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学生同士のチャットルームに潜んでカンニングを目の当たりにした教授が不正行為の現実を語る


新型コロナウイルス感染症などの影響で学校教育がオンラインに移行しつつある昨今、ハードルが下がってしまった「カンニング」の問題も取り沙汰されています。そんなカンニングを目の当たりにしたニューヨーク市立大学心理学部准教授のマシュー・クランプ氏が、自身の体験をつづっています。

My students cheated... A lot • crumplab
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2021年8月、クランプ氏は学期最初の講義をオンラインで行おうとしていたとのこと。講義を始めると、すぐに学生の一人がチャットを使ってクラスのWhatsAppチャットグループに参加するためのリンクを投稿したため、クランプ氏も参加したそうです。


昨今の学生はコースについて互いにコミュニケーションをとるために、特にオンラインクラスを受講している間はさまざまな方法を利用しているとのこと。WhatsAppのチャットグループもその方法の1つです。これらのグループチャットは完全に合法であり、学生に多くのコース情報とアクティブなソーシャルネットワークを提供しているとクランプ氏は話します。

1日後、クランプ氏が友人と外出した際に携帯電話がWhatsAppチャットの通知で埋め尽くされるという事態に陥ったため、クランプ氏はチャットをミュートすることに。その後数ヶ月間にわたり完全にチャットのことを忘れていたそうです。

しかし、クランプ氏がふとしたきっかけでチャットを開いてみると、課題の締め切りや課程について話し合う健全なチャットに紛れ、講義の中で示した「テスト問題」の写真が貼られていたことに気づきます。クランプ氏が週に1度出していたテスト問題の締め切りは日曜日の23時59分だったとのことですが、日曜日の19時頃になるとにわかにチャットが活気付き、講義に出ていない学生や楽に答えを求める学生が答えを求めて会話を繰り広げていたとのこと。

クランプ氏は「テストは個人的な課題であり、学生同士で相談したり答えを共有したりすることは想定していませんでした」と語ります。クランプ氏は身分を明かさずにチャットルームに参加していたため、学生の誰も教授がチャットルームに潜んでいるとは気づかなかったのです。

クランプ氏が得意とするプログラミング言語のR言語を用いて不正を行う学生の傾向を調べたところ、2週間のうちに全体の約75%に当たる70人が不正を行っていたことが分かり、自作した電話番号を参照するプログラムなどから学生の97%を特定することに成功します。


チャットルームでは多くの不正行為が行われており、不正行為やチャット自体に積極的に参加している学生もいれば、そうでない学生もいたのですが、見れば誰でも気づくはずの不正行為をチャットで報告した学生はいませんでした。

このことについて、クランプ氏は「学生にとってカンニングを告げ口すべきかどうかのルールは曖昧かもしれませんが、知ってて告げ口しないのはアカデミック・インテグリティ(学問的誠実さ)に反することにもなり得ます」と述べます。ニューヨーク市立大学ではアカデミック・インテグリティ違反について学生一人一人と1時間ほど話をするよう勧められているとのことですが、70人も不正をしていたので時間は膨大になります。

そのためクランプ氏はクラス全体に広く違反について知らせ、学生一人一人に個別の書類を提出しなければならず、それぞれの学生が何をしたのか、個別のフォームから情報を提供させることにしたとのこと。

もちろん、小テストや最初の中間テストのたびにカンニングをする学生もいれば、一部の課題でのみカンニングした人もいたとのこと。これらは学問的誠実さに対する明白な違反行為で、クランプ氏は落第処分が適切だと考えたものの、結局不正行為1回につきペナルティ1を付与、3回たまると落第というシステムに落ち着いたとのことです。何人かの学生は謝罪に訪れたともクランプ氏は述べています。

また、学生の中には「チャットルームで何が行われていたか」をクランプ氏に教えるような人もいたとのこと。その学生はクランプ氏がチャットルームにいることを知らないため、チャットのアーカイブ付きで「このようなアプリは学生同士の交流に不可欠」「カンニングをしていないことを証明できる」などとクランプ氏に伝えてきたそうです。不正行為を報告しなかった点については「ほかの学生からの報復が怖かった」と伝えており、クランプ氏は「ひどいことだ」と振り返っています。


クランプ氏は直近に控えていた2回目の中間テストも形式を変え、すべての生徒に同じタイミングでテストを受けさせること、1人1人違う課題を与えることなどでカンニングを防止しようとしました。しかし、2回目の中間テストでは問題が時間通りに配布されないというトラブルが発生したため、WhatsAppのチャットルームは膨大なテキストメッセージが飛び交うことに。問題が配付されてからは当然のごとく問題のスクリーンショットやそれに答えるカンニングメッセージも流れたとのことですが、1分間に10~50個というメッセージの量だったため「あまりにも流れが速かったので何が起こっているのかを追跡するのは不可能でした」とクランプ氏は語っています。

ただし、それでもカンニングが発生したのは事実。このような行為についての裁量権はクランプ氏に委ねられていたとのことですが、クランプ氏はあえて落第させることはせず、代替シラバスを作成し、新しい課題を学生全員に作ることにしました。これでカンニングをした学生は再チャンスが、カンニングをしなかった学生は前よりも面白い課題が手に入るので、全員にとって公平だろうというクランプ氏の考えです。

ただ、カンニングをした学生にはもうひとつだけ条件がありました。それは、「少なくとも150語からなる文章で、学生として個人的かつ学問的な高い誠実性の基準に従って行動することの意味を理解していることを証明しなさい」という文章を提出させる「アカデミック・インテグリティ」の課題でした。この課題をクリアして初めて代替シラバスが与えられるのでした。

クランプ氏は「学生がセカンドチャンスを求めていることは知っていましたが、何人が代替シラバスを受け入れるかはわかりませんでした。アカデミック・インテグリティの課題をクリアすることは、不正行為を認めることでもあり、中には何も認めないという学生もいるようでした。ですから、初めてアカデミック・インテグリティの課題が提出されたときは感激しました」と語ります。ただ、その文章はインターネット上からコピー&ペーストされたものだったとのこと。クランプ氏はその学生に3回目のチャンスを与え、学生全体に「コピー&ペーストはしないこと」と警告。その結果、何人かが誠実な文章を送ってきたそうです。


次の学期になり、新しい学生たちを教えることになったクランプ氏ですが、またしても不正行為の兆候が見られたとのこと。ただ、今回は前学期に何が起こったかを知っている学生が不正行為を止めるようチャットで促していました。

クランプ氏は「全体的に、素晴らしい学生たちでした。彼らが今学期に行ったすべてのことに好評価を与えました」と述べ、状況が様変わりしたことを嬉しく感じていると語っています。2学期にわたってチャットルームに潜伏し続けたクランプ氏ですが、結局の所存在が明るみに出ることはありませんでした。クランプ氏に不正が伝わったことについても、学生たちは「不満を持つポスドクの仕業だ」などとさまざまな仮説を立てていたそうです。

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in Posted by log1p_kr

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