乗り物

自転車大国オランダはいかにして気軽に自転車に乗れる文化を生み出したのか

by Javier Vieras

オランダは国内に総延長3万5000kmに及ぶサイクリングコースがある、世界有数の自転車大国です。坂道が少なく平地の多いオランダでは、第二次世界大戦以前から自転車が広く利用されていましたが、現在のような自転車大国になったのは1970年代に入ってからの国を挙げての取り組みに理由がありました。その取り組みについて、自動車を売却して自転車生活を開始し8年になるというメリッサ・ブラントレットさんとクリス・ブラントレットさんが「Building the Cycling City」という本にまとめており、ニュースサイト・Voxのデヴィッド・ロバーツ氏がブラントレットさん夫妻から詳しい話を聞き出しています。

How the Dutch created a casual biking culture - Vox
https://www.vox.com/science-and-health/2018/8/28/17789510/bike-cycling-netherlands-dutch-infrastructure


ブラントレット家は4人家族で、以前は他の家庭と同じように自動車を使う生活を送っていましたが、2010年に自動車を売却して、自転車生活へと切り替えました。サイクリングサークルを通じてオランダの自転車事情を知ったメリッサさんとクリスさんは子ども連れでオランダの都市を訪れて現地のことを学び、本を書き上げたとのこと。

実は、自転車大国のオランダでも、第二次世界大戦後の主要な交通手段は自動車に切り替わっていました。たとえば、ロッテルダムはドイツ軍による爆撃を受けて町の中心部が焼け野原となり、再建される中で歩行者・自転車・公共交通機関には優しくない、自動車が中心の町作りが行われたため、交通事故の数が増大し、自転車利用率は大幅に下がったそうです。しかし1970年代に入ると、交通事故による子どもの犠牲を減らそうという社会運動が起きたこと、そして石油危機が起きたことにより、国が自転車保護の政策を採るようになり、現在のような「自転車大国」への道を歩き始めます。

メリッサさんとクリスさんによると、そもそもオランダでは自転車に乗る人に対する配慮が行き届いているという点が他国とは大きく異なるとのこと。自転車に乗っているときに車が高速で行き交う隣を走るのはイヤなものですが、オランダでは並走する車の流れとの速度差も考慮されていて、だいたい車が時速30km以上で走るところだと自転車専用レーンとの間にコンクリート製の壁を設けたり、植物を用いた分離帯を作るなどして、完全分離を行っているそうです。横断歩道のように、やむを得ず車と自転車の交通が交差するところでは、横断歩道部分が盛り上がった構造になっていたり、横断歩道の前後に車の速度を抑えるスピードバンプを設けたりしているとのこと。

自転車が「主役」なのは、オランダのサイクリストのヘルメット着用率が0.5%以下という数字にも現れています。着用しているのはスポーツサイクリストぐらいなので、およそ200人に1人程度だそうです。これは「車優先なので、自転車に乗る人はいざという時のためにヘルメットをかぶること」という法律がある州の多いアメリカとは対照的に、安全に自転車に乗れる環境作りをしてきたオランダならではといえます。

by Adityo Sastromuljono

また、単に施策として自転車が優遇されているだけではなく、自転車に乗る人の「育成」も行われています。多くの学校で10歳から11歳の間に「サイクリング技術」を習得する授業があり、11歳から12歳にかけては、交通ルールを理解しているかどうかを確かめるテストが実施されます。テストを終えた子どもには、合格証明書が発行されることになっています。さらに、自転車での安全な通学をサポートするために、指定通学路が安全かどうか、実走調査が行われています。

ただし、自転車はあくまで車や公共交通機関と組み合わせて使うもの、という存在であることもはっきりとしています。たとえば「家から最寄り駅まで」「駅から職場まで」という区間は自転車に乗るというパークアンドライド形式の利用です。どこの駅も、人々が自転車でやってきて駐輪していくという前提なので広い駐輪スペースが設けられており「この駅は駐輪場がないから行けない」ということがなく、移動ルートがほどよく分散して、交通の好循環を生み出しているとのことです。

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in 乗り物, Posted by logc_nt

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