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現代文明が滅亡するリスクはどのくらいあるのか?


最盛期のローマ帝国は世界人口の30%が住み、市民は現代人顔負けの豊かで先進的な暮らしを享受していましたが、徐々に衰退し最後には滅亡してしまいました。グローバルな結びつきによりかつてないほど発展している現代文明も、これまで繁栄しては滅亡していった数々の文明と同じ運命をたどるのかどうかや、核戦争やパンデミックで大打撃を受けた現代文明が復興できる可能性について、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtが解説しました。

Is Civilization on the Brink of Collapse? And Could We Recover? - YouTube


ローマ帝国は「パクス・ロマーナ」と呼ばれる繁栄と安定の時代を築き、首都・ローマは人類史上初めて100万人が住む大都市となりましたが、政治的な混乱や外敵などにより滅亡してしまいました。


Kurzgesagtによると、事実上あらゆる文明は平均して340年で幕を下ろすとのこと。


文明が崩壊すると知識は失われ、生活水準は下がり、暴力が増えて、人口は減ります。


例えば、ローマ帝国では上下水道が敷かれコンクリート造りの建物が築かれていましたが、ヨーロッパ人は水道網やコンクリートの作り方を忘れてしまいました。


一方、現代人の暮らしは高度な産業技術によって支えられており、品種改良により高収量になった作物や化学肥料、効率的な機械などが数十億人の人々を養っています。


このようにグローバル化した現代文明は、ある意味では過去の文明よりも壊れやすいものだと言えます。


なぜなら、産業技術が維持できなくなれば人口のほとんどが死んでしまうからです。さらに、もし崩壊があまりにも急激かつ破壊的だった場合、技術が完全に失われて原始時代に逆戻りしてしまうおそれもあります。


とはいえ、そこまでの崩壊はなさそうだとKurzgesagtは考えています。その理由の1つは、文明の崩壊は定期的に起こっているものの、これまでのところ人口の10%以上が死に絶えるような大災害が起きたことはないことです。


例えば、14世紀のヨーロッパと中東を襲った黒死病では、ヨーロッパ人の3分の1、世界人口の10分の1程度が命を落としました。


これにより、短期的にはヨーロッパ社会は大打撃を受けましたが、長期的なヨーロッパの発展にはほとんど影響を及ぼさず、人口は2世紀以内に回復しました。そして、ヨーロッパは産業革命を迎えて大きく発展することになります。


人類の回復力を示すもうひとつの事例としてKurzgesagtが挙げているのが、第二次世界大戦における広島や長崎への原爆投下です。


原子爆弾により広島では約14万人の人々が亡くなり、建物の9割以上が壊滅的な被害を受けました。


しかし、その後広島の人口は10年以内に回復し、2022年時点では約120万人の人口を擁する都市に発展しています。


もちろん、過去と現代とでは異なる点もあります。技術の発展によりコロナウイルスの感染力とエボラウイルスの致死性を兼ね備えたウイルスを作ることも可能になっているため、これらによるパンデミックが発生すれば被害は甚大です。


また、核爆弾も第二次世界大戦中よりはるかに強力であるため、もし全面的な核戦争が発生すれば核の冬により最大で50億人が餓死するとの試算もあります。


一方、技術の発展は人類の回復力にもつながっています。品種改良によりトウモロコシは先祖の野生種に比べて10倍も大きくなり、豆粒大だったトマトも大きくたわわに実るようになりました。


世界には農業従事者が10億人いるので、仮に世界の人口が8000万人まで減ったとしても、生存者は農業技術を継承することができます。


全てがそのままというわけにはいかないのも事実です。特にハイテク産業は大陸を越えて相互につながったサプライチェーンが必要不可欠なので、これらが失われれば維持は不可能です。


しかし、産業革命が農業革命から1万2000年後に発生したことを踏まえれば、大規模な崩壊の後に産業技術を取り戻すのも、長い目で見ればそれほど難しいことではないとKurzgesagtは指摘しています。


現代文明の崩壊後に再出発した人類にはエネルギーが必要です。特に、簡単に採掘して利用することができる石炭は、文字通り産業革命の原動力となりました。


現代でも石炭は火力発電や暖房に用いられていますが、もし石炭を使い尽くしてしまったら気候変動が加速するだけでなく、次の世代の人類が石炭を使って産業革命をやり直すことができなくなります。そのため、Kurzgesagtは「石炭は保険としてとっておくべき」と提唱しています。


また、復興に必要な知識も次世代に残しておくことが可能です。確かに、データセンターのハードディスクドライブに保存されたデータなどは文明の危機と共にアクセスできなくなってしまいます。


しかし、世界各地に260万ある図書館に保管されている知識の多くは、大災害を生き延びると考えられています。


また、生存者たちは以前の文明の機械を掘り起こしてリバースエンジニアリングし、技術の一部を取り戻すこともできます。


こうした点からKurzgesagtは、「人類は驚くほどの回復力を持っているので、たとえ多くの人々が滅び去るような地球規模の文明崩壊が起きても、回復できる可能性があります。しかし、核戦争や危険なパンデミックなど、先人が築いてきた素晴らしい地球文明を脅かすリスクは存在します。救いとなるのは、そうしたリスクに備えてその影響を軽減する時間がまだあるという点です。ですから、私たちはそれを実行に移さなければなりません」と結論付けました。

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in 動画, Posted by log1l_ks

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