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スマホのバッテリー寿命を延ばし修理パーツを5年間提供することを義務化する法案がEUで検討中


EUの立法組織である欧州議会は2022年8月31日、スマートフォンおよびタブレットのバッテリー寿命と修理用スペアパーツの入手可能性についての草案を公開しました。草案はスマートフォンとタブレットの修理しやすさを改善することを目的としており、新規に端末を購入するのではなく修理を重ねて同じ端末を長く使用することで、二酸化炭素排出量を削減する意図を示してます。

Designing mobile phones and tablets to be sustainable – ecodesign
https://ec.europa.eu/info/law/better-regulation/have-your-say/initiatives/12797-Designing-mobile-phones-and-tablets-to-be-sustainable-ecodesign_en

The EU wants to enforce better phone battery life and spare parts - The Verge
https://www.theverge.com/2022/9/1/23332407/european-commission-smartphone-repairability-spare-parts-energy-labels-proposals

Brussels proposes tough regulations on smartphone spare part availability | Financial Times
https://www.ft.com/content/5642b410-4311-427b-af21-c970a400ef90

スマートフォンやタブレットなどのバッテリー寿命やバッテリーの交換可能性は、ユーザーの利便性や環境保護にとって非常に重要となっています。そこで、欧州議会は2022年3月10日に、「バッテリーのある製品においてバッテリーの取り外しや交換を可能にすること」を義務づける規則を採択しました。

これは、EUが重視している環境への負荷軽減のほか、ウクライナに対するロシアの軍事侵攻に影響された原材料調達の脆弱(ぜいじゃく)性といった点から、「バッテリー寿命が製品寿命を実質的に左右している」という状態の規制を目的としています。バッテリー規則により、企業はバッテリーを本体に内蔵して取り外せないようにすることが禁止されるほか、交換用バッテリーを製品の市場投入から10年間以上は利用可能にすることも要求されています。

バッテリーを搭載する製品について「バッテリーを交換可能にすること」を義務づける規則を欧州議会が採択 - GIGAZINE


2022年8月31日に新たに公開された草案では、少なくとも15種類のスマートフォン・タブレットの部品について、デバイスが最初に販売されてから5年間はメーカーが専門の修理業者に供給するよう強制することが計画されています。これにより消費者は、交換用のバッテリー、ディスプレイ、充電器、背面カバー、SIMカードを入れるトレイへのアクセスを、5年間保証されます。

スマートフォン・タブレットの修理可能性を高める草案は、ユーザーの利便性を改善する目的だけではなく、ヨーロッパ全体の二酸化炭素排出量を削減するための提案となっています。EUは、「耐久性が高く修理が容易な製品を製造するようメーカーに強制することで、電子廃棄物を削減し、リサイクル率を高め、デバイスに必要な材料の再利用を促進できます」と主張しています。イギリスの経済紙であるFinancial Timesによると、スマートフォンのライフサイクルを5年延長することで、500万台の車の運転をやめることにほぼ相当するほど、二酸化炭素排出量を抑えられるとのこと。

またEUは、メーカーが5年間交換用バッテリーを提供できない場合は、代わりにバッテリーの耐久性テストを満たすよう義務づけることを計画しており、テストの基準について示しています。バッテリーのテストでは、1000回のフル充電後に80%のパフォーマンスを達成することが求められるほか、ソフトウェアの更新によりバッテリー寿命に悪影響を及ぼさないことが定められています。


欧州議会は2022年4月に「修理する権利」の改善に関する提案を採択したり、6月にはスマートフォンなどの電気機器の充電器をUSB Type-Cに統一して「ユニバーサル充電器」を義務化する提案に合意したりと、充電器やバッテリー、端末のパーツの利便性を上げてリサイクルする動きを活発にしています。スマートフォンとタブレットの修理・リサイクルを容易にすることで、製造と使用に伴うエネルギー消費を3分の1まで削減できることが期待されています。

スマホなどの電気機器の充電器をUSB Type-Cに統一することでEU各国が合意、2024年秋に義務化へ - GIGAZINE


一方で、メーカーは「より多くの部品を入手する必要があるということは、電子廃棄物が削減されるとしても、その分プラスチックの消費量が増えるだけです」と主張しています。EUによる規制は大企業よりも小規模なスマートフォンメーカーにとって厳しいものになることが予測されており、スマートフォン全体の価格が上昇し、低価格で提供されるブランドは市場から一掃されてしまう影響をアナリストは指摘しています。

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in ハードウェア, Posted by log1e_dh

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