ロシアが西側諸国の制裁への報復でロケットエンジンを販売停止、「ISSがアメリカやヨーロッパに墜落する危機を誰が止めるのか」とも発言
by NASA's Marshall Space Flight Center
ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して世界各国からの制裁措置が下される中、ロシアが制裁措置への報復としてロケットエンジンの販売停止を発表しました。また、ロシア国有宇宙企業「ロスコスモス」のドミトリー・ロゴージンCEOは国際宇宙ステーション(ISS)への協力停止についても言及。加えて衛星インターネット企業「OneWeb」の人工衛星打ち上げ中止も発表されるなど宇宙開発への影響が出始めています。
Russia to halt rocket engine deliveries to US, says Roscosmos chief - Science & Space - TASS
https://tass.com/science/1415893
Russia stops rocket engine sales to US as space cooperation frays | Space
https://www.space.com/russia-stops-rocket-engine-sales-space-cooperation-frays
◆アメリカへのロケットエンジン販売停止
ロゴージン氏は、ロケットエンジン開発企業・NPOエネゴマシュが製造するロケットエンジンのアメリカ向け販売を停止することを2022年3月3日(水)に発表しました。販売停止されるロケットエンジンにはアトラス Vで使われている「RD-180」とアンタレスで使われている「RD-181」が含まれているとのこと。
ロゴージン氏は「2022年~2024年にかけてアメリカにRD-181を12台納入する計画があり、改善を施したRD-181Mの納入についてもアメリカと協議していました。しかし、この状況ではアメリカに最高のエンジンを供給することは不可能です」と述べています。
◆ISSへの協力停止
ロゴージン氏は2022年2月25日(金)に、アメリカのジョー・バイデン大統領がロシアの宇宙計画に言及したことに対する持論をTwitterに投稿。その中で宇宙開発におけるロシアの存在意義について語り、「バイデン氏が我々との協力関係を停止した場合、ISSが制御不能に陥ってアメリカやヨーロッパに墜落する事態を誰が救うのでしょうか。インドや中国を『500トンの構造物が墜落する』という不安で脅すつもりですか?」と、ISSへの協力停止を示唆しました。
Европы? Еще есть вариант падения 500-тонной конструкции на Индию и Китай. Вы хотите им угрожать такой перспективой? Над Россией МКС не летает, поэтому все риски - ваши. А вы к ним готовы?
— РОГОЗИН (@Rogozin) February 24, 2022
Господа, вы когда санкции планируете, проверяйте тех, кто их генерирует, на предмет болезни
さらに、2022年3月に実施されたインタビューでは「私たちはアメリカのパートナーの行動を注意深く監視し、彼らが敵対的であり続けるならば、私たちはISSについての問題に戻るでしょう」「私はアメリカが冷静になることを期待しており、このシナリオは望んでいません」と発言し、ISSへの協力を引き合いに制裁措置の緩和を求めています。
◆OneWebの打ち上げ中止
衛星インターネット企業のOneWebは、人工衛星の打ち上げにロシアのロケット「ソユーズ2」を利用してきました。しかし、ドミトリー氏は2022年3月2日にOneWebに対して「軍事目的で使用されないという保証がなければ、ソユーズ2は打ち上げられない」と主張。
Дмитрий Рогозин в интервью телеканалу «Россия 24»:
— РОСКОСМОС (@roscosmos) March 2, 2022
⚡ Роскосмос предупредил компанию OneWeb о том, что если она до 21:30 мск 4 марта не предоставит гарантии неприменения её спутников в военных целях, то ракету «Союз-2.1б» снимут со старта. pic.twitter.com/EYDeaH79Qe
さらに、「イギリスのロシアに対する敵対的な姿勢」を理由に「OneWebの主要株主であるイギリス政府が株を放棄すること」もロケット打ち上げ条件の1つとして加えました。
❗️ В связи с враждебной позицией Великобритании в отношении России еще одним условием запуска космических аппаратов OneWeb 5 марта является выход британского правительства из состава акционеров компании OneWeb.
— РОСКОСМОС (@roscosmos) March 2, 2022
???? Подробнее: https://t.co/HHbGC0DY12 pic.twitter.com/M6FnQeKC4K
上記の要求の後、イギリスのビジネス・エネルギー・産業戦略大臣を務めるクワシ・クワーテング氏は「イギリス政府はOneWebの株を売却しません。ほかの株主と連絡を取り、次のステップについて話し合っています」と発言し、株式売却の予定がないことを明言しました。
There's no negotiation on OneWeb: the UK Government is not selling its share.
— Kwasi Kwarteng (@KwasiKwarteng) March 2, 2022
We are in touch with other shareholders to discuss next steps...
そして、OneWebは2022年3月3日(木)に「OneWebはバイコヌールからの打ち上げを全て中止すると決定しました」という声明を発表。これによりOneWebのサービスに影響が出る可能性があります。
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