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偽の「試験解答サイト」が不正行為を行う学生を引っかけようとしている


パンデミックに伴い学校の授業がオンラインで行われるようになり、試験さえも自宅から受けるような状況が増えています。こうなると問題になっていくのが、他人の監視がないためにハードルが下がってしまうカンニング行為。学生によるカンニング行為を取り締まる企業とその問題点について、テクノロジー系メディアのThe Markupが解説しています。

A Network of Fake Test Answer Sites Is Trying to Incriminate Students – The Markup
https://themarkup.org/machine-learning/2022/02/15/a-network-of-fake-test-answer-sites-is-trying-to-incriminate-students

From detecting phones to using decoy sites, Honorlock raises online test surveillance concerns - The Arizona State Press
https://www.statepress.com/article/2022/01/honorlock-lockdown-browser-test-surveillance-concerns-asu

オンラインで教育が行われるようになるにつれて、教師の目を盗んでカンニング行為をする学生が増加する中、そのような学生を取り締まるビジネスを展開する企業が急激に成長しています。Honorlockという企業もその1つで、同社は写真により受験者の識別を行ったり、「OK Google」や「Hey Siri」といった言葉を検知したりして不正行為を防止するソフトウェアを教育機関向けに提供しています。

セントラルフロリダ大学でコンピューターサイエンスを学ぶカート・ウィルソン氏は、Honorlockが提供しているソフトウェアに興味深い機能を見つけました。それはHonorlockが「シードサイト(seed sites)」と呼ぶもので、試験に役立つ情報が書かれた偽のウェブサイトを構築し、そこを訪れる学生を検出して不正行為を識別する、いわゆるハニーポットのような機能です。

「シードサイト」は、まず試験を作成する教師が試験問題をHonorlockに提出するところから始まります。Honorlockは試験問題のいくつかをピックアップし、語順や言い回しを変えたうえでウェブサイトに質問として投稿。この質問をコピー&ペーストなどで検索し、ウェブサイトにアクセスした学生のIPアドレスやクリックしたリンク、サイトで過ごした時間などを記録し、教師側にその情報を送ります。学生は試験に際してHonorlockのChrome拡張機能を導入するよう求められているため、特定の質問を検索した際にHonorlockのウェブサイトが検索結果の上位に現れやすくなっています。


ウィルソン氏がHonorlockのソフトウェアを解析したところ、Honorlockが使用していると思われる10個ほどのドメインを発見。このうちいくつかはまだ機能しており、主に「化学的消化は消化器系のどの部分で始まりますか?」といった、いかにも試験の解答に困った学生が求めそうな質問や、「コンピューターサイエンス用語集」といったリンクが何千も用意されているとのこと。ただ、リンクをクリックしても404エラーを返したり、質問の下に用意された「回答を表示する」ボタンを押しても効果音が流れるだけだったりと、学生にとってのメリットは何一つありません。

シードサイトとしてHonorlockが用意したウェブサイトのひとつが以下。

In which part of the digestive system does chemical digestio… | GradePack
https://gradepack.com/in-which-part-of-the-digestive-system-does-chemical-digestion-begin/


Honorlockが「学生が多くの電子機器にアクセスできるようになるにつれて、『学問的完全性』の維持がますます困難になっています」と主張するとおり、今までにないカンニング行為が今後増加する可能性が考えられます。Honorlockなどのサービスは教育機関にとってメリットがあるように思えますが、専門家はプライバシーや倫理的な問題を懸念しています。

Honorlockは顔認識や声紋認識を決して行わず、写真を認識することでのみ受験者の本人確認を行うことを売りにしています。しかし、他企業が展開する同様のサービスにおいてはウェブカメラを利用した本人確認を行うことも。このようなサービスへは、顔認識という技術に付きものな「人種によって認識精度に差がある」といった問題点が指摘されます


また、サービスによっては「試験中に常にウェブカメラをオンにしておくよう求められる」「試験前に卓上や部屋全体をウェブカメラに映すよう求められる」「一定時間カメラの視界から出るのを禁止する」といった規則を設け、カンニング行為を防ぐ手だてとしていることもあります。このような仕組みは場合によっては受験者を危険に晒すこともあり、2020年には「法科大学院の試験中に破水が起こったものの、ウェブカメラの前から動くことができず、監督者も人間ではなくAIだったため試験を受け続けるしかなかった」という女性のエピソードが報じられました。この女性は結局試験終了後に病院に向かい出産、2日目の試験をそのまま病室で受けたとのことです。

オンライン試験を研究する教育倫理の専門家であるセシーリア・パーンサー氏は、カンニング行為を追跡するソフトウェアの存在自体がカンニング行為のハードルを下げていると指摘します。このようなソフトウェアを用いると伝えられた学生は「自分たちは信頼されていない」「暗に不正行為を求められている」と感じてしまうことがあり、ソフトウェアの使用が裏目に出ているという考えをパーンサー氏は述べ、「試験では常にある程度の不正行為が行われるでしょうが、現在の対策にかかるコストは本来の教育を犠牲にしています」と主張しました。

The Markupは「教育者にとって、不正行為を行う人間を自動的に追跡するソフトウェアの魅力は明らかです。しかし、一部の専門家は『問題は学生を監視するための技術を進歩させることではなく、どのように試験を行うかを考え直さなければいけないという点にある』と主張しています」と記しました。

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in Posted by log1p_kr

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