「常温で液体のプラチナ」が開発される、工業化学における革命の可能性
Dr Md. Arifur Rahim, UNSW Sydney
オーストラリアの研究者らが、融点が1700度超と極めて高いプラチナを室温で解けるよう加工する方法を発見したことを明らかにしました。触媒としての性能が優秀なもののコストが高いプラチナを、既存の方法よりはるかに効率的に利用できることが示されています。
Low-temperature liquid platinum catalyst | Nature Chemistry
https://dx.doi.org/10.1038/s41557-022-00965-6
Liquid platinum at room temperature: The 'cool' catalyst for a sustainable revolution in industrial chemistry
https://phys.org/news/2022-06-liquid-platinum-room-temperature-cool.html
ニューサウスウェールズ大学およびロイヤルメルボルン工科大学の研究者らは、融点が29.76度のガリウムを解かしてプラチナと化合させ、室温でプラチナを融解させるという方法を考案。この方法でもプラチナは触媒として機能し、触媒として効率的な比率はガリウム1に対しプラチナ0.0001未満というものです。
プラチナは触媒として非常に優れていますが、工業用に固体のプラチナを使用する場合、炭素ベースの触媒系だと10%程度のプラチナが必要です。プラチナそのものの価値が高く、運転に必要なエネルギーコストも重なるため、工業規模ではあまり採用されていないのが現実。しかし、今回研究者らが考案した液体ベースの触媒系は固体ベースのそれより1000倍以上効率的であるため、化学産業に大きな革新をもたらす可能性があります。
Dr Md. Arifur Rahim, UNSW Sydney
研究者らによると、プラチナとガリウムを化合させ触媒を構築する初期段階のみ高温での処理が必要になるとのことですが、それでも300度前後の温度で1~2時間程度であり、工業規模の化学工学でしばしば必要とされる連続的な高温処理にはほど遠いとのこと。
さらに液体ベースであるため、いずれ目詰まりを起こし機能しなくなる固体ベースの触媒よりも信頼性が高くなるとのこと。噴水が組み込まれた水槽のように常に循環するため、長期間にわたって効果を発揮すると研究者らは述べています。
プラチナを液体ガリウムと組み合わせることで、二酸化炭素の削減や肥料製造におけるアンモニア合成など、化学工業における多くの可能性が期待されています。
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