ソフトウェア

ARコンテンツがいまいち普及しない一因はAppleにあるという指摘


わざわざ専用アプリをインストールしなくても、ウェブブラウザから仮想現実(VR)や拡張現実(AR)のコンテンツを楽しむための情報を取得できるAPI群が「WebXR」です。AppleのiOSで標準ブラウザであるSafariは記事作成時点でこのWebXRを正式にサポートしておらず、このことがARコンテンツの普及を押しとどめていると指摘されています。

Apple WebXR: Web-based AR doesn’t work on iPhones - Protocol
https://www.protocol.com/entertainment/apple-webxr-ar-ios-iphone

Apple targeted for Safari lacking WebXR support - 9to5Mac
https://9to5mac.com/2022/05/09/apple-targeted-for-safari-lacking-webxr-support-despite-companys-ar-vr-ambitions/

Appleはおよそ1000人のエンジニアで構成したチームでARデバイスの開発に取り組んでおり、Appleのティム・クックCEOは2017年にモバイルアプリ専用のARフレームワークを導入した際に「ARはすべてを変えるでしょう」と宣言しています。加えて、AppleはWi-Fi 6Eに対応したスタンドアローン型ARヘッドセットを2022年に発売する予定だと報じられています。

Apple初のVR・ARヘッドセットが2022年に「Wi-Fi 6E」対応で登場するとのリーク、VR市場はApple・Meta・ソニーの三つどもえに - GIGAZINE


しかし、Appleは独自のARデバイスの開発に多額を投資している一方で、ウェブベースのARには消極的な姿勢を見せているとIT系ニュースサイトのProtocolは指摘しています。実際にiPhoneに標準インストールされているSafariは、ウェブベースのARがサポートされていません。

没入型コンピューティングの専門家として、Netflixやワーナー・ブラザーズ、ディスカバリーチャンネルなどでARコンテンツの開発に携わるクリストファー・レプコウスキー氏は、「SafariがウェブベースのARをサポートしていないことが、ARの普及を大きく妨げています。AppleはウェブARの革新を押しとどめているのです」と語っています。


ARを一般ユーザーが楽しめるようになった初期では、スマートフォンで体験できるARコンテンツを楽しむために専用アプリをインストールする必要があるケースがほとんどでした。しかし、AR技術を扱うマーケティングエージェンシー・Pretty Big Monsterのマネージングパートナーであるジェイソン・スタインバーグ氏は、専用アプリをわざわざダウンロードしなければならないという手間は消費者がARに親しむ機会を奪うと主張しています。

スタインバーグ氏は「何かをクリックさせるたびに、オーディエンスの50%が離れていく可能性があります。ユーザーにアプリのダウンロードとインストールを強制すると、ユーザーが離れる確率は指数関数的に高くなります」と述べました。

by Tony Buser

こうした問題を解決するのが、ブラウザ上でARコンテンツを体験するためのAPI標準仕様である「WebXR」です。WebXRはGoogleやMeta、Samsung,Mozilla、Magic Leapといったブラウザメーカーやデバイスメーカーが連立して策定した仕様で、ウェブサイトから直接ARコンテンツを起動することが可能になります。

Android向けのChromeは2018年からWebXRのサポートを開始。また、SamsungとOperaも2020年にスマートフォン・タブレット向けブラウザでWebXRをサポートしました。しかし、AppleのiOS向けSafariは記事作成時点でWebXRをまだサポートしていません。さらにAppleは、サードパーティーが開発するiOS向けブラウザにSafariのレンダリングエンジンである「WebKit」をベースにすることを強制しているため、GoogleのChromeやMozillaのFirefoxはiPhone上ではWebXRをサポートできません。

2022年4月時点のスマートフォン市場におけるiPhoneのシェアは、世界全体で27.68%、アメリカでは57.58%、日本では63.7%です。そのため、大部分の消費者がスマートフォンからARコンテンツにアクセスすることができない状況となっています。

AR関連ニュースサイトであるAR Insiderの調査によれば、ウェブベースでのARコンテンツに触れたことがあるのはユーザーの15%のみで、50%以上はSnapchatやInstagramなどのアプリからARコンテンツに触れたことがあると回答したそうです。


なお、AppleもWebXRを完全に無視するつもりはない様子。WebKit開発チームの責任者であるマシエフ・スタコヴィアク氏は、「AppleはWebXRに熱心に取り組んでいます」と2021年8月にTwitterで宣言しています。


事実、AppleはiOS 15.4およびiOS 15.5のベータ版で、SafariにWebXR APIのサポートを実験的に追加しています。

iOS 15.4におけるWebXR Device APIの現状確認
https://zenn.dev/ikkou/articles/6f546b11ced571

ただし、WebXRに関するAppleのロードマップは明らかにされていないため、iOS版SafariがWebXRを正式にサポートするのがいつになるのかは不明です。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
NASAが医者をホログラムで国際宇宙ステーションに送る - GIGAZINE

AmazonがARデバイスを開発しようとしていることが求人情報から判明 - GIGAZINE

Googleの次期ARヘッドセット「Project Iris」の情報がリーク - GIGAZINE

MicrosoftのHoloLens開発チームから約100人が離脱して40人以上がMetaに加わったことが判明 - GIGAZINE

MetaがAR/VR向けOSの独自開発プロジェクトを白紙にしたという報道 - GIGAZINE

QualcommがMicrosoftと提携してARグラス向けカスタムチップを開発すると発表 - GIGAZINE

in ソフトウェア,   ネットサービス,   ハードウェア, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.