サイエンス

人間に寄生し宿主を「性的に魅力的」な状態へと変化させる寄生虫「トキソプラズマ」


ネコ科の動物を終宿主とし人間にも感染することがある寄生虫「トキソプラズマ」に感染した人間は、異性から「性的に魅力がある」と見られる可能性が高いことが明らかになりました。感染に伴い分泌されるホルモンが影響していると考えられています。

Are Toxoplasma-infected subjects more attractive, symmetrical, or healthier than non-infected ones? Evidence from subjective and objective measurements [PeerJ]
https://peerj.com/articles/13122/

Mind-Altering Parasite May Make Infected People More Attractive, Study Suggests
https://www.sciencealert.com/mind-altering-parasite-may-make-infected-people-more-attractive-study-suggests

トキソプラズマはネコから人間へと感染することがある寄生虫で、感染しても人体に大きな影響は及ぼさないものの、免疫不全の状態で感染した場合は最悪の場合重症化して死に至ることもあります。


トキソプラズマはネコ科の動物を終宿主、ほ乳類や鳥類などを中間宿主とする寄生虫ですが、先行研究で「ネズミに感染した場合、ネズミが持つネコの匂いへの嫌悪感を逆転させ、ネコに食べられやすくすることがある」ということが示されています。これらの変化はハイエナやチンパンジー、人間でも見られ、「ネコの尿を嗅いだときに抱く印象」が寄生虫の感染により変化することが分かっています。

加えて、トキソプラズマは生物の交配による直接感染を促すために宿主の性的な魅力を向上させるという先行研究も存在します。実験ではトキソプラズマに感染したネズミが性的パートナーとして選ばれる可能性が高くなるという結果が示されているほか、人間を調査した研究では「トキソプラズマに感染した男性はテストステロンレベルが一貫して高く、女性から魅力があると評価されることが多かった」という結果も示されています。

トキソプラズマが中間宿主の行動を変化するメカニズムは完全には分かっていませんが、トキソプラズマへの感染に伴い防御行動を調節する領域の神経活動が抑制されたり、性ホルモンおよびストレスホルモンの量が変化したりする可能性が指摘されています。

by Omar Cerna

これら一連の研究を受け、フィンランド・トゥルク大学のJavier Borráz-León氏らは213人の健康な男女を対象に、自己評価やパートナーからの評価、身体データ、顔の対称性など、さまざまな項目を調査しました。なお、調査の中で213人のうち35人がトキソプラズマに感染していることが明らかになりました。

調査の結果、トキソプラズマに感染した人間は感染していない人間に比べて体重や身長を含む健康スコアが高く、性的魅力のスコアも高いことが明らかになりました。特に感染した女性は感染していない女性に比べて平均8kgほど体重が軽く、自己評価が高く、性的パートナーの数も多かったことが分かっています。

さらに、感染・非感染者の顔をそれぞれ合成して平均的な顔の造形を確認したところ以下のようになり、感染者(a)の方が非感染者(b)よりも顔の対称性が高く、より健康的、魅力的だと評価される傾向にあったとのことです。


Borráz-León氏らは「先行研究では顔の対称性とテストステロンレベルの間に直接的な関連性がないことが分かっているため、この仮説はさらに検証する必要があります。そのほかの健康や魅力といった点は、感染の副産物か、トキソプラズマが何かを変えたかのいずれかの結果であると考えられます」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1p_kr

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