サイエンス

直射日光不要で通常の光合成より最大18倍効率的な人工光合成システムが開発される、宇宙での食料生産に有用か


植物は光からエネルギーを得る「光合成」を行っており、光の当たらない場所では成長に影響が出ることが知られています。新たにカリフォルニア大学リバーサイド校とデラウェア大学の合同研究チームによって、植物に直接光を当てずともエネルギーを供給できる「人工光合成システム」が開発されました。開発された人工光合成システムは、従来の光合成と比べて最大18倍効率的にエネルギーを供給できるとのことです。

A hybrid inorganic–biological artificial photosynthesis system for energy-efficient food production | Nature Food
https://doi.org/10.1038/s43016-022-00530-x

Artificial photosynthesis can produce food without sunshine | News
https://news.ucr.edu/articles/2022/06/23/artificial-photosynthesis-can-produce-food-without-sunshine

植物は光合成によって光エネルギーを化学エネルギーに変換していますが、研究チームによると光合成の際に得られるエネルギー量は植物が受け取った光エネルギーの1%にとどまるとのこと。そこで研究チームはエネルギーを効率的に生産できる人工光合成システムの開発に取り組みました。

研究チームが構築した人工光合成システムの概要図が以下。まず太陽光のエネルギーをソーラーパネルで電気エネルギーに変換し、電解槽で電気エネルギーと二酸化炭素と水から酢酸塩を合成します。この酢酸塩を養分として植物を育てることで、植物に光が当たらなくても養分を供給をできるというわけです。


研究チームが電解槽の構成を最適化した結果、非常に高効率な酢酸塩の合成が実現し、ソーラーパネルが受け取った光エネルギーの約4%を植物の養分に変換することが可能となりました。研究チームによると、この結果は人工光合成システムが通常の光合成と比べて最大18倍の効率で養分を生産できることを示しているとのことです。


また、緑藻の一種であるクラミドモナスやエノキタケなどのキノコを用いた実験では、一般的な培地で生育された場合と電解槽で合成した酢酸塩を用いた場合とでは成長速度が同等であることも確認されています。加えて、人工光合成システムが「イネ」「グリーンピース」「キャノーラ」「ササゲ」「タバコ」「トマト」といった作物の栽培に利用可能なことも確認されています。

研究チームの一員であるロバート・ジンカーソン氏は「私たちは光合成の限界を打ち破って食品を生産する方法の開発を目指しました」「人工光合成による食料生産が普及すれば農地の縮小が可能となり、農業が環境に与える影響を低下させられます。また、宇宙空間のような非伝統的な場所でも少ないエネルギーで多くの搭乗員に食料を供給できるようになります」と述べています。また、研究チームの一員であるマーサ・オロスコ・カルデナス氏は「いつか暗闇や火星でトマトを栽培することを想像してみてください。未来の火星の人々にとってそれはどれだけ楽しいことでしょう」と、人工光合成システムが宇宙空間で利用される未来への期待を語っています。

なお、上述の人工光合成システムに関する研究は、NASAが実施している宇宙空間での食に関するコンペティション「Deep Space Food Challenge」でフェーズ1を通過しています。

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in サイエンス,   , Posted by log1o_hf

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