、既存のプルーフオブワークに対応して設備投資を行ってきたマイナーからは、ハードウェアの性能に左右されないプルーフオブステークへの移行に反対する声が上がっています。すでに、プルーフオブステークを採用するソフトウェアへの更新を拒否する動きや、古いプルーフオブワークを利用したフォークを作ろうとする動きが活発化しているとのこと。

こうした反対活動が成功し、The Merge完了後のイーサリアムに十分なバリデータが参加しなければ、ブロックチェーンに対してセキュリティ上のリスクが生じます。イーサリアム財団と協力してビーコンチェーンの開発を支援してきたLeonardo Bautista Gomez氏は、「もしバリデータの数が非常に少なければ、イーサリアムネットワークへの攻撃も容易になります。そのため、私たちは数十万人ものバリデータの参加率を99%に近づけたいのです」と述べています。

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in ソフトウェア,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

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