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「広告ブロック拡張機能」に関してGoogleとMozillaが異なる方針を採用したことでブラウザの差別化が進むとの指摘


ウェブサイト閲覧時のバナー広告や動画再生時に挟まれる広告などを抑制する、ウェブブラウザの広告ブロック拡張機能について、ChromeやEdgeのベースとなっているChromiumを開発するGoogleと、Firefoxを開発するMozillaがそれぞれ異なる方針を選んだことにより、両者の差別化が進むと海外メディアのThe Vergeが報じています。

Firefox and Chrome are squaring off over ad-blocker extensions - The Verge
https://www.theverge.com/2022/6/10/23131029/mozilla-ad-blocking-firefox-google-chrome-privacy-manifest-v3-web-request

従来の広告ブロック拡張機能は、「webRequestAPI」というAPIを通じてブラウザとウェブサイト間のトラフィックを監視し、特定のドメインへの要求を変更したりブロックしたりすることで、広告表示や広告トラッカーの追跡を阻止しています。ところが、Googleは「webRequestAPIはChromeのパフォーマンス改善を阻害しており、セキュリティ上の懸念もある」として、Chromium拡張機能の新仕様である「Manifest V3」に移行すると共にwebRequestAPIのサポートを終了する計画です。

Chromiumが新仕様のManifest V3に移行してwebRequestAPIを廃止すると、ChromiumをベースとするChromeやEdge、Braveなどのブラウザにおいて、既存の広告ブロック拡張機能はそのままでは利用できなくなります。Googleは「Declarative Net Request」という新しいAPIを使って広告ブロックが可能だと説明していますが、Declarative Net Requestはネットワーク要求内のデータを監視するのではなく、拡張機能の作成者が特定のトラフィックの処理方法を事前に細かく指定する必要があります。そのため、Declarative Net Requestでは複雑な広告除去アルゴリズムが使えなくなるといわれており、「Manifest V3は広告やトラッカーをブロックする拡張機能を無効化するためのものではないか」との批判が寄せられています。

たとえば広告ブロック拡張機能のGhosteryは、広告コンテンツをブロックするだけでなく、ウェブサイトとブラウザ間のトラフィックを分析してウェブサイトの訪問者を一意に認識しようとするデータを探し、ブラウザから送信されるデータを一般的なものに置き換える機能も提供しています。しかし、この機能を実行するにはwebRequestAPIによるトラフィック変更が必要なため、Manifest V3の採用により機能が大幅に削減されてしまうとのこと。

Ghosteryを開発するJean-Paul Schmetz氏は、The Vergeに送った電子メールで「Googleは表面的には『プライバシー・バイ・デザイン』のメッセージを推し進めていますが、ユーザーによるデータ管理を回復させようとしているデジタルプライバシー企業を抑圧することで、エコシステム全体の独占を主張しています」と述べています。


オンライン広告を収益の柱としているGoogleは、オンライン広告をブロックするテクノロジーを「収益に影響を与える潜在的なリスク要因」として挙げています。デジタルにおける言論の自由を擁護する非営利団体・電子フロンティア財団(EFF)は、「Manifest V3は支配的なウェブブラウザと最大のインターネット広告ネットワークの両方を制御するGoogleから来る利益相反の一例です」「Manifest V3はプライバシーの取り組みに対して非常に有害です」と主張。また、広告ブロッカーを提供するAdGuardは、Manifest V3の導入を「悲報」としたブログ記事を投稿しました。

Chrome拡張機能の新仕様「Manifest V3」は非常に有害だと電子フロンティア財団が非難 - GIGAZINE


その一方で、Firefoxを開発するMozillaは「Firefoxでは広告ブロック拡張機能を制限するような変更は加えない」と明言しています。互換性の観点からFirefoxはManifest V3の大部分を引き継ぎ、最小限の変更でChrome拡張機能をFirefoxに移植できるようにしているものの、その後もwebRequestAPIのサポートを継続し、広告ブロック拡張機能が従来と同じ性能を発揮できるようにするとのこと。

「Firefoxでは広告ブロッカーを制限するような変更を加える予定はない」とMozillaが明言 - GIGAZINE

by Doug Belshaw

Mozillaの最高セキュリティ責任者であるMarshall Erwin氏はThe Vergeに対し、「コンテンツブロックがFirefoxユーザーにとって重要なことはわかっており、利用可能な最高のプライバシーツールにアクセスできるようにしたいと考えています」「Firefoxはデフォルトでトラッキングをブロックしていますが、ブラウザで広告を読み込むことは可能です。もし、ユーザーが広告を完全にブロックするために追加のステップへ進みたい場合、それを可能にすることが重要です」とコメントしています。

一方でGoogleの広報担当者であるScott Westover氏は、The Vergeに対して「MozillaがManifest V3をサポートしていることをうれしく思います。これは誰にとっても拡張機能をより安全なものにすることを目的としたものです」「Chromeは広告ブロッカーを今後もサポートしていきます。ネットワークリクエストのブロックの動作方法を変更するのは、拡張機能プラットフォームのセキュリティとプライバシーを向上させるため、拡張機能の動作方法を根本的に変更するためです」と述べました。

The Vergeは、広告ブロック拡張機能を巡るGoogleとMozillaのスタンスの違いによって両社の差別化が進むと指摘。記事作成時点では、デスクトップブラウザの市場シェアに占める割合はChromeが67%に達する一方でFirefoxは8%未満に過ぎませんが、2023年6月にChromiumが完全にManifest V3へ移行すると多くのユーザーがFirefoxに切り替える可能性があるとのことです。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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