映画の主演俳優の年齢は上昇傾向にある
2022年5月に公開された映画「トップガン マーヴェリック」が世界的に大ヒットしています。本作は1986年に公開された「トップガン」の続編であり、トム・クルーズの主演作として最大のヒットとなっているわけですが、1962年生まれのトム・クルーズは60歳。トム・クルーズに限らず、映画の主演俳優に高齢化の傾向があることが指摘されています。
The Golden Age of the Aging Actor - The Ringer
https://www.theringer.com/movies/2022/6/27/23181232/old-actors-aging-tom-cruise-top-gun-maverick
ニュースサイトのThe Ringerは、映画情報データベース・IMDbの情報をもとに、少なくとも1000ユーザー以上が評価した1980年以降制作の作品のキャスト表の1番手俳優、2番手俳優、3番手俳優の公開時の年齢を集計し、グラフ化しています。
グラフは縦軸が俳優の平均年齢、横軸が公開年。左から、1番手~3番手の平均年齢、1番手&2番手の平均年齢、1番手の平均年齢の3つのグラフが並んでいますが、だいたい2000年以降は右肩上がりというまったく同じ傾向を示しています。
この傾向は、ユーザーの評価数を10000以上に増やして作品を絞り込んでもほぼ同様だったことがわかります。
1番手&2番手俳優の年齢について、どちらか片方が30歳未満の作品の割合、および60歳以上の作品の割合を示したのが以下のグラフ。
俳優を1900年~1920年生まれから1980年~2000年生まれまで20年ごとに区切り、それぞれの世代が20歳~80歳のときにどれぐらいの映画に出ていたかを示したのが以下のグラフ。1940年~1960年生まれと1960年~1980年生まれは50代ぐらいまで似たようなグラフですが、1980年~2000年生まれの出演本数はすでに20代のうちから上の世代より少ない曲線を描いています。
こうした状況になった理由の1つとして挙げられているのが、モノカルチャーの衰退です。以前ならみんなが同じ映画を見ていたので、たとえばトム・クルーズは「誰もが知る映画スター」になれましたが、コンテンツの多様化により「誰もが見ているコンテンツ」が減り、昔ほどのスターが生まれにくいというわけです。
また、メディアアナリストのジェフ・ボック氏は、有名人とネットでお近づきになりやすいことが、神秘性をなくし、むしろ絆を弱めていると指摘しています。エンタメレポーターのマシュー・ベローニ氏もこの意見に同調しており、「毎日、妻のInstagramのいたるところにマイルズ・テラー(「トップガン マーヴェリック」ルースター役・35歳)が出てきます。彼がフィリーズについてツイートしているのを見られるし、パパラッチのSNSアカウントやTikTokでもその姿を見られます。映画でマイルズ・テラーを見るのも特別なことではありません」と述べ、SNSによって俳優の価値が低下して当たり前のものになっていると説明しました。
映画データ研究家のスティーブン・フォローズ氏は、作品の「再起動」や続編制作により、かつてのスターがリサイクルされることで、主演俳優の高齢化につながっていると考えています。たとえば、トム・クルーズは1996年から「ミッション・インポッシブル」シリーズに出演しており、1作目公開時は37歳でしたが、「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」が公開される2023年には61歳になります。
映画業界としても、作品を作るときに往年のスターの力を借りた方が確実にヒットを狙えるという事情もあります。「フラッシュダンス」「トップガン」「アルマゲドン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」など数々のヒット作を手がけたプロデューサーのジェリー・ブラッカイマー氏も、映画スタジオが出演させたい俳優リストにはトム・クルーズやレオナルド・ディカプリオ(47歳)が入っていると述べています。近年はここにクリス・ヘムズワース(38歳)が割って入ってきているそうです。
なお、この高齢化傾向を「年齢差別が解消されてきている」と捉える見方もあります。映画業界では歴史的に、女性に対する厳しい年齢差別が存在しましたが、高齢化は男女問わずみられる傾向です。以下はThe Ringerが示した、映画に出演する男性と女性の平均年齢グラフ。男性の高齢化に合わせるように、女性も高齢化しています。
平均年齢ラインの上昇は、今後も当面は続くものとみられますが、「スパイダーマン」のトム・ホランド(26歳)や「君の名前で僕を呼んで」「DUNE/デューン 砂の惑星」ティモシー・シャラメ(26歳)といった若手の伸長も期待されるところです。
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