世界中の人がオランダ人並に自転車に乗れば二酸化炭素排出量を7億トン近く減らせるという研究
オランダは自転車大国で知られており、オランダ人は1日に平均約2.6キロメートルも自転車に乗っているといわれています。もし世界中がオランダ人と同程度に自転車を利用すれば、年間の二酸化炭素排出量が6億8000万トン以上も削減できることが、南デンマーク大学やコペンハーゲン大学などの研究者による共同研究で明らかになりました。
Historical patterns and sustainability implications of worldwide bicycle ownership and use | Communications Earth & Environment
https://doi.org/10.1038/s43247-022-00497-4
If we all biked like the Dutch, world would avoid a Germany’s worth of emissions
https://www.zmescience.com/science/cycling-versus-emissions-22082022/
世界の二酸化炭素排出量のうち、交通機関による排出量は全体の4分の1を占めているとのこと。さらにその半分は自動車によるもので、自動車の需要が増加するにつれて二酸化炭素排出量も増加し、2050年までに3倍に増加するという説もあります。
「19世紀初頭に発明された自転車は、自動車よりも長い歴史を持っています。それにもかかわらず、自転車は世界のほとんどの国で、交通手段としてわずかな役割しか果たしていません」と研究チームは述べており、自転車が交通機関による二酸化炭素排出量の削減につながるとみています。
研究チームは1960年代から2015年にかけての自転車の生産と使用に関するデータセットを作成しました。その結果、自転車の生産量は1962年でおよそ2000万台だったのが、2015年には1億2300万台に増加していることがわかりました。同期間における自動車の生産量は1400万台から6700万台だったそうで、自転車の方が圧倒的に生産量が増加しています。なお、最も自転車を生産している国は中国で、1962年から2015年までの自転車の生産台数の3分の2が中国によるものだったそうです。
一方で、自転車を交通手段として用いる割合はほとんどの国で5%未満であることも判明しました。調査対象となった60カ国のうち、自転車が最も普及しているのはデンマーク、日本、スウェーデン、オランダだったそうで、この4カ国では自転車を交通手段として用いる割合が15%を超えていたとのこと。また、オランダでは4人に1人が自転車を利用すると答えており、自転車が単なる趣味ではなく、重要な交通手段の1つとして捉えられていると研究チームは述べています。
研究チームによれば、もし他の国々がオランダと同様に国民1人当たり1日2.6キロメートルのサイクリングをすると仮定した場合、各国は年間6億8600万トンを節約することができるとのこと。これは自動車からの二酸化炭素排出量の20%に相当するそうです。
また研究チームは、オランダでは他の国よりも肥満の割合がずっと低い点にも注目しており、自転車に乗る習慣によって年間約17万人が死亡リスクを回避していると推定しています。
研究チームは、自転車に乗る習慣を世界中に広めることは難しいと認めていますが、デンマークとオランダが実践した「自転車専用レーンの計画や建設」「自転車を推奨する教育と文化」「税金による自動車利用抑制政策」などを取り入れることで、自転車に乗る割合も増えるのではないかと述べています。
・関連記事
「ゲームより難易度が高い自転車専用レーン」が話題に、ぐねぐね曲がる上に障害物まで存在 - GIGAZINE
自転車に乗るメカニズムがよくわかる「絶対に乗りこなせない自転車」が誕生、一体どんな自転車なのか? - GIGAZINE
「ウォーキングとサイクリング」ではどちらが健康のメリットが大きいのか? - GIGAZINE
自転車に乗る意欲は雨や気温などの気象条件にどれほど左右されるのか? - GIGAZINE
自転車のタイヤは幅が狭くても広くてもスピードは変わらない - GIGAZINE
完全無人でスイスイ進む「自動運転自転車」が爆誕、Huaweiのエンジニアが開発 - GIGAZINE
・関連コンテンツ