哺乳類は睡眠中に100回以上「微小覚醒」しているが気付いてない
「睡眠中に起きた」という記憶は、トイレに行くために起きる際などを除いて記憶に残らないのが普通です。しかし、コペンハーゲン大学が実施したマウスを用いた研究によって、神経学的視点では哺乳類が一晩に100回以上起きている可能性が示されました。
Memory-enhancing properties of sleep depend on the oscillatory amplitude of norepinephrine | Nature Neuroscience
https://doi.org/10.1038/s41593-022-01102-9
Stress transmitter wakes your brain more than 100 times a night – and it is perfectly normal – University of Copenhagen
https://healthsciences.ku.dk/newsfaculty-news/2022/07/stress-transmitter-wakes-you-up-more-than-100-times-a-night--and-it-is-perfectly-normal/
研究チームは、睡眠中のマウスのノルアドレナリン分泌量を測定しました。ノルアドレナリンは睡眠中に分泌量が減少することが知られているホルモンで、分泌量を測定することで睡眠中であるか否かを神経学的に判定できます。
測定の結果、睡眠中のマウスのノルアドレナリン分泌量は頻繁に増減を繰り返していることが判明。ノルアドレナリンの分泌量は1回の睡眠中に100回以上増加しており、増加した際の分泌量が起床時の分泌量と同等であったことから、研究チームは「神経学的には、睡眠中のマウスは100回以上目覚めている」と結論付けました。
ノルアドレナリン分泌量の増加する時間が一瞬であったことから、研究チームは「100回の目覚めは、どれも一瞬なので、目が覚めていることに気付くことはありません」と述べています。また、今回のノルアドレナリン分泌量測定はマウスを対象に実施されましたが、睡眠とノルアドレナリン分泌量の関係が哺乳類に共通のメカニズムであることから、人間でも同様の「微小覚醒」が発生していると研究チームは推測しています。
さらに、研究チームはマウスの睡眠パターンが記憶力に与える影響を調査するべく「睡眠前のマウスに2つの物体を与え、起床後に2つの物体のうち片方を別の物体に代えて与える」という実験を行いました。その結果、ノルアドレナリン分泌量の減少幅が大きかったマウスほど、起床後に与えられた物体のうち初めて触れる方の物体に興味を示しました。ノルアドレナリン分泌量の減少幅が大きかったマウスが「睡眠前とは異なる物体」を認識できていることから、研究チームはノルアドレナリンの増減が「睡眠が記憶力に与える影響」を強化すると考察しています。
研究チームによると、抗うつ薬の中にはノルアドレナリンの分泌量を増大させるものがあるとのこと。研究チームはノルアドレナリン分泌量を増大させる薬品によって睡眠中のノルアドレナリン分泌量の減少幅が小さくなると、記憶力に悪影響が及ぶ可能性があると指摘。「体内のノルアドレナリン濃度を変化させる種類の薬を注視し、将来的にはノルアドレナリン分泌量に影響を与えない薬を開発する必要があるかもしれません」と述べています。
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