人類文明は20年~40年以内に崩壊への帰還不能点を迎える可能性があると理論物理学者が警告、その原因とは?
自然科学分野の学術誌・Nature Scientific Reportsに掲載された論文の中で、2人の理論物理学者が「このままのペースで森林破壊が続くと、地球上の人口を維持していくことができなくなる」と警告を発しています。
Deforestation and world population sustainability: a quantitative analysis | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-63657-6
Theoretical Physicists Say 90% Chance of Societal Collapse Within Several Decades
https://www.vice.com/en_us/article/akzn5a/theoretical-physicists-say-90-chance-of-societal-collapse-within-several-decades
論文はチリ・タラパカ大学電子工学科のマウロ・ボローニャ教授と、アラン・チューリング研究所のジェラルド・アキーノ博士によって執筆されたもの。
地球上で人類が生きていくためには森林の存在が不可欠です。しかし、かつて6000万平方kmあった森林は4000万平方kmを下回るところまで減っています。2000年~2012年の期間に失われた森林は230万平方kmで、同様のペースで森林が失われていった場合、100年から200年ほどですべての森林が消滅することになります。
「最後に残った1本の木が伐採された瞬間から人間社会に影響が出る」ということはあり得ず、人間社会はもっと早い段階から影響を被ることになります。
論文によると、現状は「モアイ像」で知られるイースター島の森林破壊の事例とよく似ているそうです。モデル化して計算したところ、統計的には「人類が破局的な崩壊に直面することなく生き延びる可能性」は非常に低く、急激な人口減少により、最終的に低人口で安定状態になるか、あるいは完全な絶滅に至ると予想されるとのこと。「帰還不能点」は20年から40年以内に訪れるとみられます。
もし文明を維持しつつ生き残っていくためには、前代未聞のレベルの技術開発が必要だと考えられています。アキーノ博士は「技術レベルの向上は、人口増加や森林破壊の増加につながる一方で、さらなる資源の有効活用にもつながります。これ以上の生態系の破壊を回避・防止する解決策を打ち出せるかもしれません。また最後のチャンスとして、地球外で文明を再構築することもできます」と述べています。
ただし、論文は森林破壊のペースが維持された場合を想定していますが、実際には伐採抑制や植林などによって森林破壊のペースは鈍化しており、また、人口増加率も21世紀半ば以降は落ち込むと予想されているため、最悪のシナリオが必ず訪れるわけではないようです。
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