私たちは人類以前の文明の痕跡に気づくことができるのか?
by Jeremy Riel
「私たちの文明以前に大きな文明があった場合、どのようにしたら私たちは太古の文明の痕跡を見つけられるのか?」という問題について、天体物理学者のアダム・フランク氏が説明しています。
Was There a Civilization On Earth Before Humans? - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2018/04/are-we-earths-only-civilization/557180/
フランク氏は「地球外の惑星でも、工業を発達させた文明が惑星の気候に影響を与えることがあるのか?」という「惑星の温暖化現象」について研究を行っている人物。ある時NASAのゴダード宇宙科学研究所を訪れた際に、フランク氏はゴダード宇宙実験研究所の責任者である気候学者のギャビン・シュミット氏に対し、自らの研究について話していました。すると、シュミット氏はフランク氏の解説の最中に、「私たちの文明が、地球に起こった唯一の文明だと知ることはできるのですか?」と尋ねたそうです。
その瞬間、フランク氏は地球上に存在した膨大な時間の流れを感じ、めまいを感じたと語っています。これまでフランク氏は地球外の文明について研究を行っていましたが、シュミット氏の言葉に触発され、シュミット氏と共同で「地球に人類以前の文明があったことを証明する痕跡を、どのように求めたらいいのか?」という研究を始めました。
「私たちは普段、地面の下に埋もれた遺跡が発掘されたり、外部の侵入者によって滅ぼされた文明に思いをはせることがあります。しかし、これら建造物や遺構が残るような文明はせいぜい数千年のタイムスケールでしかなく、数千万年前、数億年前といったタイムスケールで考えると物事はさらに複雑になるのです」とフランク氏は述べています。第四紀層よりも以前に都市や工場、道路といった産業文明の痕跡があったとしても、2018年現在では完全に消滅してしまい、チリやゴミとなってしまっているとのこと。
by Arian Zwegers
研究者たちは痕跡を見つけられていないだけで、恐竜が絶滅した6500万年前からホモ・サピエンスが地球上に現れた30万年前の間に、ひょっとすると文明を持った哺乳類が現れたかもしれません。もちろん、当時の哺乳類たちは化石となって発見されていますが、全ての生物が化石化するわけではありません。全生物のうちでも化石となって後世に残るのはほんのわずかであり、ほとんどの生物は化石になることなく消えていきます。加えて全ての化石が発掘されるわけでもないため、研究者たちが10万年もの間にわたって繁栄した、文明を持った生物の化石を見逃しても、何ら不思議はないとフランク氏は語りました。
ほんの数百万年で文明の直接的な証拠が消えてしまうのであれば、一体どのような方法で私たちは超古代文明の痕跡を発見できるのでしょうか。フランク氏はこの質問に答えるために、私たち人類が築いた文明が崩壊した後、どのような痕跡を地球に残すのかについて考えました。
私たちの文明はすでに、後世の科学者たちが検出できるさまざまな種類の痕跡を残しているとのこと。たとえば作物の収穫量を上げるために使われる窒素肥料は、70億人を超える人口を維持するために広範囲で使われています。これによる地球上の窒素バランスの変化は、後世の科学者が検出可能な量に達しています。また、電子機器に使用される希少金属の過剰な採掘や、破棄された希少金属が地球の表面に大量に残っているという事実は、文明が存在した証拠になり得るそうです。
そして、プラスチック製品が海に廃棄され、波や太陽、風によって風化した「プラスチックの砂」が堆積していることも、文明の痕跡です。プラスチック粒子の砂は沿岸地域だけでなく、深海や北極海付近にまで広がり、地質学的タイムスケールに耐えうる量が堆積しているとのこと。
by junaidrao
フランク氏が最も有望だと考える痕跡は、文明が消費した化石燃料に応じて放出される「炭素」だとのこと。天然の炭素同位体は「炭素12」「炭素13」「炭素14」の3種類ですが、化石燃料の使用によって天然の炭素同位体と人工の炭素同位体の比率が変化し、将来の科学者たちが発見できる痕跡を残すとしています。しかし、炭素同位体の比率から文明の痕跡を発見する方法では、あまりにも短すぎるスパンの文明は炭素同位体の変化も少なく、検出することが難しいそうです。
「文明を興すということは、惑星からエネルギーを収穫することを意味します」とフランク氏は述べており、私たち人類の文明は惑星から次々とエネルギーを収穫している段階だとしています。やがて文明が十分に発達すると、文明は惑星に対してエネルギーをフィードバックする必要に迫られるとのこと。
フランク氏は「気候変動を通じて、持続可能なエネルギー源を見つける必要を理解すれば、文明が惑星に残す影響は次第に小さくなるでしょう」と話し、十分に成熟した文明では逆に後世に残す痕跡が少なくなる可能性があると示しています。
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