1兆円以上がつぎ込まれ稼働したばかりの「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」に微小隕石が衝突
by Kevin Gill
2021年12月にアメリカ航空宇宙局(NASA)によって打ち上げられたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、実に100億ドル(約1兆3000億円)もの資金がつぎ込まれた最新鋭の宇宙望遠鏡であり、2022年5月9日に4基の観測機器の調整が完了したばかりです。そんなジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に、想定されていたものより大きなサイズの微小隕石(いんせき)が2022年5月下旬に衝突していたことが判明しました。
Webb: Engineered to Endure Micrometeoroid Impacts – James Webb Space Telescope
https://blogs.nasa.gov/webb/2022/06/08/webb-engineered-to-endure-micrometeoroid-impacts/
NASA’s new powerful space telescope gets hit by larger than expected micrometeoroid - The Verge
https://www.theverge.com/2022/6/8/23160209/nasa-james-webb-space-telescope-meteor-strike-impact
Tiny meteoroid bops $10 billion Webb space telescope | Reuters
https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/tiny-meteoroid-bops-10-billion-webb-space-telescope-2022-06-08/
1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡の後継機として開発されたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、太陽と地球の間で重力の釣り合いが取れるラグランジュ点に設置されています。2021年12月25日に打ち上げられ、翌2022年1月には主鏡が完全に展開。主鏡の位置合わせが完了した3月には撮影した鮮明な写真が公開され、NASAはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観察能力が想定を上回っていると報告しました。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した鮮明な写真が公開される、はるか彼方の銀河が映り込むほどの精度 - GIGAZINE
以下の記事を読むと、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が2020年1月に運用が終了したスピッツァー宇宙望遠鏡と比べてどれほど優れているのかがわかります。
最新鋭のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の調整が完了、旧世代との比較が圧巻 - GIGAZINE
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が展開されるラグランジュ点は地球から約150万km離れており、宇宙空間を漂う微小隕石がたびたび衝突することが予想されていました。微小隕石は通常1g未満の重さですが、宇宙空間を高速で移動する微小隕石と宇宙望遠鏡が衝突すると大きなダメージが及ぶ可能性があります。そのため、NASAは微小隕石の衝突に耐えられるようにジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を設計しており、既知の流星群が飛来した際には光学系を保護する操作も可能になっているとのこと。
NASAは6月8日のブログ記事で、5月23日~25日の間にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡へ微小隕石が衝突し、データの検出可能な影響が出たことを報告しました。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡にはこれ以前にも、打ち上げから合計4回の微小隕石衝突があったそうですが、これらのサイズはいずれも想定の範囲内だったとのこと。しかし、今回報告された微小隕石は事前の想定よりも大きなサイズであり、地上でテストできたものを超えていたとNASAは延べています。
今回の微小隕石衝突により、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のデータには検出可能な影響が出ましたが、エンジニアは地上から遠隔操作で影響を受けたセグメントの位置調整を行って、衝突の影響を最小限に抑えることができました。NASAは、依然としてジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がすべてのミッション要件を超えるパフォーマンスを維持しており、今後も望遠鏡の監視とメンテナンスを続けるとしています。
by NASA's James Webb Space Telescope
NASAはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に対する微小隕石の衝突について、地球から遠く離れた深宇宙環境では避けられない事象だと考えています。NASAのゴダード宇宙飛行センターで技術副プロジェクトマネージャーを務めるPaul Geithner氏は、「私たちは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が太陽からの紫外線や荷電粒子、銀河系からの宇宙線、太陽系内の微小隕石との衝突といった宇宙環境を乗り切らなければならないと常に知っていました」と述べ、数年以上にわたるミッションを遂行できるように宇宙望遠鏡は性能に余裕を持って作られていると主張しました。
また、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は非常に感度が高いことから、深宇宙環境における「微小隕石の検出器」としても役立っており、ラグランジュ点における宇宙粒子環境の知識ももたらすことが期待されているとのこと。
なお、NASAは7月12日にジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したフルカラー画像を初公開する予定です。
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